映画とライフデザイン

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悪い男  キムギドク

2009-09-10 21:41:09 | 映画(韓国映画)
私にはこれは傑作だ!とはいえない。あまりにエゲツナイのでまいったという感じだ。しかし、画像から目が離せない。次はどうなるのか?と思わせながら、主人公二人を追いかけていた。韓国映画特有の暴力描写がここではきつすぎる。監督はおそらくこういう世界の中で生きてきたのであろう。でも時おり見せる繊細な描写があまりに対照的だ。言葉少なげな主人公はうつせみと同じ。汚いヤクザ言葉の連発とこれも対照的。その対照性がいかにもキム・ギドクなのであろう。

ソウル?の町の中で、恋人を待つ女子学生ソ・ウォンに魅かれたヤクザ男の主人公チョン・ジェヒョンが、待ち合わせの恋人が到着するやいなや、強引に彼女の唇を奪う。恋人が二人を離そうとするが離れない。周りにいた士官たちが強引に割り入って大人数で止めに入る。取り押さえられた男に向かって、周りは謝れというが、男は謝らない。彼女はつばを男に吐いて別れる。その後のあるとき、彼女は書店に入って財布を見つける。そしてその財布を持ってトイレに入って中身を抜きとろうとする。その時、財布の持ち主がトイレへ押しかけ、「スリだ」といいながら女を追う。持ち主だという男は、彼女が見た金額よりも多い金額と小切手が財布に入っていたと言い。強引にその金額を返させるために、金を借りさせる。借金の証文には返せない場合は身体を提供させるよう書いてあった。しかし、これは主人公による罠で、彼女は売春窟の中に入り込むようになる。。。。。

そこから繰り広げられる世界はいかにもエゲツナイ世界だ。日本映画ではここまでドツボに落とす映画はあまりない。日活ポルノでSM世界に知らぬ間にはめられる谷ナオミの世界くらいか?巨匠溝口健二監督が描く戦後の売春婦の姿は、生活のためにやむなく売春の世界に入っていく女たちだ。しかし、ここで描かれるのは罠にはまった女だ。きっとそれに近い実話は日本にもあるかもしれない。でもこんな罠ではないだろう。嫌悪感しか感じなかった男が、徐々にその男がいなければ生きていけないような男になっていく過程を独特の語りでキムは表現する。

日本のソープでは玄関前に女性が立ち並んで呼び込みをする姿はない。昔の遊郭の流れをくむ大阪の飛田、松島は顔見世はあるが、ちょっと違う。独特の色彩感覚で呼び込みの女性と韓国の売春窟を描く。みかじめのヤクザだけでなく、ヤクザまがいの警官も登場させる。ヤクザの前でえばっている警官だ。取り締まり逃れに女を抱かせてもらっている。キムギドクはおそらくはこういう醜い世界も見てきたのであろう。裏社会の話は得意なようだ。

主人公の好演に加えて、ソナが別の意味で良い女になっていくのが不思議な感じがした。女学生姿も悪くないが、売春婦姿で時おり見せる表情はきわめて美しく見えていく。

でもエゲツナイなあ!!

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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確かにえげつないですよね~ (フキン)
2009-09-11 14:21:18
私はギドク監督の作品を最初に見たのがこの「悪い男」だったんですよ。
「春夏秋冬そして春」「うつせみ」なんかは他の作品に比べると軽い印象です。
だからその分、見やすくて美しい印象なんです。
えげつない作品も綺麗めの作品もわたしはすきですね~。
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好きですよキム・ギドク (wangchai)
2009-09-11 20:48:25
コメント早速ありがとうございます。

エゲツナイと思いましたが、最後まで目を離せない映画でした。

日本のヤクザ映画や昔の日活ポルノあたりでも意図せずに悪い男にはまっていく女を描いているのをずいぶんと見ました。しかし、「悪い男」は何よりもきつい表現でした。やはり韓国映画の凄みは、暴力描写が本気!であるということと思います。演技でなくすごいパンチをくらわしていてちょっと怖くなります。

この映画で一つ不思議なのは刺されてほって置かれてよく無事だなあ?ということ。でもそういう不条理な部分の矛盾を抱えながら、表現の凄みにノックアウトされます。

私も好きですよ。
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