和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

狐の歳月。

2007-10-17 | 詩歌
永瀬清子著「短章集」(思潮社・詩の森文庫)が今年(2007年)の2月に出版されていました。それについて語りたかった。
茨木のり子著「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)を読んだ時に、そこに永瀬清子の詩「諸国の天女」と、もうひとつ「悲しめる友よ」とが引用されておりまして、私には「悲しめる友よ」が忘れがたく思ってました。けれども、それがどの詩集に載っているのか分からずじまいで。それっきり忘れていたのです。こんかい「短章集」をぱらぱらとめくっていたら、ここにありました。

ところで、「短章集」に「狐」と題した文があります。
短いので、全文引用してみます。

  狐が女に化けて七兵衛をだましに来たが、ついあわてて尻尾が出ていた。 
  男はこれに気づきしらん顔をしていた。二三日して男がいつもの通り
  仕事をしていると狐が又「七兵衛さん、七兵衛さん」とよぶ。
  「何じゃい」と答えると狐は
  「お前、この間はおかしかったろうなあ」といったーー。
  話はそれだけ。でも自分の作品を恥じている詩人と同じなので
  この狐がとてもいじらしい。


そういえば今年の2月には、茨木のり子詩集「歳月」が発売になっておりました。
その詩集のあとがきは宮崎治氏が書いており。この詩集のたたずまいを教えてくれておりました。そのはじまりを引用しましょう。

『歳月』は、詩人茨木のり子が最愛の夫・三浦安信への想いを綴った詩集である。
伯母は夫に先立たれた1975年5月以降、31年の長い歳月の間に40篇近い詩を書き溜めていたが、それらの詩は自分が生きている間には公表したくなかったようである。何故生きている間に新しい詩集として出版しないのか以前尋ねたことがあるが、一種のラブレターのようなものなので、ちょっと照れくさいのだという答えであった。・・・・



さて、「歳月」という詩集に「獣めく」という詩があります。
その、最初と最後の箇所を引用してみたくなりました。


     獣めく夜もあった
     にんげんもまた獣なのねと
     しみじみわかる夜もあった

     ・・・・・・・
     ・・・・・・・

     なぜかなぜか或る日忽然と相棒が消え
     わたしはキョトンと人間になった
     人間だけになってしまった





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