9月14日(2日目)
未明の1時に外に出てみると、雨は止んだものの深い霧につつまれて何も見えない。月はどこへ行ったやら。槍ヶ岳に昇って来る冬の大三角形を弓折岳あたりから狙いたかったが、無理なようだ。一旦小屋に戻って寝る。次は3時半起床、空を見上げると時折高く昇ったオリオン座が姿を現す。これならば、うまくすれば薄明の星空が撮れるかもしれない。さっそく準備して暗い中をヘッドライト点灯して歩き始める。弓折岳までは1時間ほどの行程、途中で星が見えたので三脚を出すが、あっという間に雲の中に吸い込まれる。かすかな山陰が見えるだけのほとんど真黒な写真しか撮れなかった。
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一瞬の槍ヶ岳と眼下の鏡平 弓折乗越で迎えた朝の風景。
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雲かかる双六岳と秋の雲 弓折岳山頂から。
弓折乗越まで登ってここで日の出を待つ。相変わらず雲に巻かれた景色だったが、一瞬だけ薄い雲の向うに槍ヶ岳の姿を見ることができた。時間はまだ6時、今日は笠ヶ岳山荘まで移動するだけなので、このままさっさと歩くと午前中に到着してしまう。天候によっては今日のうちに下山することも考えたが、明日の午前中は天気が回復するという予報だ。ならば時間をかけてじっくりと稜線歩きを楽しむことにする。6時半弓折乗越を出発、ダラダラと歩いていると前日鏡平で一緒だった20人くらいの団体客にあっさり抜き去られる。さらにもっと多人数の団体客にも抜かれる。だが、全く気にせず、三脚をあちらこちらで立てながら撮影を楽しみつつ歩く。
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全容を見せた双六岳の大きな山容と双六山荘。大ノマ岳付近から。
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タカネマツムシソウ 低山のマツムシソウに比べ背が低く、花の紫色が濃くて鮮やか。数輪花を残した株を一株だけ発見。
弓折岳、大ノマ岳の2つのピークを越えると、秩父平というカール状の草地(お花畑)に到着。雲がしだいに晴れ出し、白い山容が美しい薬師岳の姿が見えるようになってきた。双六岳の大きな山容も見える。夕方まで姿を見せなかったのは黒部五郎岳。稜線歩きの間はずっと雲に巻かれていた。秩父平から右手の抜戸岩という鋭く切り立った岩を眺めながらひと登りすると、いよいよ抜戸岳の稜線となり、右奥にようやく笠ヶ岳が見えるようになってくる。時間は11時40分、まだお昼前だが、笠ヶ岳まではまだ結構距離がありそうだ。
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抜戸岩と抜戸岳の稜線。左端に笠ヶ岳が見えたと思ったのだが、これは笠ヶ岳ではなかった。本物はさらにその向こう側。
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秩父平と薬師岳。手前が日陰になってしまったため薬師岳の白い山容が飛んでしまったが、白さ際立つ美しい山。
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抜戸岳稜線でようやく見えた笠ヶ岳。小笠という小ピークがあるとは、ここで初めて知った。
ゆっくり目のペースで歩いて行くと、抜戸岳を越えたところで左側の谷のほうから「グエーッツ、グエーッツ」という奇妙な鳴き声が聞えてきた。見ると、岩の上の絶好のポジションに雷鳥がとまっていた。尻をこちらに向けて、やや警戒しているような様子で谷の方を向いている。「おーい、こっち向けー」と叫ぶと、一瞬首をかしげたような雷鳥の姿をを捕えることができた。午後2時、目的地の笠ヶ岳山荘に到着。
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雷鳥現る 撮影には絶好の岩の上に姿を現してくれた。
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見上げる笠ヶ岳 テント場付近から。
小屋の受付に行って泊れるかどうか聞くと、かなり混雑しているという。後で宿泊客に聞いたところ、この日の宿泊率は200%、一つの布団に2人で寝て、それでも入り切らなければ廊下か食堂で寝てもらうことになるという。こんなこともあろうかとツエルトを持ってきてあったので、空いているテント場にツエルトを張って寝ることにした。テント場受付を済ませた後、ザックを小屋の前に置いて三脚とカメラだけ持って山頂に向う。ちょうど30人ほどの団体客が降りてきたところで、混雑していた山頂は若干静かになったところだった。それでも山頂の三角点付近には7~8人の登山客が穂高岳を眺めながら大騒ぎしていた。何かと思ったら、雲が流れてゆくたびにきれいなブロッケン現象が現れていた。記念撮影して早々に下山、テント場まで下りてツエルトを張る。風や雨に会うとひとたまりもないが、この日は夕方から穏やかな天候となり、その心配はなさそうだ。ただ、シュラフカバーを置き忘れ、ウォームアップシーツしかないということだけがちょっと心配だった。
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笠ヶ岳山頂で見たブロッケン現象。
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笠ヶ岳山荘と小笠を見下ろす。小屋の前は人がたくさん。
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雲の切れ間の奥穂高岳
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槍ヶ岳
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穂高に映る影笠ヶ岳
テント場から一段高い位置にある笠ヶ岳山荘に戻り、その横の小笠と呼ばれる小ピークに登って夕暮れを待つ。笠ヶ岳の大きな影が穂高連峰の山裾にかかり始めた頃、北穂高岳の左側から中秋の名月が昇って来た。時間は5時半、まだ日が沈む前の、思ったより早い時間に昇り始めた。午後6時、月が唐沢岳の上に来た頃に日没となる。山頂に若干の雲がかかるものの、山裾に雲海が広がる絶好の風景となってくれた。このような素晴らしい景色を見せてくれた北アルプスの山々に感謝である。6時半まで粘ってすっかり日が落ちたところでテント場に戻る。
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残照の穂高岳と昇る月
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中秋の名月昇る
テント場から見上げる笠ヶ岳は、月光に照らされて神秘的に見える。カメラと三脚を取り出して撮影してみると、山頂まで続く岩岩が月光に照らされてなんと美しい光を放つことか。抜けるような空の濃い青みも良く、思いもよらぬ写真が撮れた。星空撮影に月は邪魔なものと思っていたのだが、月光をうまく利用すればまた新しい表現ができるのかもしれない。
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月光の笠ヶ岳
昨日から食べているのはラーメンばかり。本日の夕食もラーメンと五目御飯を食べて、さっさとツエルトに潜りこんで寝る。明日は月が西に沈む頃の未明3時起床、昇る冬の大三角形を狙う。(3日目に続く)
未明の1時に外に出てみると、雨は止んだものの深い霧につつまれて何も見えない。月はどこへ行ったやら。槍ヶ岳に昇って来る冬の大三角形を弓折岳あたりから狙いたかったが、無理なようだ。一旦小屋に戻って寝る。次は3時半起床、空を見上げると時折高く昇ったオリオン座が姿を現す。これならば、うまくすれば薄明の星空が撮れるかもしれない。さっそく準備して暗い中をヘッドライト点灯して歩き始める。弓折岳までは1時間ほどの行程、途中で星が見えたので三脚を出すが、あっという間に雲の中に吸い込まれる。かすかな山陰が見えるだけのほとんど真黒な写真しか撮れなかった。
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一瞬の槍ヶ岳と眼下の鏡平 弓折乗越で迎えた朝の風景。
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雲かかる双六岳と秋の雲 弓折岳山頂から。
弓折乗越まで登ってここで日の出を待つ。相変わらず雲に巻かれた景色だったが、一瞬だけ薄い雲の向うに槍ヶ岳の姿を見ることができた。時間はまだ6時、今日は笠ヶ岳山荘まで移動するだけなので、このままさっさと歩くと午前中に到着してしまう。天候によっては今日のうちに下山することも考えたが、明日の午前中は天気が回復するという予報だ。ならば時間をかけてじっくりと稜線歩きを楽しむことにする。6時半弓折乗越を出発、ダラダラと歩いていると前日鏡平で一緒だった20人くらいの団体客にあっさり抜き去られる。さらにもっと多人数の団体客にも抜かれる。だが、全く気にせず、三脚をあちらこちらで立てながら撮影を楽しみつつ歩く。
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全容を見せた双六岳の大きな山容と双六山荘。大ノマ岳付近から。
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タカネマツムシソウ 低山のマツムシソウに比べ背が低く、花の紫色が濃くて鮮やか。数輪花を残した株を一株だけ発見。
弓折岳、大ノマ岳の2つのピークを越えると、秩父平というカール状の草地(お花畑)に到着。雲がしだいに晴れ出し、白い山容が美しい薬師岳の姿が見えるようになってきた。双六岳の大きな山容も見える。夕方まで姿を見せなかったのは黒部五郎岳。稜線歩きの間はずっと雲に巻かれていた。秩父平から右手の抜戸岩という鋭く切り立った岩を眺めながらひと登りすると、いよいよ抜戸岳の稜線となり、右奥にようやく笠ヶ岳が見えるようになってくる。時間は11時40分、まだお昼前だが、笠ヶ岳まではまだ結構距離がありそうだ。
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抜戸岩と抜戸岳の稜線。左端に笠ヶ岳が見えたと思ったのだが、これは笠ヶ岳ではなかった。本物はさらにその向こう側。
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秩父平と薬師岳。手前が日陰になってしまったため薬師岳の白い山容が飛んでしまったが、白さ際立つ美しい山。
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抜戸岳稜線でようやく見えた笠ヶ岳。小笠という小ピークがあるとは、ここで初めて知った。
ゆっくり目のペースで歩いて行くと、抜戸岳を越えたところで左側の谷のほうから「グエーッツ、グエーッツ」という奇妙な鳴き声が聞えてきた。見ると、岩の上の絶好のポジションに雷鳥がとまっていた。尻をこちらに向けて、やや警戒しているような様子で谷の方を向いている。「おーい、こっち向けー」と叫ぶと、一瞬首をかしげたような雷鳥の姿をを捕えることができた。午後2時、目的地の笠ヶ岳山荘に到着。
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雷鳥現る 撮影には絶好の岩の上に姿を現してくれた。
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見上げる笠ヶ岳 テント場付近から。
小屋の受付に行って泊れるかどうか聞くと、かなり混雑しているという。後で宿泊客に聞いたところ、この日の宿泊率は200%、一つの布団に2人で寝て、それでも入り切らなければ廊下か食堂で寝てもらうことになるという。こんなこともあろうかとツエルトを持ってきてあったので、空いているテント場にツエルトを張って寝ることにした。テント場受付を済ませた後、ザックを小屋の前に置いて三脚とカメラだけ持って山頂に向う。ちょうど30人ほどの団体客が降りてきたところで、混雑していた山頂は若干静かになったところだった。それでも山頂の三角点付近には7~8人の登山客が穂高岳を眺めながら大騒ぎしていた。何かと思ったら、雲が流れてゆくたびにきれいなブロッケン現象が現れていた。記念撮影して早々に下山、テント場まで下りてツエルトを張る。風や雨に会うとひとたまりもないが、この日は夕方から穏やかな天候となり、その心配はなさそうだ。ただ、シュラフカバーを置き忘れ、ウォームアップシーツしかないということだけがちょっと心配だった。
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笠ヶ岳山頂で見たブロッケン現象。
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笠ヶ岳山荘と小笠を見下ろす。小屋の前は人がたくさん。
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雲の切れ間の奥穂高岳
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槍ヶ岳
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穂高に映る影笠ヶ岳
テント場から一段高い位置にある笠ヶ岳山荘に戻り、その横の小笠と呼ばれる小ピークに登って夕暮れを待つ。笠ヶ岳の大きな影が穂高連峰の山裾にかかり始めた頃、北穂高岳の左側から中秋の名月が昇って来た。時間は5時半、まだ日が沈む前の、思ったより早い時間に昇り始めた。午後6時、月が唐沢岳の上に来た頃に日没となる。山頂に若干の雲がかかるものの、山裾に雲海が広がる絶好の風景となってくれた。このような素晴らしい景色を見せてくれた北アルプスの山々に感謝である。6時半まで粘ってすっかり日が落ちたところでテント場に戻る。
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残照の穂高岳と昇る月
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中秋の名月昇る
テント場から見上げる笠ヶ岳は、月光に照らされて神秘的に見える。カメラと三脚を取り出して撮影してみると、山頂まで続く岩岩が月光に照らされてなんと美しい光を放つことか。抜けるような空の濃い青みも良く、思いもよらぬ写真が撮れた。星空撮影に月は邪魔なものと思っていたのだが、月光をうまく利用すればまた新しい表現ができるのかもしれない。
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月光の笠ヶ岳
昨日から食べているのはラーメンばかり。本日の夕食もラーメンと五目御飯を食べて、さっさとツエルトに潜りこんで寝る。明日は月が西に沈む頃の未明3時起床、昇る冬の大三角形を狙う。(3日目に続く)