和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

幸せだと思おう。そう思う義務がある。

2019-07-24 | 本棚並べ
7月24日産経新聞。はい。今日の新聞です。
そのオピニオン欄「正論」は、古田博司さんの文。
その最後を引用。

「・・・・西洋人の文系の理論には、
『現実妥当性・有用性・先見性』のないものがたくさんある。
それらを絶対的価値として信奉しつづけ、日本はバカだ・
ダメだ・辺境だと言いつづけた人々の落日が迫っている。

国立大学をはじめとする、日本の大学文系の縮小である。
冷戦時代にソ連側について敗け、その後20年間、
マルクスの文系理論を教えて多くの若者に迷惑をかけた。
 ・・・・・・
冷戦の敗戦兵は野盗化するが、
日本の悪口ばかり言うので誰かはすぐ知れる。」


この落日にいちはやく気づいた方はいたのか?

桑原武夫著「文章作法」に、
梅棹忠夫著「文明の生態史観」の出だしを引用した
箇所があるのでした。そのはじまりを引用した後に、
桑原武夫は、こう書いておりました。

「文明批評家としての私からいえば、
この『文明の生態史観』という論文は
日本におけるマルクス主義の凋落の明確なる前兆であった。
 ・・・・・・
この論文がでたとき、私がすぐマルクス主義史学の
没落を覚ったわけではありません。二か月たっても、
三か月たってもマルクス派から一人として、
この挑戦に応答したものがなかったので、
これはダメだなと思ったわけです。」

ちなみに、
1957(昭和32)年に梅棹忠夫は『文明の生態史観序説』を
「中央公論」の2月号に発表しておりました。

はい。それは、ここまでにして、
ある質問に、桑原武夫さんが答えている箇所が
印象に残ります。
そこを引用。

質問者】京都学派の人間らしくてユニークな理由は何ですか。

桑原】 公式主義にとらわれずに、
一種の自由があったということはいえましょう。
フランスのアランの言葉に、
人間は幸福である義務をもつというのがあって、
私はこれにひどく感銘しました。
社会の不正とは戦わなければいけませんが、
文句をいうのはやめよう、
自分のことを愁嘆するのはやめよう、
自分が生きてきたことを幸せだと思おう、
そう思う義務がある、ということです。
私はそう思ってきたのです。

そして私たちのグループ
(貝塚茂樹、今西錦司、西堀栄三郎君など)は、
学問あるいは思想といったことだけでなく、
一緒に山も登り、酒ものみ、本当のことを
自由に話し合ってきた、その親愛感が
作用している点もあるのでしょうね。

(「新・わたしの知的生産の技術」講談社・昭和57年・p24)

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