日本古典物語全集⑧は
神田秀夫著「今昔物語」(岩崎書店・昭和50年)でした。
その解説で神田秀夫氏は、こう指摘されておられます。
「・・それにしても、この『イマハムカシ』ということばは、
おもしろいことばです。・・・・
むかしむかし、むかしはむかしのきょうにして、
さらにむかしよりのむかしにあらず。
という、近松門左衛門の『井筒業平河内通』という浄瑠璃の
文句がありますが、あじわい深いことばだと思います。
わたしたちは、よく『むかしむかし』といいますが、
その『むかし』のときは、それが『きょう』だったので、
けっしてはじめから『むかし』だったのではありません。
どんな遠い『むかし』も、いちどは『いま』だったことがあるはずです。
そう思うと、『むかし』が『むかし』でなくなります。
今昔物語も、『今はむかし』のことになったが、
などといって書きだしながら、いつのまにか筆が熱してきて、
『むかし』が『いま』のことになっているところがあります。
わたくしも、そうでした。
850年もまえに、もう『むかし』だったことを書くのですから、
850年あとの今日は、もちろん、むかしもむかし、大むかしの
こととして、博物館のガラスのなかに陳列するように
ひややかに書けるものだと思って、この仕事をしました。
だが、さて、やってみると、わたくしの筆も熱して来て、
これは『むかし』じゃない、『今』だ、と思うことが、
たびたびありました。このへんが文学のおかしなところです。」
(p265~266)
はい。ここで、私は、神田秀夫氏の古本をネット検索し
てみます。私にとって、氏の著作を読むのは今でしょ。
こうして、読むよりも買う古本がまた本棚に増えます。
これは、古本じゃない、私にとっての新本だと、
出会いを大切して、安物古本を注文することに。
何を言っているのやら、
当ブログで、神田秀夫氏の本が紹介されるときは
それは、わたしが買ったのを、読み始めたなと
どうぞ、ご理解ください。
まったく、何を言っているのやら。後は、
神田秀夫氏の本を読んでからのお楽しみ。
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