tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

あまから手帖 実る奈良特集(2011年11月号)

2011年10月26日 | グルメガイド
あまから手帖 2011年 11月号 [雑誌]
あまから手帖
クリエテ関西

ミシュランに気をとられているうちに、「あまから手帖」11年11月号が発売されていた。第1特集は「実る奈良」である。同誌の「内容説明」によると《幅広いジャンルの店が揃い、今まさに実りの時期を迎えている奈良の料理店をご紹介します。例えば、イタリア野菜会席、串天居酒屋など気になる個性派や、海無し県の奈良で“魚”が売りの寿司屋や魚料理店など…。成熟してきた奈良をご堪能ください》とある。

事前に情報をシッカリと集めていたのだろう、『ミシュランガイド 京都・大阪・神戸・奈良 2011』に紹介された奈良のお店が、4軒も出ていた。登場順に

「田舎茶屋 千恵」(桜井市高家)
「御料理 花墻(はながき)」(奈良市学園南)
「イ・ルンガ」(ただしカフェのほう。奈良市春日野町)
「味の風 にしむら」(桜井市粟殿)

他にも奈良のお店がたくさん出ているが、商売の邪魔をしてはいけないので、過去に当ブログで紹介した店だけを並べておく。上記4店を除き同誌の掲載順に

「きたまち ce magasin(ス・マガザン)」(奈良市東向北町)
「鯛だしそば・つけ麺 はなやま」(奈良市鳥見町)
「ばぁる ぴあの-Bar piano-」(奈良市橋本町)
「天雅(てんが)」(天理市川原城町 点心のテイクウアト店として)
「酒蔵 ささや」(奈良市西寺林町 お酒のテイクアウト店として)

といった具合だ。ふらりと入って気に入った「きたまち ce magasin」と「はなやま」、そして新装されて再訪した「ぴあの」が掲載されたのは、喜ばしいことである。


あまから手帖奈良うまい店100選 (クリエテMOOK)
このアイテムの詳細を見る


過去に「あまから手帖」に掲載されたお店は、ピックアップしてクリエテ関西刊『あまから手帖 奈良うまい店100選』1,000円にまとめられている。このうち、ミシュラン奈良に掲載されたのは14か店であった。ミシュラン奈良の全掲載店は25か店だから、輩出率は56%(=14÷25×100)という高率である。

私はおおざっぱに、ミシュラン掲載店は「超ごちそう」、あまから手帖は「ごちそう」、ぱ~ぷるは「お手軽」と分類している。ミシュランのお陰ですべてのラインナップが出揃ったわけで、これは有り難いことである。私はこれらをもとに財布と胃袋の加減に応じてつまみ食いし、気に入った店だけを当ブログに載せるわけである。

なお、「あまから手帖」11月号の第2特集 は「ハンバーグ」である。《毎日放送のテレビ番組「魔法のレストラン」との連動企画で、みんなが大好きな定番メニューのハンバーグを特集します。洋食店のあの味、レストランの隠れたメニューなど、魔法のレストランとあまから手帖のスタッフが選んだ名作ハンバーグ15皿をドーンとご紹介します》というものだ。他にも美味しい情報満載の「あまから手帖」11月号、ぜひお早めにお買い求めください!
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奈良ソーシャルビジネスセミナー(第3回)は、10/29開催!(2011Topic)

2011年10月25日 | お知らせ
NPO法人「奈良NPOセンター」(理事長:仲川順子さん)から、イベントのご案内をいただいた。以下、同NPOのHPなどから抜粋して紹介する。なおソーシャルビジネス(SB)とは、ソーシャルビジネスネットのHPによると《環境や貧困問題など様々な社会的課題に向き合い、ビジネスを通じて解決していこうとする活動の総称です》《ソーシャルビジネスは、社会的課題への解決をボランティアとして取り組むのではなく、ビジネスの形で行うという新たな社会的活動の形や「働き方」を提供しています》。

《ソーシャルビジネスは、新しい社会的価値を産み出し、社会に貢献する事業として位置づけられ、活動に取り組む人自身や活動の成果を受け取る人、更には、地域及び社会・経済全体に「元気」を与える活動、といえます。このようなソーシャルビジネスの活動は、現状ではまだ萌芽段階ですが、近い将来には、行政や企業の協働パートナーとして、あるいは新たな公の担い手として、また社会的課題の解決に取り組むことを通して新たな産業・雇用を創出し、地域及び社会・経済全体の活性化を担う主体として、その役割が大きく期待されています》というものである。私の周囲でも、定年を機にSBの起業を考えている人もいる。

1.奈良ソーシャルビジネスセミナー(2011 第3回)「社会起業アドバイス編」
ソーシャルビジネスセミナーでは、SB に取り組み、現場で活躍する方を講師にお招きしています。本年度第3回は「社会起業アドバイス編」と題し、ソーシャルビジネスの足がかりとなるよう話し合いたいと思います。皆様のご参加をお待ちしております。
日時:10月29日(土) 13:30~(受付13:15~)
場所:奈良マーチャントシードセンター
参加費:無料
募集人数:40名
【プログラム】
13:15 受付
13:30 開催挨拶
13:40 講演 杉岡 秀紀さん
(一般財団法人地域公共人材開発機構 事務局統括)
「SB・CBをはじめる方へのアドバイス」
~マーケティングの視点からSB・CBをプロデュースする~
14:20 事例紹介 三宅 基之さん
(地域の学び推進機構 副会長)
「これから有望なSB・CBについて」
15:05 休憩
15:15 グループディスカッション
16:10 終了
※申し込み方法などは、こちら

2.「なら・ソーシャルビジネスコンテスト2011」開催のお知らせ
SB・センター奈良では奈良県を舞台に展開されるユニークなソーシャルビジネスのアイデアを競う「なら・ソーシャルビジネスコンテスト2011」を開催します。奈良から新しい一歩が踏み出される瞬間を、ぜひご覧下さい!
【当日のご案内】
名称:「ならソーシャルビジネスコンテスト2011」
日時:2011年11月13日(日) 13:30~
場所:奈良県立大学 多目的ホール
内容:入賞9本(各部門×3本)のプレゼン審査、オーディエンス賞イベント、『優秀賞』(各部門×1本)及び『奈良SB大賞』選出・表彰式
(ソーシャルビジネスプランの募集は終了しました。)
※詳細はこちら

3.NPO活動推進自治体フォーラム 全国大会in奈良奈良市のHPより)
「市民・NPO・企業・大学・行政が築く新たな地域社会」東日本大震災を踏まえて~今、日本の大転換~
日時:2011年11月24日(木)・25日(金)
場所:なら100年会館、はぐくみセンター(奈良市保健所・教育総合センター)
※詳細はこちら
※申込みはこちら(PDF)。(10月31日まで期限を延長)


NPO活動推進自治体フォーラムの「大会趣旨」には《平成22年1月29日の国の施政方針演説に、行政だけでなく、市民、NPO、企業、大学が新しい公共の担い手となって活動を展開する「新しい公共」という言葉が取り上げられ、円卓会議や、新しい公共のモデル事業が進む中、これからは、様々な新しい公共の担い手とともに、「みんなで支える21世紀のまちづくり」について考え、市民力を結集していく必要があります》。

《阪神淡路大震災の起こった平成7年がボランティア元年であるならば、東日本大震災の起こった本年が「社会変革元年」となるように、改めてボランティア・NPOの役割について考え、地域における新たな関係づくりについて議論を行いたいと思います》とある。

ボランティア元年から16年、社会変革元年の今年は、「新しい公共」の担い手たちが何をすべきか、ぜひシッカリと見極めていただきたいと思う。
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奈良まほろば市は10/29~30、奈良のうまいものグルメコンテストも同日開催!(2011Topic)

2011年10月25日 | お知らせ
今年も「奈良まほろば市」が開催される。県(産業・雇用振興部地域振興課)のHPによると

「奈良まほろば市」を今年も開催します!

平成21年より、奈良県商工まつり、なら食と農(みのり)のフェスティバル、奈良技能フェスティバルを「奈良まほろば市」の統一名称にて合同開催し、3年目を迎えました。

本県中南和地域のイベントとして、県内の地場産品、農林水産品、調理・機械加工などの優れた技が一堂に集まり、ならのものづくり・食と農・技能など奈良の魅力にふれあう機会を提供します。

【日時】
10月29日(土) 9時30分~16時30分
10月30日(日) 9時30分~16時
【会場】
県立橿原公苑一帯(橿原市畝傍町)
☆詳細はコチラ☆(奈良まほろば市チラシ) 
皆様のご来場をお待ちしております!

今年はクーカルがあり、ミシュラン奈良も発売された。そのほか、様々なグルメコンテストが目白押しである。しかも台風に伴う自粛により、中止に追い込まれたコンテストもあった。さすがの私も頭がこんがらがっていたところ、うまい具合に読売新聞奈良版(10/22付)が情報を取りまとめてくれた。見出しは「グルメコンテスト相次ぐ B級中心」だ。

《県内で今年、グルメコンテストの開催が相次いでいる。21日に発売された「ミシュランガイド」の高級路線とは一線を画した庶民的なB級グルメが中心で、「奈良に、別の意味でうまいものあり」をPRする動きが広まってきた。B級グルメにこだわったコンテストは、奈良市飲食店組合が5月に平城宮跡で開いた「ならB級グルメ決定戦」が先陣。8月に地元情報誌が奈良市で催した「奈良B級グルメNO1決定戦」、10月16日には御所市で「葛城の峯G級グルメコンテスト」があった。会場では、焼きそうめんやギョーザが香ばしいにおいを漂わせた》。

《特産の食材を使ったコンテストもある。今月29、30日には奈良のうまいもの会が橿原市の県立橿原公苑で「奈良のうまいものグルメコンテスト」を実施。大和野菜や柿などを使用した新作をスイーツとフードの各部門で競い、来場者の投票で優勝を決める。井上昇会長は「新しい名物料理を提案し、奈良の食文化を発信したい」と語る》。

《天理市では11月26日に天理駅前広場で「奈良発!新・うまいもの選手権in天理」が開かれる。こちらは三輪そうめんや奈良漬だけではない、奈良を代表する土産品を発掘するのが狙いだ。県マーケティング課の嶋本義隆課長は「県内統一のコンテストも開催できれば」と期待している》。

いかがだろう。とにかく今週末は「奈良まほろば市」と併設の「奈良のうまいものグルメコンテスト」(10/29~30)、次は「奈良発!新・うまいもの選手権in天理」(11/26)である。食欲の秋、県民の胃袋は大忙しである。
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あしたのなら表彰(第2回)を受賞します!(2011Topic)

2011年10月24日 | お知らせ
以前、当ブログで皆さんにご応募を呼びかけた「第2回 あしたのなら表彰」、縁あって、当の私が表彰されることになりました、有難うございました。当ブログには《いわば「県民栄誉賞」「名誉県民」といった趣きである》と書きましたが、県からいただいた通知状には《貴殿の活動は、特に奈良県に元気や感動を与えていただいており、あしたのなら表彰にふさわしい活動であると認められ、被表彰者として決定いたしました》とありました。
※薬師寺から、「ナント・なら応援団」に感謝状をいただきました(=トップ写真 10.12.15撮影)


奈良女子大生向け研修(討論会)の模様。テーマは「橿原市今井町の現状と展望」(9/20)

選定理由の欄には《観光ボランティア活動の実践者。平成22年に「ナント・なら応援団」を結成し、平城遷都1300年祭では寺社を巡る観光ボランティアガイドの中心となり、活動に積極的に参加し奈良の魅力PRに貢献されました。平成17年からは自身でブログを開設し、奈良のグルメ情報や観光情報を全国に発信されています》。

「ナント・なら応援団」は、会社のOBたち36人を団員とする解説ボランティア・グループで、昨年1月に結成しました。1300年祭の昨年1年限りの活動とする予定でしたが、おかげさまでご好評いただき、今後も活動を継続することとしています。当ブログは早くも丸6年を迎え、読者の皆さんに支えられ、何とか継続できています。昨年は1300年祭、最近はミシュラン奈良の発売で、1日のアクセス人数は約2千人となりました。


畿央大学の公開講座で講話。演題は「3つの力(パワー)で奈良を元気に」(8/28)

私以外の受賞者の皆さんは、以下のとおりです。詳細は県のHPに出ていますので、ご覧ください。

(団体)
・社団法人奈良まちづくりセンター 市民主導行政支援型のまちづくり活動の先駆者
(個人)
・岡本新悟様(65歳) 海外での医療援助活動者
・柴田修様(84歳) ものづくり後継者の育成に貢献
・吉田侑加様(22歳) クリケット女子日本代表選手
・尾川欣司様(67歳) 地産地消や食育の大切さを伝える活動リーダー。なお尾川氏が運営するル・ベンケイ(フランス料理店)は、このほどミシュランで一つ星を獲得された
・高橋裕子様(57歳) 禁煙プログラム「禁煙マラソン」主宰者


知人を引率して、ならまち周辺を案内(10.6.20)

私は知人から「サラリーマンが受賞するのは、珍しいですね」と言われました。確かに、皆さん「本業で、この道一筋」という方ばかりです。私は別に生業(なりわい)がありながら、休日とアフター5を利用して、ボランティアとして観光ガイドやブログでの情報発信をしているわけで、珍しいと言われれば、確かにその通りです。

表彰式は県新公会堂で10/30(日)の13時から、となっていますが、講演会や別の表彰式(ならビューティフルシニア表彰式)がありますので、「あしたのなら表彰式」は15時から16時までです。私はこの日に備えて背広を新調し、妻は「着物を着ていく」と張り切っています。

長いキャリアをもつ他の皆さんとは違い、私は当ブログのスタートから数えて7年足らず、県の「奈良のうまいもの」づくり部会委員(02年~10年)から起算してもまだ9年です。「奈良にもっと元気を」という私の活動は、まだ緒に就(つ)いたばかりですが、幸い若いほうから数えて2番目、これからが活動本番です。今後は、奈良検定ソムリエ有志から成る「奈良まほろばソムリエ友の会」の展開と、県の「記紀万葉プロジェクト」の支援をテーマとして、鋭意努力していきたいと考えたいます。当ブログ読者の皆さん、引き続きご指導・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
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TPPなんて、とんでもない!

2011年10月24日 | 意見
TPP亡国論 (集英社新書)
中野剛志
集英社

政府・民主党は、TPPの交渉参加を巡る党内論議を、11月2日までに終えたいとしている。要は、翌3日~4日にフランスで開かれるG20までに間に合わせたいという魂胆である。そのためこの土日にも、いろんな動きがあった。J-CASTニュース(10/23 17:00配信)《TPP交渉参加めぐって民主大もめ 反対派「徹底抗戦」で野田首相ピンチ》によると、《環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題で、民主党内が賛成、反対に分かれての攻防が続いている。2011年11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに党として結論を出す見込みだが、反対派は「妥協の余地なし」と徹底抗戦の構えで、解決の糸口は見えてこない》。

《TPPをめぐっては、既に米国をはじめ9か国が交渉を始めている。加盟した場合、農産物をはじめ工業品、さらには医療分野でも関税が撤廃されて貿易自由化が進む。野田佳彦首相はTPPへの交渉参加について、「高いレベルでの経済連携は日本にとってプラス」と、前向きな姿勢を見せている。この動きに反対する衆参議員110人が10月21日、「TPPを慎重に考える会」を立ち上げ、決起集会を開いた。参加メンバーは超党派で、民主党からも鳩山由紀夫元首相をはじめ多くの議員が名を連ねた》。

《会長を務める山田正彦前農水相は、10月23日に放送されたフジテレビの番組で、自身の考えを改めて示した。コメなど国内の農業全体を考えた時、ニュージーランドや豪州の農産物と対抗するうえで「規模を拡大すればもうかる、というわけではない」と説明。賛成派の議員は「交渉に参加したうえで、日本の国益に反する場合は異を唱えればいい」と主張したが、山田前農水相は「一度参加したら簡単には抜けられない」として、必ずしも参加各国が日本の立場を理解して主張を「丸のみ」してくれるわけではない点をにおわせた》。

《番組の終わりに司会者から「妥協案はあるか」と問われた山田前農水相は、「ありません」とひと言。党が交渉参加を強行する場合は徹底抗戦に入る構えを明らかにした。そのうえで、反対が認められない場合に「離党もありうるか」との質問には「『慎重に考える会』の議員の皆さんとよく相談したい」として、その可能性を否定しなかった》。

《一方、民主党の前原誠司政調会長は、10月23日にNHKの番組に出演。TPPについては「党内の議論を通じて、国民にも問題の所在、メリット、デメリットを理解してもらうよう努力したい」と話す一方、交渉に参加したうえで日本の利益にそぐわなければ「撤退もありうる」との考えを示した》。

野田首相はTPPの交渉参加にずいぶんとご執心のようだが、私は菅首相(当時)が昨年10月所信表明演説でいきなりTPPを持ち出したときから、「絶対反対」を唱えてきた。しかし不思議なことに、これは少数意見だった。私は9/13(火)、奈良ホテルで佐藤優氏(ライター、元外交官)の講演を聴いた。佐藤氏は「TPPは自由貿易協定ではない(自由貿易はWTO=世界貿易機関)。TPPとは、要するにアメリカのブロック経済圏に入れ、ということである」と喝破した。「環太平洋(Trans Pacific)」という枕詞にダマされてはいけない、実態は「汎アメリカ」なのである。

国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)
中野剛志
講談社

10/11(火)、「SNSけいはんな」という地域SNSで、ichiroさん(奈良女子大学名誉教授)が中野剛志氏(京都大学大学院助教授)のインタビュー記事(1/19付)を紹介されていた。「TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる」というタイトルで、これは論旨明快、目からウロコの話であった。少し長くなるが、以下にピックアップして紹介したい。

なおトロイの木馬とは《トロイア戦争において、トロイアを陥落させる決め手となった。木でできており、中に人が隠れることができるようになっていた。 転じて、巧妙に相手を陥れる罠を指して「トロイの木馬」と呼ぶことがある》(Wikipedia)という意味である。またFTA(自由貿易協定)とは《2国間または地域間(多国間)の協定により、モノの関税や数量制限など貿易の障害となる壁を相互に撤廃し、自由貿易を行なうことによって利益を享受することを目的とした協定》(keizai report.com)のことである。では、中野氏の話に耳を傾けよう。

TPPの議論はメチャクチャです。経団連会長は「TPPに参加しないと世界の孤児になる」と言っていますが、そもそも日本は本当に鎖国しているのでしょうか。日本はWTO加盟国でAPECもあり、11の国や地域とFTAを結び、平均関税率は米国や欧州、もちろん韓国よりも低い部類に入ります。これでどうして世界の孤児になるのでしょうか。ではTPPに入る気がない韓国は世界の孤児なのでしょうか。

「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」と言いますが、そこにアジアはほとんどありません。環太平洋というのはただの名前に過ぎません。仮に日本をTPP交渉参加国に入れてGDPのシェアを見てみると、米国が7割、日本が2割強、豪州が5%で残りの7カ国が5%です。これは実質、日米の自由貿易協定(FTA)です。

中国漁船の船長を解放したのは、日本の法律で外国人を裁けないという治外法権を指します。次にTPPで関税自主権を放棄するつもりであることを各国首脳の前で宣言したのです。

米国は貿易赤字を減らすことを国家経済目標にしていて、オバマ大統領は5年間で輸出を2倍に増やすと言っています。米国は輸出倍増戦略の一環としてTPPを仕掛けており、輸出をすることはあっても輸入を増やすつもりはありません。

(オバマ大統領は)「巨額の貿易黒字がある国は輸出への不健全な異存をやめ、内需拡大策をとるべきだ」とも言っています。巨額の貿易黒字がある国というのは、中国もですけど日本も指しています。そして「いかなる国も米国に輸出さえすれば経済的に繁栄できると考えるべきではない」と続けています。TPPでの日本の輸出先は米国しかなく、米国の輸出先は日本しかない、米国は輸出は増やすけれど輸入はしたくないと言っています。米国と日本の両国が関税を引き下げたら、自由貿易の結果、日本は米国への輸出を増やせるかもしれないというのは大間違いです。米国の主要品目の関税率はトラックは25%ですが、乗用車は2.5%、ベアリングが9%とトラック以外はそれほど高くありません。

中国は米国との間で人民元問題を抱えています。為替操作国として名指しで批判されています。為替を操作するということは貿易自由化以前の話ですから、中国はおそらく入りません。韓国はというと、調整交渉の余地がある二国間の米韓FTAを選択しています。なぜTPPではなくFTAを選んだかというと、TPPの方が過激な自由貿易である上に、加盟国を見ると工業製品輸出国がなく、農業製品をはじめとする一次産品輸出国、低賃金労働輸出国ばかりです。韓国はTPPに参加しても利害関係が一致する国がなく、不利になるから米韓FTAを選んでいるのです。日本は米国とFTAすら結べていないのに、もっとハードルが高く不利な条件でTPPという自由貿易を結ぼうとしています。戦略性の無さが恐ろしいです。

日米間で関税を引き下げた後、ドル安に持って行くことで米国は日本企業にまったく雇用を奪われることがなくなります。他方、ドル安で競争力が増した米国の農産品が日本に襲いかかります。日本の農業は関税が嫌だからといって外国に立地はできず、一網打尽にされるでしょう。グローバルな世界で関税は自国を守る手段ではありません。通貨なんです。

米国の関税は自国を守るためのディフェンスではなく、日本の農業関税という固いディフェンスを突破するためのフェイントです。彼らはフェイントなどの手段をとれるから日本をTPPに巻き込もうとしているということです。

みなさんはTPPに入れば製造業は得して農業が損をすると思っているため、農業対策をすればTPPに入れると思うようになります。農業も効率性を上げればTPPに参加しても米国と競争して生き残れる、生き残れないのであれば企業努力が足りない、だから農業構造改革を進めよと言われます。

それは根本的に間違いだと思います。関税が100%撤廃されれば日本の農業は勝てません。関税の下駄がはずれ、米国の大規模生産的農業と戦わざるを得なくなったところでドル安が追い打ちをかけます。さらに米国は不景気でデフレしかかっており、賃金が下がっていて競争力が増しています。関税撤廃、大規模農業の効率性、ドル安、賃金下落という4つの要素を乗り越えられる農業構造改革が思いつく頭脳があるなら、関税があっても韓国に勝てる製造業を考えろと言いたいです。

自由貿易は常に良いものとは限りません。経済が効率化して安い製品が輸入されて消費者が利益を得ることは、全員が認めます。しかし安い製品が入ってきて物価が下がることは、デフレの状況においては不幸なことなのです。デフレというものは経済政策担当者にとって、経済運営上もっともかかってはいけない病だというのが戦後のコンセンサスです。物価が下がって困っている現状で、安い製品が輸入されてくるとデフレが加速します。安い製品が増えて物価が下落して影響を受けるのは農業だけではありません。デフレである日本がデフレによってさらに悪化させられるというのがこのTPP、自由貿易の問題です。

農業構造改革を進めて効率性があがった日には、日本の農家も安い農産物を出荷してしまうことになり、さらにデフレが悪化します。デフレが問題だということを理解していれば、構造改革を進めればいいなんて議論は出てきません。

こういう議論をすると「農業はこのままでいいのか」ということを言い出す人がいます。しかし、デフレの時はデフレの脱却が先なのです。インフレ気味になり、食料の価格が上がるのは嫌なので農業構造改革をするということはアリだと思います。日本は10年以上もデフレです。デフレを脱却することが先に来なければ農業構造改革は手をつけられません。

例えばタクシー業界が競争原理といって規制緩和の構造改革をしました。デフレなのに。その結果、供給過剰でタクシーでは暮らせない人が増えて悲惨なことになりました。今回は同じ事が起ころうとしています。

米国が輸出を伸ばし日本が輸入を増やして貿易不均衡を直すこと自体は、賛成です。ところが、関税を引き下げて輸入をすると物価が下がるので、日本はデフレが悪化します。経済が縮小するので、結局輸入は増えません。農産品が増えれば米国の農業はハッピーですが、トータルで輸入は増えません。

なぜこんなにTPPが盛り上がってしまうのでしょうか。TPPは安全保障のためだという人がいますが、根本的な間違いです。まずTPPは過激な自由貿易協定に過ぎません。軍事協定とは何の関係もありません。

尖閣や北方領土の問題を抱え、軍事力強化は嫌だなと思っているときにTPPが浮かび上がってきて、まさに「溺れる者は藁をもつかむ」ようにTPPにしがみつきました。でもこれにしがみついたって何の関係もないです。もし米国が日米同盟を重視していないのであれば、TPPに入ったって日本を守ってくれません。

議論が複雑でやっかいかもしれませんが、せめてGDP比を見て「TPPは日米貿易に過ぎない」とか、米国が輸出拡大戦略をとろうとして輸入しないようにしているということぐらい知ってもらわないと、戦略を立てようがありません。推進派の人たちが国を開けとか、外を向けとか言っていますが、本当に外を向けば、TPPでは何のメリットもないことがわかるんです。

欧州では「トロイの木馬」の教訓があります。それは「外国からの贈り物には気をつけよう」という言い伝えです。外国から贈り物を受け取るときはまず警戒するものですが、日本はTPPという関税障壁を崩すための「トロイの木馬」を嬉々として受け入れようとしているのです。

米国の庇護の下で経済的な豊かさだけを追って、何をしても成功し、ちょっとバカをしても大した損はしなかった世代の人々が90年代以降に企業や政府のトップになり、それ以降日本のGDPが伸びなくなりました。この世代の人たちが「日本の改革のためには外圧が必要だ」「閉塞感を突破するためには刺激が必要だ」という不用意な判断をするので、ものすごい被害を及ぼすことになるのです。

先日朝日新聞社から団塊の世代の方がインタビューに来た時に、彼らの世代の口癖を指摘しました。このままでは日本が危ないという話をすると必ず「そんなことでは日本は壊れない」という口癖です。しかし、日本はもうすでに壊れているんです。政界はもちろん、私も含めた官僚、財界そして知識人は、毎年3万人の自殺者の霊がとりついていると思うぐらいの責任感をもって、もっと真剣に国の行く末を考えないといけません。


国力論 経済ナショナリズムの系譜
中野剛志
以文社

奈良県民は、かつての木材輸入自由化により、県を代表する地場産業であった林業・製材業が壊滅的な打撃を受け、ひいては放置人工林問題を引き起こしている事実を忘れてはならない。放置人工林は花粉症の元凶であるばかりか、先頃の台風12号では、深層崩壊を招いたとまでいわれているのだ。

HP「森林・林業学習館」によると《昭和30年代、木材の需要を賄うべく、木材輸入の自由化が段階的にスタートし、昭和39年に木材輸入は全面自由化となりました。国産材の価格が高騰する一方で外材(外国産の木材)の輸入が本格的に始まったのです。外材は国産材と比べて安く、かつ大量のロットで安定的に供給(一度にまとまった量を)供給できるというメリットがあるため、需要が高まり、輸入量が年々増大していきました。しかも、昭和50年代には、変動相場制になり、1ドル=360円の時代は終わました。その後、円高が進み、海外の製品がますます入手しやすくなったのです》。

《これらの影響で、昭和55年頃をピークに国産材の価格は落ち続け、日本の林業経営は苦しくなっていきました。昭和30年には木材の自給率が9割以上であったものが、今では2割まで落ち込んでいます。日本は国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林大国です。しかしながら供給されている木材の8割は外国からの輸入に頼っているといういびつな現状になっています。一方、国内の拡大造林政策は見直されることなく続けられていました。平成8年にようやく終止符が打たれましたが、木材輸入の自由化、そして外材需要の増大の影響で、膨大な人工林と借金が残りました》。

「グローバルな世界で関税は自国を守る手段ではありません。通貨なんです」「デフレである日本がデフレによってさらに悪化させられる」「TPPは過激な自由貿易協定に過ぎません。軍事協定とは何の関係もありません」という中野氏の話に、もっと耳を傾けていただきたい。

タイミング良く昨日、日経電子版は創論・時論 読者アンケート「TPP参加、日本経済への影響は」 をスタートさせた(10/27まで)。電子版にパソコンからアクセスできる方は、ぜひ率直なご意見をお寄せいただきたい。政治家が頼りにならないのだから、良識ある国民は、もっと声を上げなければならない。
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