百醜千拙草

何とかやっています

ヒューマニズムの退行

2017-01-20 | Weblog
難民の受け入れに寛容だったドイツのメルケル政権、先月のチュニジア人によるベルリンのテロ事件を受け、「テロを起こす危険があるとみなした人物の足首に衛星利用測位システム(GPS)付き「電子足輪」を装着するなどのテロ対策をまとめ、法改正に乗り出した」とのニュース。どうも、イスラム過激派を念頭に置いているようです。

「テロを起こす危険があるとみなす」とは、誰がどの基準で判断するのかという点が、最も危うい問題であり、先日のアベ政権の、罪の計画段階で処罰可能とする、いわゆる「共謀罪」を創設するための組織犯罪処罰法改正案を20日召集予定の通常国会に提出する方針を固めた、という動きを思い出させます。

いずれも、権力を持っている者次第によって、容易に暴走する可能性のある法案です。

確かに イデオロギーと現実とをうまくすり合わせられない人々は危険です。オウム事件やそれよりさらに前の日本赤軍とか活動家の内ゲバ事件とかを思い出すまでもなく、人並み以上の知能を持つ人間が、他人や自分自らから洗脳状態に入って、異常な視野狭窄を起こしているわけです。ま、一種の精神病と言ってもいいでしょう。こう言う人々は少数なわけで、世界最大の宗教であるイスラム教教徒のほとんどは、普通の人ですから、どうやって、危険な人間をより分けて、監視し、場合によっては権力で拘束するか、という点にambiguityが許されるのであれば、これは一挙に人権問題となり、ひいては現実的に民主主義を破壊することにつながるだろう、とは多くの人々の危惧するところでしょう。

イデオロギーに「狂った」人も危険ですが、イデオロギーがない人間も困りものです。トランプのことです。イデオロギーがないというのは正確ではないかもしれません。彼もイデオロギーらしいものは持っているかもしれませんが、それはおそらく、自分が一番で、儲かることは絶対的に良いことだ、というような幼稚極まりないものでしょう。

いずれにせよ、間も無く始まる彼の政権は、始まる前から大荒れです。マトモに国家の運営などできないことは遠からず明らかになり、彼に投票した人々を絶望させることになるであろうと予想されます。すでに40名近い議員が、大統領のinarguration ceremonyへの出席をボイコットすると表明しており、数多くの有名アーティストはセレモニーでのパフォーマンスの招待を拒否し、当日から、人権保護団体は、トランプのマイノリティーへの政策に反対するデモを行う予定にしており、数日前には、テレビ番組で以前に性的嫌がらせを受けた女性がトランプに対してクラス訴訟を起こしています。次のモニカ ルウィンスキーになる候補者には事欠かないようです。

これらのニュースはバラバラのように見えますが、共通項として、人が人を思いやり、他人の権利を尊重するという、戦争の世紀から痛い思いをして学んだ教訓から逆行していく傾向を示していると思います。「自分さえよければ良い」という考えがヨーロッパ、それからアメリカの帝国主義を生み、世界を陰惨なものしてきたのではなかったのですかね。殺し合いの20世紀から、人類は、多少賢くなって、ケンカをしないで憎しみ合わないで生きていく方がより効率的で人間的であることを学んだのではなかったのですかね。トランプ現象が、前人間時代の断末魔の悪あがきであってほしいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする