和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

それはまるで。

2025-01-07 | 短文紹介
寒いと、暑い時の草取りのことが思い浮かぶ。
はい。へそ曲がりです。

庄野潤三著「ザボンの花」がなかなか読めない。
こういう際は、印象的な箇所を引用するに限る。

第七章は、奥さんの千枝さんの箇所。
そこに、草取りについてが書かれておりました。
そこを、引用しておきます。

「・・庭の草がまた大分のびて来た。ついこの間
 抜いたばかりのように思うのに、もうこんなに生えている。

 千枝は、庭の草とりというのは、好きではない。
 むかしからそうだ。これは根気のいる仕事だ。
 一回草とりをやるのに、大決心を要する。
 いざやり出すと、千枝はそれに熱中して、
 夕方おそくまでかかって全部片づけてしまう。
 そして、草とりを終ったあとは、とても気持がよく、
 いかにもよく働いたという感じがする。

 しかし、やり出すまでがなかなかのことなのだ。
 根までうまく抜けてくれるのなら、草とりも面白いけれど、
 細い草の根が案外堅くて、ちょっとやそっと力を入れても
 抜けず、葉だけ取れてしまう。

 それはまるで、人生のことが
 なかなかうまい具合に運ばないのと、よく似ている。
 そして、焦ったり、腹を立てると、ますますうまくゆかなくなるのだ。
 ・・・     

 ・・・千枝は空想するのだ。・・・
 そんなことを思うものだから、草とりを始めるまでが大変なのだ。
 千枝は、そろそろ草を抜かないといけないと思い出してから、
 一週間くらいぐずぐずしている。    」


こうして草取りをはじめようと、庭にでてから、
第七章『こわい顔』の本題がはじまるのでした。
その前の第六章は父親(主人公)の様子でした。
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