和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ちょとしたコツみたいなもの。

2022-12-05 | 道しるべ
今はどうなのでしょう?
私の小学生の頃は『書き初め』は当然のようにありました。
中学では、ちょこっとあったかなあ。

大村はまの国語通信を読んでいて、思ったのですが、
私の『書き初め』は、書く言葉のお手本があって指定されていた。
そこが気になり書いてみます(昨日のブログの続きになります)。

まずはここから。
苅谷夏子さんは、大村はまの授業をこう語っておりました。

「学校という場は、すでにできあがった知識体系を、
 疑う余地も残さず、あたりまえの顔をして教えてしまう。
 立派な知識のお城を前に、生徒は委縮した
 未熟な存在にならざるをえないところがある。

 ところが、この『ことば』という平易な、しかし
 やっかいなことばの分類をしてみたことで、私は 
 しゃんと背筋が伸びた気がしたわけだ。
 過去に知的遺産を築いた人々と同等の資格を持って、
 堂々と勉強を進める楽しさを教えられたのかもしれない。

 実際、大村国語教室の私たちは、
 生意気とも思えるほど一人前の
 『学ぶ人たち』だったのではなかろうか。 」
           ( p48 「教えることの復権」ちくま新書 )

『書き初め』で、自分が書く言葉を、自分で選ぶところからはじまる。

うん。この引用は途中からで、わかりずらい箇所もありますが、
まあいいか、つぎを続けます。

苅谷夏子さんは、1956年生まれ。
13歳の二学期でした。
こうあります。

「私は中学生になった。相変わらず理数系のほうが肌に合うと思っていた。
 一年生の夏休み、父の転勤に伴い石川県金沢市から東京都大田区へと
 引っ越して、区立石川台中学校に転入することになる。

 夏休み明けのじりじりと暑い日、私は国語教室として使われていた
 図書館で、当時63歳だった国語教師大村はまに出会った。」
               ( p18~19 同上 )


断捨離されずに、大村はまさんの、その頃の「国語教室通信」は残され、
しかも手書きのままの資料が、大村はま国語教室資料篇②として読める。

苅谷夏子さんは、昭和44(1969)年の二学期に大村はまと出会います。
ちなみに、この昭和44年(1969)7月21日に出版された本はといえば、
梅棹忠夫著「知的生産の技術」(岩波新書)がある。
すこし前の、1965年に
梅棹忠夫は、電通の依頼でセミナーの講師をしております。
その演題が『知的生産の技術』でした。こうあります。

「わたしの演題は、『知的生産の技術』ということであった。
 わたしの著書『知的生産の技術』が刊行されたのは1969年のことであるから
 このときはまだ姿をあらわしていない。しかし、わたしはすでに、

 1965年の4月から岩波書店の雑誌『図書』に
 『知的生産の技術について』という連載記事を
 断続的に発表しはじめていたのである。
 それに電通の担当者が注目したのであろう。・・・」

         ( p177 「梅棹忠夫著作集」第11巻 )


はい。岩波の雑誌『図書』と、『知的生産の技術』というキーワードが
大村はまの国語教室通信を、パラパラとめくっていると出てきました。

昭和46年10月9日の国語教室通信のはじまりに

「岩波の図書10月号に、『本と子どもと図書館と』という題で
 『いぬい・とみこ』さんの文章がのっています。読みましたか。・・」

はい。大村はまさんが、雑誌『図書』を注目していたとわかる箇所です。

同じ年の46年10月23日国語教室通信には、裏面にこんな箇所がありました。

 ♢D組、『知的生産の技術』と『読書論』、返してない人、大至急。
  今度は、A組で使うので、本をもてない人ができてしまいます。
  忘れたら、とりに行ってもらいます。



はい。はじまりへと戻るとすると、

梅棹忠夫著「知的生産の技術」の『まえがき』に
こんな箇所があり。思い浮かびます。

「 ・・ちょっとしたコツみたいなものが、
 かえってほんとうの役にたったのである。
 そういうことは、本にはかいてないものだ。・・」


学校の『書き初め』というのは
私の場合、前提として『書き初め』言葉が決められていて、
それを書くものだとばかり思って今にいたっておりました。

それが大村はまさんの国語教室では、自分で自分の言葉を選び
その選んだ言葉を、大村先生がお手本を書いては見本としてる。

『ちょっとしたコツみたいなもの』ということから、
わたしは、まど・みちおの詩の一行が思い浮かびます。

『 なんでもないことが たいへんなことなのだ 』

ちょっとしたコツという、何でもないことが、大変なことなのだ。
生徒ひとりひとりの言葉を、おてほんとして見本を書いてあげる、
そんな『ちょっとしたコツ』を、実行する大村は何者なんだろう。
はい。知るためには、そこに大村はま全集が待ち構えております。

うん。こうして自分で自分に言い聞かせ、全集を見あげます。



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