百醜千拙草

何とかやっています

How insensitive

2017-04-11 | Weblog
背景の情報の真偽が不明なので、判断しかねる部分もありますが、アメリカのシリア政府へのミサイル攻撃はどう考えても短慮であったと思います。アサド政権が化学兵器を使用したという証拠はなく、これからその真偽を確かめようとしていたところで、もちろん、シリア政府も否定。

シリアは地政上、微妙な場所にあります。2012に合意されたイラン-イラク-シリアを結ぶ石油パイプラインの建設は、潤沢なイランの石油をアメリカの支配を通さずにEUへ供給することを意味し、オイルによって維持されてきたアメリカドルの崩壊、さらには中東におけるアメリカの弱体化と、ロシア勢力の拡大を意味すると考えらえました。
シリアの内戦の長期化は、この石油パイプラインの建設を阻止するために、NATOとアメリカがシリアの反政府勢力を煽ってきたせいであると考えられています。

そこへ、おだてに乗せられやすい短絡的なトランプ、アメリカ軍産勢力らの口車に乗ったのでしょうか、オバマが軍産を抑えてイラク戦争の時の泥沼を恐れて慎重にやってきたのに、いきなりミサイルを撃ち込むという暴挙。人が苦労して積み重ねてきた努力の結果を、一瞬で台無しにするXXです。あのブッシュでさえ、イラク侵攻には多少の逡巡を見せましたからね。しかもミサイルは打ち込んだものの、アサド政権に対する長期的なプランは何もない、という話。後先考えずに感情のおもむくまま、野生の動物でももっと利口です。

国際社会は反発。特に、ロシア、中国が批難。アメリカ国内でも抗議行動。ノーム チョムスキーはニューヨークの独立報道番組・デモクラシー・ナウのインタネットサイトのインタビューで、「アメリカでの世論調査により、アメリカ自体が世界の平和に対する最大の脅威と見なされている。アメリカはこのことをロシアやイランに対する自国の防衛力の拡大という主張のもとに行っているが、この主張は受け入れがたい」とコメント。

ま、いつものアメリカの手口、人権擁護は建前、本音は、金と力。そのために、他国にいきなりミサイルを打ち込んで、一般市民を含む人間を殺しておいて、なお正当性を主張する。利用する側にとってみれば、トランプのような思考力がない上に感情的になりやすく、エゴと自己顕示欲が強いような人間を、そそのかすのは容易いのでしょう。

私は、トランプの過去と現在の言動や行動から、この男は見た目通りの底の浅い頭の弱い俗物だと信じてますが、田中宇さんはトランプには一端の政治理念があって、計算のもとでバカをやっていると考えられておられるフシがあります。田中宇さんの記事

 米軍はこれまで、ロシア軍と協調し、シリア東部でIS退治の空爆を続けてきた。だが今回の濡れ衣的なミサイル攻撃で、ロシアは怒って米国との協調を解除した。米軍がシリアで活動するのは困難になった。今回の件は、シリアの将来を決める国際体制から米国が追い出され、ロシアやイランの影響力が増し、露イランの傘下でアサドが続投する多極化的な事態に拍車をかけそうだ。


と述べた上で、

 トランプは、米国の諜報機関やマスコミなどの軍産複合体が、アルカイダやISをこっそり支援したり、アサドやイランなどに濡れ衣をかけて攻撃したりする体制を破壊するために、大統領になったはずだ。、、、それなのに今回、トランプは突如、軍産お得意の濡れ衣戦争を、自分から積極的にやり出している。これは何を意味するか?


と、トランプの意図を考察しています。(そんなもの、無いんじゃないかな、とつぶやくワタシ)

ま、しかし、過去の事件をつらつら振り返ると、陰謀論者が世の中の裏を読み取ろうと深読みするほどには、世の中は複雑ではなく、大抵は、見た目通りのことが多いと思います。今回のことも、トランプがシリアから手を引くために、わざわざ批判を招く効果しかないミサイル攻撃をした、というのはありえないだろうと思います。大統領になるずっと前からの行動を見ても明らかな通り、自分が一番の目立ちたがり屋のトランプはアメリカのために憎まれ役をやるような男ではなく、直情型を利用されて軍産の口車に乗っただけでしょう。

トランプの理性の欠如、その認識の欠如は特筆に値すると思います。相当に鈍感でなければ、あの数々のバカな振る舞いや言動はしないでしょう。そして、そんな幼稚な男を常に賞賛するしか能がない太鼓持ちの日本の首相。「トランプ様はいつも正しい、それはアメリカの大統領だから」というのは、「オレ様は常に正しい、それはソーリ大臣だからだ」というのと同じです。

その傲慢さゆえの愚かな行為に対する世界の人々の正当な批判が、鈍感さに基づくバカの壁に跳ね返される現実。誰でもバカの壁はあるといいますが、その程度には客観的な違いがあると思います。

"How insensitive (ポルトガル語の原題は「愚かな行い」)"というボサノバのスタンダード曲を連想しました。


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