和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

夏の思い出

2023-09-12 | 詩歌
今日届いた古本に、
堀口すみれ子著「父の形見草 堀口大學と私」(文化出版局・1991年)
がありました。はい。200円なり。
写真は佐藤裕。白くて四隅が黄ばんだカバーをはがすと、
そこには、まばゆい写真の表紙がありました。
はい。それだけで私は満腹。ページのところどころに
宝物のように、ひそませた写真をめくり。それで満足。

あれ。堀口大學の詩もとろこどころにおさまっています。
一篇の詩を引用しておくことに。

         夏の思い出  堀口大學

   貝がらに、海の響が残るように、
   私の耳の奥に、彼女(ひと)の声が残って、
   アドヴァンテージと叫び、
   ジュース、アゲインと呼ぶ。

   十六ミリに、過ぎた日の仕草が残るように、
   私の目の奥に、その夏の身振りが残って、
   ヨットのように傾いた、白いあなたが見え、
   行き来するボールが見える。

   貝がらの海の響のように、
   十六ミリの過ぎた日の仕草のように、
   私の耳に、その夏の声が残り、
   私の瞳に、その夏の身振りが残る。      ( p99 )

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