5/22/09号ScienceのNewsのセクションもインフルエンザの流行を扱っています。過去のインフルエンザの流行パターンから今回のブタインフルエンザが、冬になってからどう流行するか予想できないかという点について議論がされています。
インフルエンザがどう流行するかを読むのは困難なようです。前回の1976年、ニュージャージーの軍隊で見つかったブタインフルエンザの場合は、流行を恐れたアメリカ政府の対応は結果的には過剰反応に終わりました。ワクチンを開発し、接種を始めた所、結局、インフルエンザによる死者は一名のみ、ワクチンによる副作用での死者が25名という皮肉な結果となったそうです。しばらく前の号によると、今回のインフルエンザに対するワクチンの開発も始まっているようで、大流行の恐れがあれば、生ワクチンを考慮するという話があったように思います。生ワクチンは、低温(25C 鼻粘膜の温度)でしか増えることの出来ないウイルス株を単離して、鼻粘膜に接種するという方法で、これだと、極少量のワクチンで済み、十分に免疫が出来るまでウイルスが増え続けるので、ブーストの必要がない、という利点があるらしいのです。勿論、不活化ワクチンに比べると、危険性が高いと考えられます。しかし、インフルエンザシーズンまでに、国民に行き渡るほどの量の不活化ワクチンを作るだけの生産キャパシティーはどうもないらしいです。
今回のブタインフルエンザは、これから北半球の気温が上がって行くに従って、南半球へ移動し、その間に性質を変え、冬のシーズンの到来に伴って、北半球へ帰って来て、流行を引き起こす、というシナリオが考えられています。(しかし、H3N2の例での過去の検討では、多くが東南、東アジアで始まって、南半球へ南下はするものの、それが再び北半球へ戻ってくることは認められなかったそうです。)H1N1ウイルスの親株は、ヒト、ブタ、トリに感染できる節操のないウイルスで、今回のブタインフルエンザもこの先、インフルエンザシーズンまでの間に、多種の動物への感染を通じて、他のインフルエンザウイルスとの間で遺伝子のやり取りを行い(Reassortmentと呼ばれる現象だそうです)、抵抗性や毒性を獲得し、強力化する可能性が心配されています。
結論は、インフルエンザの流行は予測不可能であるということなのですけど、この記事の図に示されている過去の何度かの流行パターンをみると、今回のブタインフルエンザは、1889 – 1892年のロンドンでのインフルエンザ流行に近いように思います。この時は、1889年の冬のシーズンに小さな流行があり、一年後のシーズンが終わった3 –6月の間に、中規模の流行があり、その後、同じ年の冬のインフルエンザシーズンに大流行しています。このパターンを踏襲するという何の根拠もありませんが、今回、ブタインフルエンザがこのまま一段落するとすると、そのぶり返しは今年の12月からのインフルエンザシーズンにやってきて、大流行するのかも知れません。とすると、本当に必要なのはこの冬の対策ということで、今回の失敗を踏まえ、政府には、よりよい対応策を事前に十分論議しておいて貰いたいと思います。
追記、Scienceのブログコーナーでインフルエンザ情報が継続して発信してあるのを見つけました。
インフルエンザがどう流行するかを読むのは困難なようです。前回の1976年、ニュージャージーの軍隊で見つかったブタインフルエンザの場合は、流行を恐れたアメリカ政府の対応は結果的には過剰反応に終わりました。ワクチンを開発し、接種を始めた所、結局、インフルエンザによる死者は一名のみ、ワクチンによる副作用での死者が25名という皮肉な結果となったそうです。しばらく前の号によると、今回のインフルエンザに対するワクチンの開発も始まっているようで、大流行の恐れがあれば、生ワクチンを考慮するという話があったように思います。生ワクチンは、低温(25C 鼻粘膜の温度)でしか増えることの出来ないウイルス株を単離して、鼻粘膜に接種するという方法で、これだと、極少量のワクチンで済み、十分に免疫が出来るまでウイルスが増え続けるので、ブーストの必要がない、という利点があるらしいのです。勿論、不活化ワクチンに比べると、危険性が高いと考えられます。しかし、インフルエンザシーズンまでに、国民に行き渡るほどの量の不活化ワクチンを作るだけの生産キャパシティーはどうもないらしいです。
今回のブタインフルエンザは、これから北半球の気温が上がって行くに従って、南半球へ移動し、その間に性質を変え、冬のシーズンの到来に伴って、北半球へ帰って来て、流行を引き起こす、というシナリオが考えられています。(しかし、H3N2の例での過去の検討では、多くが東南、東アジアで始まって、南半球へ南下はするものの、それが再び北半球へ戻ってくることは認められなかったそうです。)H1N1ウイルスの親株は、ヒト、ブタ、トリに感染できる節操のないウイルスで、今回のブタインフルエンザもこの先、インフルエンザシーズンまでの間に、多種の動物への感染を通じて、他のインフルエンザウイルスとの間で遺伝子のやり取りを行い(Reassortmentと呼ばれる現象だそうです)、抵抗性や毒性を獲得し、強力化する可能性が心配されています。
結論は、インフルエンザの流行は予測不可能であるということなのですけど、この記事の図に示されている過去の何度かの流行パターンをみると、今回のブタインフルエンザは、1889 – 1892年のロンドンでのインフルエンザ流行に近いように思います。この時は、1889年の冬のシーズンに小さな流行があり、一年後のシーズンが終わった3 –6月の間に、中規模の流行があり、その後、同じ年の冬のインフルエンザシーズンに大流行しています。このパターンを踏襲するという何の根拠もありませんが、今回、ブタインフルエンザがこのまま一段落するとすると、そのぶり返しは今年の12月からのインフルエンザシーズンにやってきて、大流行するのかも知れません。とすると、本当に必要なのはこの冬の対策ということで、今回の失敗を踏まえ、政府には、よりよい対応策を事前に十分論議しておいて貰いたいと思います。
追記、Scienceのブログコーナーでインフルエンザ情報が継続して発信してあるのを見つけました。