4年強という、欧州車としては短めのサイクルでフルモデルチェンジしたVWゴルフ。
デビュー以来、世界のスタンダードとして君臨し続けるこのクルマ。やはり気になる存在である。
例によって、私と尾車氏は、これに試乗しないワケにはいかないのであった。
試乗させていただいたのは、1.4Lターボエンジンを積む「TSI Highline」(税込車両本体価格299万円)だった。
カタログ上のJC08モード燃費は、なんと19.9km/Lと、極めて優秀。
そのシューズは、ピレリであった。セールスマン氏によると、輸入ロットによって、履いているタイヤはピレリだったり、ミシュランだったり、様々なのだそうだ。
それにしても・・・インテリアの質感の高さには、舌を巻く。
かつてのゴルフは実用車だったと思うのだが、現在のゴルフは、まさにプレミアムだ。メルセデス・BMW・アウディに引けをとらないというか、むしろ上回っているかもしれない。
走り出すと、DSGは華麗にシフトアップし、減速するとつつましくシフトダウン。それは実に滑らかに作動し、タコメーターの針だけが上下に踊る。人間には、こんなシフトワークは不可能だ。現在主流のCVTとは異なり、スロットルワークと直結したような加減速を味わえる、本当に素晴らしいトランスミッションだ。
しなやかながらも剛性感があるその脚まわりは、父親のような安心感に溢れている。ステアリングフィールは過敏過ぎず正確で、まさに良妻賢母。個人的には、もうちょっと直進方向に据わり感があればモアベターだと思うのだが、そこは履いているタイヤの特性に負うところも多いのかもしれない。
ほとんどネガのないこのクルマだが、今回の試乗時に気になった点を、2つだけあげておこう。
一つは、目前の赤信号で減速したのだが、それが交差点に入る前に青信号に変わり、再加速しようとしたときのこと。DSGが若干迷ったような挙動を見せ、ガツン!とシフトショックが出た。この時の変速マナーは、やや素人ドライバーのようであった。まあ、通常このようなシチュエーションは、あまり無いんだろうけど・・・・
もう一つはアイドリングストップ後の再始動時のタイムラグである。右折時などには、ちょっと気になる部分であった。この辺は、同じ機構を持つ国産車の方が、上手くやっていると思った。
また、このゴルフで驚くべきことは、室内側のドアロックレバーを無くしてしまったことだ。これは、防盗性を高めるために採られた措置であるとのこと。
セールスマン氏曰く、「だから、ドライバーがリモコンでドアロックしちゃうと、助手席の人間はドアを開けることができないんです。つまり、逃げられないんです!」とのことだったが、どうもその辺の是非については、検証の必要があるように思える。
だって、内側からドア開けられないのは、炎天下の車内とか、不幸にして事故に遭った時とか、非常時には困るよねぇ・・・
私と尾車氏が交代で計30分ほど運転し、その間の燃費は10.4km/L。走行条件が同一ではないとはいえ、それは同じ日に乗ったXVハイブリッドを上回る数値。
まあ、燃費に関しては、実際に所有してみないと本当のところは分からないとはいえ、おそらくゴルフのそれはかなり高水準なのであろうと予測できる。
ボディパネルのチリの少なさ。インテリアの質感。そしてその走り。加えて、カタログ上で19.9km/Lの燃費・・・ゴルフ7は、まさにライバル無しの領域まで来てしまった。
また、写真を撮り忘れたが、このクルマは「スペアタイヤ標準装備」である。こういった部分にも、私はVWのユーザー側に立った視線というか、見識の深さを感じるのだ。
私個人としては、税込価格249万円の「TSI Trendline」の存在が、激しく気になる。排気量が1.2Lとなり、リヤサスが「トレーリングアーム」に簡素化されるのだが、むしろ私には近い存在に思える。
ゴルフの最大の弱点は、その面白みに欠けるスタイリングであろうか。ほぼ完全無欠のクルマだと思う。国産車はゴルフには永遠に追いつけないかもしれない。参りました。