もしかしたら仮死状態じゃないのか、いきなり復活することだってあり得るのではないか、などという思いがあって水中からは引き上げたものの、そのままにしていた。三寒四温のこの月、えらく温かい日もあるのに目覚める気配は微塵もない。カメリアは本当に永眠したものと諦めることにした。
花壇の隅を掘っていたら、枇杷の木の根が伸びてきていた。穴掘りシャベルでガツンガツンと根を切って掘り上げたら、セミの幼虫がでてきた。今夏、成虫となって空を飛ぼうという大きさに成長している。人身御供ならぬセミ御供になってもらうことにする。
何か下に敷きたいと思って捜したら、鹿沼土が見つかったので穴に入れた。カメリアの上向きに反り返った左手にセミを載せて、これも何か被せるものはないかと捜し見つけたプラスチックの面で被ってから土をいれた。セミの幼虫は傷ついていないようだったので、また木の根にたどり着き、夏になったら羽化して天命を全うするだろうと思いたい。この墓は十年後に暴いて甲羅をとりだすつもり。