映画「落下の解剖学」を映画館で観てきました。
映画「落下の解剖学」はフランス映画、2023年カンヌ映画祭パルムドールを受賞した。今春のゴールデングローブ賞でも脚本賞を受賞した前評判の高いミステリーだ。アカデミー賞作品賞候補にも名を連ねる。フランス人女性監督ジュスティーヌ・トリエとパートナーであるアルチュール・アラリ(「ONODA 一万夜を越えて」)との共同脚本だ。 俳優陣は知らないメンバーがほとんど。ミステリーなので事前情報は最小限で映画館に早々に向かう。
フランス山岳地帯の雪が降り積もる山荘でドイツ人の人気作家サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、作家志望の教師の夫、視覚障がいのある息子ダニエル、ボーダーコリー犬と暮らす。
山荘の中で妻サンドラが学生からインタビューを受けているが、夫が大音響で音楽をかけていてうるさくいったん延期する。ダニエルと犬が散歩に出て戻ってくると、夫が自宅前で血に染まって倒れているのを見つける。山荘には他に人はおらず検死や現場検証を経て、殺人の疑いを持たれたサンドラが拘束される。夫の頭に外傷があったのだ。サンドラは旧知の男性に弁護を依頼した。ダニエルの障がいもあって、殺人犯としては異例だがサンドラは一旦釈放される。
舞台は法廷に移り、検察側は被告人を容赦なく追及する。サンドラと夫にしばしば諍いがあったことや、サンドラがバイセクシャルだったことなど私生活の秘密が法廷で暴露される。それでも、弁護側は追及を交わして夫の自殺を主張する。優位と思われた時に、捜査員から音声の入ったUSBが証拠として出される。
よくできたミステリーである。評価が高いのは理解できる。
観客にインテリと思しき女性陣もいて、むずかしそうな先入観をもったが、扱われているのは万国共通の家庭内の事情である。誰もが実生活で遭遇するような夫婦ケンカの延長と言ってもいい。難解ではない。夫婦共に物書きなのに、妻の方が売れているとか、子どもの目の負傷以降夫婦生活がなくなった後で、妻の不貞が起きるとか同じ題材で日本でつくってもリメイクできそうだ。
フランス映画なのに主人公ザンドラデュラーが英語で話しているなと感じていたら、ドイツ人だという。フランス映画でしかもドイツ人に英語で会話させるのは意図的に監督が指示したらしい。
雪山の人里離れた山荘で妻の他に犯人になる人物がいない。結局、事故死の可能性はあっても、妻サンドラによる殺人か自殺かというどちらかになるのだ。現場検証もやった上でありとあらゆる犯行証拠を見つけようとする。夫婦間の諍いや妻の不貞にも随分と入り込む。依頼したサンドラの既知の弁護士とサンドラとの微妙な男女関係のきわどさもストーリーに味をつける。
法廷物としても観れる映画である。ただ、今回フランスの法廷の特異性を初めて知った。証人が証言する途中で、裁判長の指名がなくても、被告人、弁護人、検察官がフリートークのように割り込んで発言する。他国の法廷物とテンポが違う。検察官役の追及が憎たらしくてうまかった。
ストーリー展開は観ているものを飽きさせない。妻による殺人か自殺かでシーソーゲームのような攻防になり、いったん自殺説が強くなった時に、重要な証拠が飛び出す。USBの入った音声だ。妻は突然形勢不利になる。人格的に否定される証言も目立ってくる。
そして、最終的に本当のキーパーソンの証言となる。どうなるんだろう?どっちになってもおかしくない。妻サンドラもソワソワする。ビリーワイルダーの名作「情婦」でマレーネディートリッヒがまさに「検察側の証言」で出廷した時と同じような胸騒ぎがした。証言する前にある事件が起きて驚かされる。ネタバレはしないが、決着はついたけど本当は違うんじゃないかと妙な余韻を残したのは悪くない。
映画「落下の解剖学」はフランス映画、2023年カンヌ映画祭パルムドールを受賞した。今春のゴールデングローブ賞でも脚本賞を受賞した前評判の高いミステリーだ。アカデミー賞作品賞候補にも名を連ねる。フランス人女性監督ジュスティーヌ・トリエとパートナーであるアルチュール・アラリ(「ONODA 一万夜を越えて」)との共同脚本だ。 俳優陣は知らないメンバーがほとんど。ミステリーなので事前情報は最小限で映画館に早々に向かう。
フランス山岳地帯の雪が降り積もる山荘でドイツ人の人気作家サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、作家志望の教師の夫、視覚障がいのある息子ダニエル、ボーダーコリー犬と暮らす。
山荘の中で妻サンドラが学生からインタビューを受けているが、夫が大音響で音楽をかけていてうるさくいったん延期する。ダニエルと犬が散歩に出て戻ってくると、夫が自宅前で血に染まって倒れているのを見つける。山荘には他に人はおらず検死や現場検証を経て、殺人の疑いを持たれたサンドラが拘束される。夫の頭に外傷があったのだ。サンドラは旧知の男性に弁護を依頼した。ダニエルの障がいもあって、殺人犯としては異例だがサンドラは一旦釈放される。
舞台は法廷に移り、検察側は被告人を容赦なく追及する。サンドラと夫にしばしば諍いがあったことや、サンドラがバイセクシャルだったことなど私生活の秘密が法廷で暴露される。それでも、弁護側は追及を交わして夫の自殺を主張する。優位と思われた時に、捜査員から音声の入ったUSBが証拠として出される。
よくできたミステリーである。評価が高いのは理解できる。
観客にインテリと思しき女性陣もいて、むずかしそうな先入観をもったが、扱われているのは万国共通の家庭内の事情である。誰もが実生活で遭遇するような夫婦ケンカの延長と言ってもいい。難解ではない。夫婦共に物書きなのに、妻の方が売れているとか、子どもの目の負傷以降夫婦生活がなくなった後で、妻の不貞が起きるとか同じ題材で日本でつくってもリメイクできそうだ。
フランス映画なのに主人公ザンドラデュラーが英語で話しているなと感じていたら、ドイツ人だという。フランス映画でしかもドイツ人に英語で会話させるのは意図的に監督が指示したらしい。
雪山の人里離れた山荘で妻の他に犯人になる人物がいない。結局、事故死の可能性はあっても、妻サンドラによる殺人か自殺かというどちらかになるのだ。現場検証もやった上でありとあらゆる犯行証拠を見つけようとする。夫婦間の諍いや妻の不貞にも随分と入り込む。依頼したサンドラの既知の弁護士とサンドラとの微妙な男女関係のきわどさもストーリーに味をつける。
法廷物としても観れる映画である。ただ、今回フランスの法廷の特異性を初めて知った。証人が証言する途中で、裁判長の指名がなくても、被告人、弁護人、検察官がフリートークのように割り込んで発言する。他国の法廷物とテンポが違う。検察官役の追及が憎たらしくてうまかった。
ストーリー展開は観ているものを飽きさせない。妻による殺人か自殺かでシーソーゲームのような攻防になり、いったん自殺説が強くなった時に、重要な証拠が飛び出す。USBの入った音声だ。妻は突然形勢不利になる。人格的に否定される証言も目立ってくる。
そして、最終的に本当のキーパーソンの証言となる。どうなるんだろう?どっちになってもおかしくない。妻サンドラもソワソワする。ビリーワイルダーの名作「情婦」でマレーネディートリッヒがまさに「検察側の証言」で出廷した時と同じような胸騒ぎがした。証言する前にある事件が起きて驚かされる。ネタバレはしないが、決着はついたけど本当は違うんじゃないかと妙な余韻を残したのは悪くない。