百醜千拙草

何とかやっています

科学は保険

2010-12-21 | Weblog
大手製薬会社ロッシュが大量リストラ、siRNA部門から撤退というニュース。私は前から、siRNA技術は大企業から医薬品技術として捨てられるだろうとは思っていました。RNAというサイズと分子の性質を考えたら、その扱いとデリバリーが最大のネックになることは最初から明らかでした。投与法にこだわらなければ、サイズの問題はどうということはないでしょうけど、デリバリーの問題、どのように目的の細胞のしかも細胞内へ安全に運び込むかという問題の解決は容易ではないと考えられます。静脈内に注射したsiRNAは自然と肝臓にトラップされますから、もっとも期待が持てるのは慢性ウイルス性肝炎への応用だと思いますが、shRNAを使ったマウス実験では副作用が強すぎて死亡するという結果が数年前に発表されましたし、最近の関連の臨床試験ニュースでは、RNAウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)そのもののゲノムRNAではなく、HCVウイルスの増殖に必要なmicroRNA-122を抑制するという試験をやっているようで、どうも臨床治療への道のりは遠そうです。ステムセル技術も多分、大手製薬会社の商品としては乗りにくいと思いますから、メインストリームになることは無いでしょう。現在躍進しているように見えるのは抗体技術のように見えます。こちらもターゲット次第でしょうが、臨床応用にあたっての技術的問題はsiRNAやステムセルより遥かに少ないと思います。

科学技術立国を目指してここ10年、巨額の金を投資し、世界各国から優秀な研究者を集めてきたシンガポール。投資の回収を図り始め、優秀な基礎研究者が逃げ出している、という話がNatureに出ていました。「優秀な頭脳を集めて金を集中投下すれば、素晴らしい発見ができて、技術に応用できて、カネになる」というような「ウマすぎる話」は過去にも現在にも滅多にないと思います。大発見は大抵の場合serendipitousになされるものであって、狙って出るようなものではないと思います。もちろん、その確率をあげるためには、母集団を上げる必要がありますから、研究者と研究資金は必要条件ですが、だからといって、技術応用に繋がるような大発見がそんなに簡単に出るはずもありません。シンガポール政府は、グラントを応用色の強いものにシフトし、カネになる研究を優先しだしたのだそうです。しかも、そのグラントの審査について不明なことが多く、初期の手厚い待遇を受けてやってきた研究者の不安をかき立てているということです。ここではNCIのNeal Copelandと夫人で研究者のJenkinsがシンガポールを離れる決断をしたことが述べられています。Copelandのグループが以前に開発したBacterial Artificial Chromosome (BAC) の遺伝子操作法(BAC recombineering)を、私も使わせてもらっていましたので、分野は違うものの彼らの名前は知っていて、4 -5 年前、彼らがシンガポールに移ったという話を聞いたときは、既にアメリカのNCIで確立した研究者であったのに、よく思い切ったものだと、不思議に思いました。多分、相当に手厚い待遇があったのでしょう。今回のシンガポールの話はトップダウンの科学振興政策がうまく行かない見本のようなものです。思うに、応用技術に重心を移した瞬間から、基礎研究のレベルは急激に落ち始め、優秀な研究者は国外に逃げ、シンガポールは短期では投資回収はおぼつかなくなるだろうと思います。科学は経済の点から考えるべきものではなく、文化の一部と認識すべきでしょう。そもそもカネにならないものです。ときたま起こる大発見が技術開発に繋がって、大きな経済効果を産むので、結果として科学がカネを生み出して来たのは事実です。ただし、歴史が同様に繰り返すという保障はまったくないこと、ここ10 – 20年の解析では、科学を投資として経済効果を見た場合に、投資として見合ったものであるという結論は得られていないこと、などなどからも、私は、科学をカネもうけのための投資として見る立場をまず捨てることが大切であろうと思います。シンガポールが科学国家として急成長したのは、カネで頭脳と環境を移植したからに過ぎません。カネの切れ目が縁の切れ目となるのもやむを得ないでしょう。そこでは科学が文化であると認識されていなかったということだと思います。科学は西洋に始まった西洋文化の一つでした。それが実用に役に立つことがわかってきて、科学をもとにした技術、発明という応用分野が大きく広がりました。科学はそれら、金を産む「技術」の基礎になっているとはいえ、その活動はおそらく全く逆と言ってよいほど異なると思います。科学は基本的にボトムアップになされるもので、それ自体が金になるものではない一方、技術は明らかにトップダウン的なストラテジーを採用し、実用をめざすものです。そういう意味で、応用を目指す技術と異なって、基礎科学は基本的に「文化」という範中に含められるべきものであり、利潤を求める経済活動として考慮されるべきものではないと私は思います。数学や文学と同様に科学は学問であり、人間の社会を豊かにするための文化である、ならば、科学に国が金を費やす理由としては、投資というよりは、そういう技術のもとになる「基礎体力」を失わないための「保険」であると考えるべきだと私は思います。基礎体力がなければ、どんな競技に出ても勝てませんが、基礎体力さえつければ、それで競技に勝てるのか、といわれるとそういうワケでもありません。シンガポールの戦略はその点、ちょっとhastyであったと思います。


さて、日本では相変わらず、人間のクズが小沢氏を国会に引っぱり出そうと小沢氏と会談し、当然のようにもの別れに終わったというムナクソ悪い話。このズルカンとかアホカンとか呼ばれているアンポンタン、小沢氏を国会に出せば支持率が上がるとでも思っているようで、手の施しようがないです。この辺、私が説明するよりも、「ラターシュ」の地上げ屋さんの言葉をお借りする方が適切と思いますので、転載させていただくことにします。(http://latache1992.blog56.fc2.com/)

412人の内閣を作る!
なんて言ったことなど・・アタマの片隅にもございません。
何しろこのかた。
誠意ってもんがございません。
お花見の席でのグルメブログを覚えていらっしゃるかたも多いと思います。
カルピスウォーターが大好きなこのかたは・・
間違えて、カルピスソーダを買ってきた秘書を・・
満座の支持者の前で怒鳴りつけました。
しかも・・・
一言で済むかと思ったら・・
延々、5分以上も叱り付けてます。
そりゃ、その秘書も使えませんよ・・確かに。 (苦笑)
でも、そんな秘書雇ってるのはご自身なのですから・・
部下の不始末は、
上司の不始末・・
と、自覚すべきです。

部下の手柄は、オレの手柄。
部下の不始末、オマエの責任・・って態度ですからね。
困ったもんです。

政治倫理審査会へのこだわりも判りません。
強制起訴が決まり、司法の場で決着することが決まってるのに、
国会へ出てって・・ナニ言えば良いのでしょうか?
「裁判を控えてるので、答弁は差し控えます」
の連発で・・
翌日のだメディアがいっせいに、
「疑惑はさらに深まった!」
「説明責任を放棄」
「野党、証人喚問を要求へ」
とくるのが目に見えてるのに・・・
これで、
通常国会もスムーズに行くし・・
支持率も回復する・・と、
本気で考えてるなら・・
もう、アタマがおかしいとしか考えられません。

多分、本当にガイキチなのでしょう

もう一つ、韓国と北朝鮮の対立、多分、アメリカが裏で台本を書いているという話。日本もそのシナリオの一部だと私は確信していますが、田中宇さんのサイトで解説があったので、リンクだけつけておきたいと思います。(http://tanakanews.com/101220korea.htm)韓国がアメリカの言いなりになって北朝鮮との戦争をはじめるようなことになれば、当然、日本もアメリカ極東軍事戦略の基点として巻き込まれます。日米安保という日本の安全保障のための条約が、いつのまにか日米同盟という名前のもっと広範囲をカバーするとんでもないものに変化していたことをどれくらいの国民は知っているのでしょうか。日本は戦争放棄をうたっているとは言え、日米同盟においては、アメリカの駒として戦争に参加する義務を負うことになっています。ここで、マスコミの捏造報道を真に受けて、「北朝鮮と中国、誅すべし」という体育会系ノータリン結論を大衆に採用させてしまってはいけません。
 中国に親しみを感じない人が80%という話ですが、これも日本のマスコミの偏向報道による洗脳の成果と思います。北朝鮮にしても然り、小沢問題にしてもしかり、あれだけ、ウソ八百を並べ立てれば、普段の生活に忙しく娯楽でテレビニュースを見ているような人々が北朝鮮や中国は悪い国だ、日米同盟は大切だ、などというプロパガンダを自然と受け入れてしまうのも当然でしょう。マエハラ氏など、しめしめと思っているでしょう。この危険人物は、とにかく近隣アジア諸国にケンカを売って、対立を煽り立て、日米同盟の安寧を図り、アメリカ支配と日本の富のアメリカへの流出を促進できれば、見返りに首相にしてもらえると本気で信じているようですから始末が悪いです。
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