百醜千拙草

何とかやっています

DS氏のその後

2021-11-05 | Weblog
数ヶ月前、セクハラを理由にアメリカトップの研究所を解雇され、40名近いスタッフを抱える研究室の閉鎖に至った著名な細胞生物学者であるDS氏ですが、ふと、その後どういうように過ごしているのだろうと思っていたら、続報がありました。われながら人の不幸のゴシップをネタにするのはどうかなあと思いますけど、これは単純な話ではなく、あるいは「藪の中」的な話なのかも知れないと感じました。

最近のボストン・グローブの記事では、「セクハラの被害者はかつての恋人であるDS氏に復讐をするために虚偽の主張をして、DS氏を失脚させた」と主張してDS氏と代理人が裁判に訴えたことが報道されています。記事の中では詳細は書かれていませんが、訴状を読んだ人がコメントに捕捉を書き込んでいます。セクハラ「被害者」は、もとはMD/PhDの学生で2012年にDS研究室に来たようです。DS氏は「被害者」の学位審査員であり、「被害者」は、無事にPhDを終えて、2017年にこの一流研究所の研究員のポジションに抜擢されたようです。この研究所のフェローのポジションを得るというのはなかなか大変なことで、DS氏ももとはこの研究所のフェローから昇進したのでした。この時点で少なくともDS氏は「被害者」のキャリアに多大な貢献をしてきたことになります。その後、訴状によると、2018年に二人は男女関係となったが、2019年にDS氏は別れを切り出し、それに納得しない「被害者」がつきまとい、そして事件をでっち上げたとしています。これが本当だとすると実はDS氏のほうがセクハラの被害者ということになります。しかし、仮にこの話が本当だったとしても、「被害者」の今後のキャリアにも多大な影響力をもっていて恋愛関係にもあった人間が、梯子を外すように突然去っていくというのは相手にとっては大きなダメージであったことは想像に難くありません。もうひとつの(多分、女性の人による)コメントでは、「被害者」の女性の心情について、仕事の上でも今後のキャリアの上でも重要な人間との間に男女関係ができたとき、女性の方は永続的な関係、結婚し家庭を持つということを期待したはずだが、同じ職場のボスである男の方が別れを切り出して離れていったことに傷つき、打ちのめされ、屈辱を感じたと考えられる、しかし研究室という特殊な職場の中で逃げ出す場所がないという状況にあった、と推測しています。

MD/PhDは8年の大学院プログラムですから、仮にストレートで行ったとしても、この被害者の人は2017年時点で30歳を超えており、別れを告げられたのは32-35歳ぐらいと想像されますから、女性が家庭や子供を持つことを考えたら時間的な余裕がない状況です。そんな中で関係が一方的に終わり、女性としての幸せやプロフェッショナルとしての成功の約束が突然に失われた結果、愛情が恨みに変わり、これまでの関係をセクハラであったと解釈するようになるのはありえることだと思います。このコメントをした人は、(訴状が真実と仮定して)「昔であれば、このような行為はハラスメントとは見なされず、解雇や公的な訴訟も起こらなかったでしょう。最近では、性別が逆転しているのを目にします」と続けています。

しかし、DS氏、確かに年の割には若々しく、若いときはなかなか二枚目でしたけど、この「被害者」の女性とは20歳ほどの歳の差があります。たとえ魅力的な人間で職場で親密になったからといって、DS氏を長期的な将来を考える相手として見るでしょうか?DS氏が地位を利用して関係を迫ったのか、あるいは二人が同意の上で男女関係になったのかどうかが争点になるのでしょうが、その辺は解釈は難しいと思います。最初は強引なアプローチで関係に入ったがそのうち情がわいてミューチュアルな関係になるというよくある浮気にパターンだとすると、セクハラで始まったが、あとは合意の上での関係継続であった可能性もあります。男の方はセクハラと思っていなくても女性の方がそう解釈することもあるし、どこまでがセクハラでどこまでがちょっと強引なアプローチなのかは、確たる証拠がなければ、双方の解釈次第の水掛け論になるでしょう。ただし、施設側の解雇の判断が迅速であったことは、なんらかの証拠があったということだと思います。それが、確固たる拒否があったのを力でねじ伏せたのか、あるいは「イヤよイヤよも好きのうち」的拒否でむしろ誘惑されたぐらいだったのか、それさえも解釈次第というところがあります。

しかしながら、一歩下がって考えれば、そもそも、かなりの力関係の差がある状態で、職場の学生に遊びで手をつけたこと自体が大間違いであったのは間違いありません。この訴状からは、DS氏のセクハラ事件はビル クリントンの事件を思い出させます。もしも、トランプ タイプのセクハラだったのなら、他にもいろいろ前科があってすでに悪評が立っていたはずだと思いますし。

この事件から学ぶべき点があるとすれば、君子危きに近寄らず、李下に冠を正さず、平たく言えば、職場の部下と深い関係になってはならない、ですかね。

追記。さらに詳細な事情の考察(推測)をしているサイトがありました。
どこまでが推測でどこまでが事実なのかよくわかりませんし、DS氏の研究不正の話が混じっているので、多分にバイアスの入った意見のようですが、解雇当時、研究所の調査で「深刻な問題」と表現されたように、セクハラやパワハラは常習化していたのかも知れません。

また下の記事では、DS氏の裁判は、その被告になっている研究所が継続中の調査を妨害するとして、裁判の開始を遅らせて裁判を非公開にするようにと要望を出したということです。

世界トップの研究所でのドロドロのドラマ。研究どころではないですね。
コメント
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