すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

邂逅できる場

2008年05月28日 | 読書
 「俺は、何も法律のことば語っているんでねえ。人間が作った法律よりも先にある、自然の掟のことば語っているのしゃ」
  『邂逅の森』(熊谷達也 文春文庫)

 数年前の直木賞作品であるこの小説を、休日に都会へ向かう列車の中で読み入った。
 生身の人間の息遣いにあふれている作品だと感じた。「マタギ」の世界を通して、自然と対峙することの意味を考えさせてくれる。

 題が秀逸だと思った。
 「邂逅」できる場は、やはり自然がふさわしい。森であったり、海であったり、崖であったり…。
 仮にビルや電車という言葉に置き換えたとしても成り立つのだろうが、結局そこで想像されるストーリーであっても、作り物でないものとの邂逅となる。

 自然を対象とした趣味など持たない自分だが、目や足を向ければ自然だらけ、そこにも邂逅はあるはずだ。