百醜千拙草

何とかやっています

Brace for the Impact

2017-04-14 | Weblog
研究面では、いろいろと行き詰まっていて、困った状態にあります。一緒に実験をやってくれいた人が急に移動となり、新しい人を雇うことになりましたが、ほぼゼロからのトレーニングが必要で、ちょっとメゲています。懸案の論文も進まず、プロジェクトは棚上げ。金も力も無し。かと言って色男でもなし。臥薪嘗胆、こういう時はじっと耐えて、陽が差すのを待つしかないのはわかってはいるのですが。この過去2年ほどずっと耐えてきたのに、さらに追い討ちを食らったような気分です。仕方がないので、再提出のグラントの準備をしたり、ネタを探してウロウロしています。

八方ふさがりの時でも天は開いていると聞きました。同じ目線のところには解決策はないのだから、一段レベルが上のところに上がりなさいというサインなのだそうです。なるほど、そう思えば、これはいい機会なのかも知れません。

ネタ探しといえば、最近は面白いと思う論文になかなか出会えませんね。自分の感受性の問題かもしれませんが、最近のhigh impact journalにの論文は、いずれも分野外に人間には容易に内容が評価できないようなものが多いような気がします。

われわれの分野はあまりCNSには縁がない分野ですが、時折、ウチの分野からもNatureに論文が出ることがあります。しかし、そういう論文は大抵、怪しいです。ついこの間出たあるグループの論文もそういう類でした。つまり専門分野の人間から見て、ちょっとありえないだろうと思うような話でないとNatureには載らないのです。そんな眉唾もののネタですから、分野の人間は細部に注意を払って論文を読むし、学会などでもそのグループの仕事が本当に信用できるのかどうか、皆が評価しようとします。その結果、ウチの分野では、皮肉なことにNature論文を書いたグループは、「怪しい」という評価に落ち着くことの方が多いのが現状です。結局、狭い世界ですからインパクトファクターより仲間内の評価の方が、長期的には大切なわけです。最近は、ウチの分野では、Natureに論文を出すことは、むしろStigmaと見なされる傾向さえあります。

このことは、科学的な厳密さよりも、インパクトの大きい「驚くようなネタ」を優先するこの雑誌の編集方針と、それに迎合する研究者側の双方に問題があると思います。
トランプ現象に近いのかもしれません。いきなりシリアにミサイルを撃ちこめばインパクトはあるでしょう、何しろオバマもやらなかったのだから。荒唐無稽な話をぶち上げればインパクトはあるでしょう、専門家なら誰もそんな実現性のない話は最初からしないですから。北朝鮮に先制攻撃してもインパクトはあるでしょうが、その結果はかなり厄介なことになるのは間違いありません。しかし、彼らにとって、真実かどうか、賢明な行動かどうかは問題ではなく、一時的に人々やエディターの注目を集めれられれば良い、という態度で政治やサイエンスをしているわけです。そういう不誠実な目論見は自然と透けて見えて、評判につながります。
真実性はないがインパクトがあるというのは百害あって一利なし、と私は思っております。 
コメント
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