tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良はこんなにいいところ/観光地奈良の勝ち残り戦略(124)

2018年05月15日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
5月8日、当ブログに「ヤバい!徳島県が宿泊客を増やしている」という記事を書き、それをFacebookに転載したところ、40件以上のコメントをいただいた。奈良県ではなぜ外国人を含む宿泊観光客が少ないのか、どうすれば増やせるのか、ということについて、率直なご意見をいただいたのだ。Facebookなので、このまま埋もれていくのは、いかにももったいない。今後への指針とするため、ここに主なご意見をまとめておくことにしたい。
※写真は霊山寺(りょうせんじ 奈良市中町)のバラ庭園で、2008年5月25日に撮影

1.私(tetsuda)が最初に注目したのは、徳島県では三好市の「大歩危・祖谷地区が外国人に人気」という事実である。「大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)」も「祖谷渓(いやだに)」も、山深い渓谷で、吉野川やその支流が流れる。奈良県でいえば十津川村のような場所である。それなら奈良県も頑張れば外国人観光客を呼べるのではないか、と提案したのである。

2.若林稔さん(今井町町並み保存会会長)からは《何度も言ってきています この欄も個人のやり取り、愚痴の語りどころになってませんか 愚痴から一歩踏み出すのは自身が広告塔になることです 1人ずつ来られた方に声かけしませんか バカげているようでこれが一番効果が早いです》。若林さんはこのような声かけを、今井町で日々実践されている。そして《いつの時代も官(行政)が先に動いて成功した試しはありませんよ まず、民が動いて官が支援する この図式が逆で民は文句ばかり言っているでは前へ進みません 1人ずつ行動してみませんか》。



3.松本道貫さんは《確かに部屋数は全国最下位ですが、それに輪をかけるのが客室稼働率の低さ。ホテルは何とか8割近くに達していますが、旅館は5割以下、ゲストハウスなどの簡易宿所に至っては3割以下、まずは稼働率を上げるため身を削る努力が必要でしょうね》。確かに奈良では旅館が不振である。長年、修学旅行に頼ってきたので、最近の少子化がボディーブローのように効いてきているのである。

4.田中利典師(金峯山寺長臈)は《現役時代に何度も奈良県には提言してきました。奈良観光は常に奈良市の寺社だけをメインにしてきましたが、吉野地域を含め、奈良県全体の誘客をやらないと奈良県には誰も泊まりません。だいぶ意識は変わって来たとは思いますが、まだまだ甘いですね》。これに若林さんは《同感です!まだまだ甘いですね!奈良市内に奈良県全体を語れる案内所が見当たりませんね!》と応じた。

5.若林さんは《旅館が閑古鳥泣いています すごい数の旅館が奈良県にはあるんですよ 外国人はわが家でふすまに感動し、畳に寝っ転がって喜び、庭の鯉を見て喜び、トンチンカンな和・英会話を楽しんでいます 市街地も良いけど田舎を求めている人も多いんですが、直接時間をかけて会話しないから その辺が見えないで対策をしているように思います》。

6.Yamamoto Kayoさんは《大阪はこれからもホテル建設ラッシュ。泊まってでも行きたい、と思えるもの(観光資源?環境?)のアピールが大事と思っている私です。JRに乗っていて聞こえてくるのは、ディアパーク(鹿公園=奈良公園のこと)という単語ばかりです》。長田耕爾さん(料理店主)は《泊まりたくなるような奈良にしていくのが、一番ちゃいます?》。



7. 松永洋介さん(ならまち通信社)は《昨夏おとずれた豪州の快適さをおもいだします》として奥さんの寮美千子さん(作家・詩人)の「彼らは、自分たちが持っているものの価値をよく知っている。そして、それを誰にでもわかるように伝える努力を最大限している。ケアンズの人口は15万人。歩いて回れるほどの小さな町だが、年間宿泊者数はのべ1030万人。奈良市の人口はケアンズの2倍強だが、年間宿泊者数は160万人、一桁低い。この差はどこから来るのか」という文章を引用された。また松永さんは別のところで《観光先進地(ケアンズなど)の様子をいろいろみて「奈良はだめだなあ」というがっかり感よりも、「やろうと思えば、ここまでできるのか!」という希望をもちました》と書かれた。

8.葛城彦太郎さん(俳優・東京在住)は《首都圏向けのJR東海さんの「うまし うるわし奈良~いまふたたびの奈良へ~」本当に素敵なCMはもう12年もやっているんですね。ふだん普通に奈良にある物のほんの少しだけ東京へ持って行くと、東京国立博物館には炎天下でも冬の寒い日にも有難いことに信じられない程の長蛇の列が出来ます。奈良まほろば館(東京日本橋三越前)のショップは人気で、講演にも熱心な皆さまがおいでになります。でも、これはほんの一部の人です。一般の人普通の人からみると、私のように年に数度、観光で奈良へ行く人間は不思議な目で見られることが多いです。「奈良のどこがそんなにいいの?」「修学旅行で行った事はあるがそれ以来行ってないナァ~」。そういう方には、奈良の良さを私目線で伝え、奈良には「いまふたたび」行ってもらえるようにしたいものです。また奈良市内近辺には数回は行かれている方には、吉野を中心にその良さを伝えてます。やたがらすの会へ連れて行き、町長夫妻に会わせてます!松永さんご紹介の寮さんの記事や、今井町の若林さんの存在などには、本当に勇気づけられますし、沢山のヒントが隠されてます。必要なのは、外への発信ももちろん大切ですが、受け手(奈良県民)の「姿勢」&「発想」ではないでしょうか!?こんなこと、ずっと言ってますものね、10年くらい…》。

9.これに対して松永洋介さんは《奈良の観光が伸びない根本原因は、そもそも県民が奈良を「いいところ」(じっくり旅をして、人生のよろこびを感じられる土地)だと信じていない点にあると思います。発信力以前》。葛城彦太郎さんは《受け手の奈良の皆さんが、奈良のどこが良くてそんなに来るの?との不思議そうな声が(奈良の)町でお話しすると返って来ます。「(じっくり旅をして、人生のよろこびを感じられる土地)だと信じていない点にあると思います」←そこですね!》。若林稔さんは《松永さん、いいとこついてます ここが一番厄介なところです ここを治すにはおかみ(官・行政)のいうことを崇拝する県民性を利用するのが一番ですが、おかみが意識して指導できるようにならないと、ですね!》。



10.河田照信さんは《奈良には、宿泊施設の数はあるけれど、宿泊したくなるような宿泊施設がないようです。大阪・京都にないような宿泊施設が欲しいですね、さもないと近くの大阪・京都に宿泊します。また宿泊客のターゲット(欧州・中国・東南アジア等)を明確にした、宿泊施設が必要です》。

11.寮美千子さんは《施設があるか否かよりも「日帰りじゃあもったいない、滞在したくなる町」であることのアピールが重要だと思います。既にお宝はたくさんあるし、写経体験や和装体験など、時間をかけて楽しみたいものはいくらでもあります。それをよりわかりやすくアピールするソフトが重要なのでは。欠けているのは、施設よりソフトだと思います》。

12.田中利典師は《5年前からはじめた吉野山の蔵王堂夜間拝観ツアーは好調です。こういう泊まってこその取り組みが必要でしょう》。寮美千子さんは《すばらしい取り組みですね。県内在住のわたしですが、いつか泊りがけでいってみたいと思います。そんな取り組みが増えて、もっともっと全国発信できれば!あと、早朝の楽しみもあったらいいのにと思います。奈良公園で朝市があればいいのになあ!》。

13.松本道貫さんは《容れ物さえ作ればという安易な発想、箱は行政で作るから運営は民間任せという双方責任を取らないという風土をぶち壊すことだと思います。大変なことですが》。



14.松永洋介さんは《県民や観光の人に奈良の価値を広く共有してもらうために、県立の歴史博物館が必要だと思います。地質時代から現代までの通史をあつかう。奈良には本格的な歴史博物館と、科学館と、文学館がありません。2014年に津市にオープンした三重県総合博物館は、比較的コンパクトな展示で、つかみどころのない「三重県」の価値を理解するのに十分な内容です。また香川県は20年前に「香川県歴史博物館」をつくりました。なかなかよくできていましたが、その後2008年になって瀬戸内海歴史民俗資料館と香川県立文化会館の美術部門を統合再編し、歴史・文化の発信機関として充実をはかっています》。

15.金田充史さん(ゲストハウス経営・もと旅館経営)は《私は宿泊産業に復帰しましたが、考え方は従来とは変わっておりません。また宿泊施設を閉めて跡地開発をした際に、この奈良市内ではどれだけ宿泊施設の運営が難しく、更に奈良市が一級品の中央資本から、どれだけ相手にされていないかも身を持って知りました》《これは不謹慎ですが、今の立場になって精神的に非常に健康になりました。また旅館時代では叶わなかったことも、逐次行える環境を想定して、開業した訳ですが、これも当たりました。ただ採算の取れるところまではまだまだ道半ばですが、個人のお客さまのリピーターは、確実に確保できています。その証拠に、リピートされる方が少なくありません。また、このリピートはお客さまご自身でのご予約でのリピートで、旅行会社都合のリピートではない訳です。ただ、外国人のリピーターは、現在の日本の状態ではまずムリですね。だから「リピーターを」の考え方は、日本人に限定されるのが現実です。ただ今後、外国人も2度3度と訪れるようになるでしょうから、その時にリピートの予約になるかどうかが決まると考えます。だからホテルよりもお客さまをつかみやすいのは10人から20人のゲストハウスの長所ですから、そこが今後どう転ぶかが焦点になると考えます》。

16.なお別のところで金田充史さんは《(奈良は)大阪・京都と事実上、同じ場所なんです。だから便利な場所に泊まってしまわれます。大阪なら、京都・奈良・神戸、更に吉野へでも自由自在ですから、やはり地域経済の中心地だけのことはありますねぇ。ただ、泊まってほしいのなら、施設のポテンシャルだけに依存するのではなく、その地域で夜も昼も何ができるのかってことでないと。単独の要因で解決することではない気がします》。



17.中谷幸司さんは、別の観点から問題提起された。《大都市では飲食業、宿泊業ともに働き手確保が今でさえますます難しくなってきていると思います。周辺都市はもちろん地方など人口減・高齢化が加速する中、そもそもおもてなしの人手確保はこれからどう対処すべきか、将来の課題でしょうか。外国人労働者を吸い寄せている大都市でできることと、地元の人間だけでやっていくことになるそれ以外の都市で提供していくことは、質もスケールも違ってくるのでしょうか》。

18.金田充史さんは《これは現実に起こりました。バブル経済時に労働者の確保が出来ず、外国人を大量採用して乗り切った旅館も多いです。但しサービスは格段に落ちました。ただバブル経済は崩壊し、その後はリストラの嵐で、これまた採用がしやすくなったため、人材については後回しになりましたが、今回の人材採用難は人口減がかんでいますから、もっと根本的な部分にまで掘り下げないと解決しません。ただ総論的に言えるのは、大都市へ流出している若年労働人口が、地方へはまず流れない(戻らない)と見るのが正解です。旅館など真っ先に苦労する業態ですねぇ》。中谷幸司さんは《適正規模以上のハードを作ってしまって、中で働く方がおられないと。それから宿泊業の経営では後継者問題も課題でしょうか。高齢化と引き継ぎ手、これもヒトの問題で、日本経済全般とも共通した課題ですね》。


いかがだろう?こうして並べてみると、多種多様な問題点が浮かび上がってきたのがお分かりいただけるだろう。宿泊観光客の増加は、一筋縄ではいかないのだ。

松永さんの《奈良の観光が伸びない根本原因は、そもそも県民が奈良を「いいところ」(じっくり旅をして、人生のよろこびを感じられる土地)だと信じていない点にある》というご指摘と、寮さん(奥さん)の《彼ら(豪州ケアンズの人々)は、自分たちが持っているものの価値をよく知っている。そして、それを誰にでもわかるように伝える努力を最大限している》というご感想は、全くいいところを突いている。

これは県民のマインド、意識を変えるということだ。今井町で若林さんが日々実践されていることを「奈良県レベル」でやらなければいけない、ということなのだ。

気の遠くなるような話に聞こえるが、決してそうではない。「一隅を照らす」の精神で、各自が自分でできる努力をすれば良いのである。いみじくも若林さんは「自身が広告塔になることです 1人ずつ来られた方に声かけしませんか バカげているようでこれが一番効果が早いです」とお書きである。

『観光白書』で奈良県内の宿泊客の属性を見ると、他府県人や外国人は結構泊まってくれている。全国平均に比べて極端に宿泊が少ないのは「奈良県民自身」である。県民が県内に泊まっていないのだ。まず自分が、家族が、県内に泊まる。その土地の良さを実感する。そしてその良さを他人に伝える。小さなことだが、これで好循環が回り出すのである。「奈良はこんなにいいところ」、これを合言葉にして、奈良県にたくさんの宿泊客をお迎えしましょう!
コメント (9)
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