ネットで古本を簡単に安く手にいれるとなると、
あとはどんな古本を買うかという選択の楽しみ。
せっかく買っても読まなければ、しょうもない。
平川祐弘決定版著作集が出ておりますが、
とても高くて手がでないし、こういうのは、
買っても読まない。わたしは読み通せない。
ということが分かっている。こういう時は、
古本で平川祐弘氏の単行本を選んで買うのでした。
最近の古本購入して楽しめたのは、
粕谷一希『書物への愛』(藤原書店・2011年)。
うん。古本購入の流れは、すぐに忘れるので、
ここは、購入までの経緯報告。
月刊Hanada2022年1月号に
平川祐弘氏の連載『一比較研究者(コンパラティスト)の自伝』があり、
39回目でした。そのなかに、こんな箇所があります。
「・・私たちの対談は粕谷一希『書物への愛』に活字化されている。
・・・今度読み直して実のある対談だったと思った。・・・」(p349)
はい。この一言が購入動機でした。
ちなみに、『書物への愛』は8名の対談を載せてあり、
わたしが、読んだのは平川祐弘氏との対談のみ。
わたしは、数学と外国語と、どちらも苦手。
それでも、平川氏のお話は、興味をそそられました。
たとえば、こんな箇所。
平川】 いや私は語学の天才ではありません。
習うのにかけた時間に比例してできるだけで、
持っているのはある種の要領の良さだけです。
・・・・・・
それに私自身語学を教えていて授業を休んでも
よく出来るというような天才には東大でもつい
に会わなかった。(p129)
うん。ここいらを引用しはじめるとキリがないので、
とばしてゆきます。
平川】 ・・僕の場合は、中国に行っても、台湾に行っても
『ちょっと習おう』という気になってしまって、
ついやってしまうんです。
しかし外国語を習っている間は人間受動的になるから
自分で創造的な論文が書けなくなる。・・・・・
とはいえ、やはりどこの大学にも一人くらい複数の語学の
よくできる人がいないといけない。そうしないと外国人教師が
とかく日本人外国語教師をなめていけない。・・・・(p134)
このあとに、『三点観測が大切ですね』という箇所になります。
平川】 二点しか見ない人の欠点について申しましょう。
例えば『日中関係が大事だ』といったことについても、
それによって日米関係が悪くなっては困るわけです。
また日台関係が悪くなっても困る。
『友好』を言う人は多いですが、
ところが『友好』というのは、
二点ではなく三点で築かなければいけない。
西洋の学者には、中国大陸と台湾の両方に行っている人が非常に多い。
しかし、日本の場合は、その割合が非常に少ない。
最近はそうでもありませんが、一時期は
台湾に行く人と大陸に行く人がはっきりと分かれていた。
僕は、台湾と大陸の両方に行っていて、・・・
北京で日本人に『あなたは台湾派ではないのか』と
聞かれたことがあります。実際、困ったことも経験しました。
(p136)
はい。まだ引用したりない気分ですが、
このくらいにして、最後を引用。
平川】・・・とにかく今日は、
何か差し障りのある本当のことばかり言ってしまって・・・。
二昔前、粕谷さんは『歴史の読み方』(筑摩書房・1992年)で
書物を手がかりに十人の名士と対談していて、それが見事で、
君は論壇の御指南番だなと感心しましたが、
まさか私が呼び出されるとは思わなかった。
粕谷君にも、こんなにしゃべったことはあまりないだろう。
粕谷】 しゃべりっぱなしだよ(笑)。
平川】 やはり、君に引き出されたんだ(笑)。 (p193)
はい。この最後に出てくる『歴史の読み方』も
古本で注文することにしました。