山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

雲間に昇る南極老人星カノープス、北穂高岳  平成20年10月12-13日

2008年10月18日 | 番外編
 平成20年10月12-13日 天候晴れ

 月光と紅葉の涸沢を満喫した後、テントを撤収し、北穂高岳に向う。日本百名山を目指すならば奥穂高岳なのだろうが、どうしても見ておきたい景色があった。それが奥穂高岳と前穂高岳の間に昇って来ると予想される南極老人星カノープス。この星は、中国では一目見るだけで長生きができると言われており、南極に近い位置に輝くことから「南極老人星」と呼ばれている。唐松岳でも見えていたのだが、それは写真をプリントして初めて気付いたもので、実際に自分の目で確認して見ていたわけではない。なんとか自分の目で見てみたいのだが、南の低空に水平線からわずか2度くらいしか昇ってこないので雲や霞が出れば見ることはできない。天気予報は晴れだか、果たしていかに。

    ナナカマドの紅葉と奥穂高岳


    北穂高岳中腹から見る涸沢ヒュッテとテント場

 涸沢のトイレが大混雑で30分ほど時間を費やし、8時半に涸沢小屋の前あたりを通過した。コースタイムでは3時間だが、昨日の筋性疲労が残っていて、大腿部の前面が足を上げる時に若干の筋肉痛がする。夕方までに到着すれば良いわけだから急ぐ旅でもなし、紅葉の写真を存分に撮りながら、超スローペースで明日に疲れを残さないように登る。後ろから来た人にはことごとく先に行ってもらい、常に集団のいちばん後について登るが、それでも中腹の鎖場周辺は渋滞していて、しばらく待ってから登ることになる。テント場に到着したのは午後1時過ぎ、4時間半もかかって到着した。おかげでほとんど疲れはないが、このテント場から北穂高岳山荘までは結構な距離があり、20~30分ほどはかかりそうだ。テントを先に張り、テント場の受付と水をもらいに小屋まで行くと、もう時間は3時になってしまった。

    大キレットと槍ヶ岳  北穂高岳山頂から。

 小屋の前のテラスは観覧している人たちがたくさんおり、その中に混じって一休み。売店で缶ジュースとパンとチョコレートを買って食べる。本日の宿泊率はふとん4枚に7人ほどとの事で、連休にしては空いているほうなのだろう。小屋のすぐ上にある北穂高岳山頂(北峰)に行くと、10人ほどの人たちが景色を眺めたり記念写真を撮ったりしていた。槍ヶ岳側の谷を覗くと、そこは大キレットの左右が削げ落ちた痩せ尾根が南岳に向って延びている。尾根を歩いている数名の人の姿も見える。かなり恐そうな道、私は見ただけでパスだ。歩くならもう少し技術を上げ、テントなしの軽量で歩きたい。

    残照の前穂高岳


    北穂高岳南峰と秋の空

テント場に戻った頃、ちょうど西の空に陽が傾き、前穂高の竜の背の尾根を照らしていた。雲が増え始めたが富士山がまだ見えていた。西の方角には北穂高岳南峰が聳え、その上には空いっぱいに広がったうろこ雲。秋らしい空が広がる。日没後の焼ける空も見たかったのだが、その前に夕食。急いだつもりだったのだが、食べ終わった頃にはもうすっかり日が暮れ、空一面に灰色の雲が広がってしまっていた。さて、明日の朝は星が出てくれるのだろうか。やや心配しながら、夕方6時には早々に眠りにつく。

    月光の前穂高岳とおおいぬ座シリウス  遠く富士山が浮かぶ。

 目が覚めたのは未明1時半。空には一部薄雲が広がってはいるが、星はたくさん見えている。西に沈みかけた月が雲間から出たり隠れたりしている。月光を浴びた前穂高の尾根が怪しく光り、撮影してみるとその向うには富士山の姿も映っている。水平線近くに黒い雲が広がり、狙いの星が出てくれるかどうかかなり心配だ。もう一つ心配事があり、またしても1本目の電池が無くなり、2本目を入れると、今度は確実に充電してきたのに既に残量わずかの表示が出る。もう1本も使い始めてすぐに点滅状態になってしまう。唐松岳の時と同様、電池が足りなくなりそうだ。これは充電し忘れではなくてバッテリー自体の問題であったことが判明。撮れるところまで撮ることにして、不良バッテリー2個を持って北穂高岳山頂に向う。

    シリウスと雲間に昇る南極老人星カノープス


    奥穂高岳の上に昇るオリオン座  奥穂高岳の左側にカノープスが輝く。

 未明3時半、山頂にはまだ誰も人がいない。三脚を立てて沈む月や奥穂、前穂を撮影してみる。カノープスはまだ映っておらず、低空の黒い雲がかなり邪魔だ。4時15分ごろ、その黒い雲の隙間にうっすらとオレンジ色の輝きが見え始めた。もしや!撮影してみるとまさにそれが狙っていたカノープスだった。雲の間に見え隠れし、なかなかすっきりとは写ってくれないが、数枚写真に収めることができた。ただ、電池残量不足でライブビュー機能が十分に使えず、若干ピントが甘かったのが心残りだ。4時半を過ぎた頃からちらほらと人が現れはじめ、日の出前の5時半には三脚やカメラを持った人たちが続々と登場。その頃には私は三脚をたたんでテント場に戻り始めたので、他の人たちはこの人は何を撮りに来たのかとちょっと不思議そうに見ていた。

    薄明の雲間に輝くカノープス


    朝の涸沢カールと奥穂高岳・前穂高岳


    朝日を浴びる奥穂高岳

 見たかったのは上から見る涸沢カールの朝焼けだったのだが、この日の朝日は薄雲を被り、前日涸沢から見たほどには焼けてくれなかった。さて、バスの混雑が予想されるので、早々にテント撤収して下山だ。疲れはあまりなかったのだが、前々日上高地の林道を歩いている時に少し捻挫した右足首が北穂高の中腹あたりで痛み出してきた。歩けないほどではないのだが、石を踏みつけるとズキンと痛む。とにかくあとは下るだけなので、横尾まで下りたところで靴紐を緩めてひたすら上高地バスターミナルを目指して歩く。2時15分、無事にバスターミナルに到着した。それにしても人が多いこと。カッパ橋はもう人が乗れないのではと思うほどたくさんの人が行き来しており、バスターミナルも長蛇の列。それでも30分少々の待ち時間でバスに乗ることができ、3時半、沢渡の駐車場に到着。

    さらば、涸沢。すばらしい風景をありがとう。

初めての涸沢、話によると今年の紅葉は色付きがいまひとつだったらしいが、それでも素晴らしい景色に出会えた。狙っていたカノープスを見ることができたのも良かった。充実した3日間を過ごせた。
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月光が奏でる涸沢  平成20年10月11-12日

2008年10月18日 | 番外編
 平成20年10月11-12日  天候雨のち晴れ

 予定では鳳凰山だったのだが・・・。うたた寝して目が覚めたのは深夜1時半。天気予報を見ると山梨県は雨の心配は少ないが、長野県は降水確率50%。しかし、どちらも夕方からは晴れそうだ。その後の連休2日間はいずれも好天の予報だ。横になって寝なおそうと思ったのだが、寝付けそうも無く、それならばということで行き先を変更、涸沢の紅葉を見に行くことにした。大混雑が予想されるのでテント泊りで出発。
 まだ薄暗い5時に沢渡に到着したが、既にバスが動き始めているらしく、バス停で並んでいるお客さんが目に入る。駐車場に車を停めた頃に、ちょうど雨足が強くなり、バスに乗る前からカッパを着てバス停で待つ。5時半のバスに乗ることができ、上高地は6時を少し過ぎた頃から歩き始めた。最初は長い林道歩き、しかも雨。予想はしていたのだが、思ったよりも降り方が強い。夕方から晴れるという天気予報を信じて、ひたすら歩く。

    横尾大橋。朝9時、たくさんの人でごったがえす。

 3時間ほど歩いて横尾に到着したのは、朝の9時。既にたくさんの人でごったがえしていた。槍ヶ岳方面に行く人は少なく、ほとんどの人が涸沢を目指して進んで行く。その頃からようやく雨が止み、時折すがすがしい青空と太陽が雲間から覗くようになる。横尾大橋を渡り、横尾谷に入ると正面に屏風岩が見えるようになる。こんなところを登る人がいるのかと思うような垂直壁だ。屏風岩に向かうヘルメットを装着した3人連れの姿が見える。岩の下部は紅葉の真っ盛り、岩の間から生えているナナカマドやダケカンバも鮮やかに紅葉している。これから行く涸沢の紅葉が楽しみだ。

    横尾谷から見上げる屏風岩

 沢を渡る吊り橋を過ぎたあたりから傾斜が急になりはじめる。相変わらずの人の行列で、自分のペースでゆっくりと歩きたいにも、長蛇の列になっていてそれに付いてゆくしかない。20kgを越える荷物を背負う私には結構な早いペースだったので、この登りですっかり足がつかれてしまう。目指す涸沢まであと1時間あたりのところから道がやや広くなり、軽食をとってゆっくり休み、スローペースで歩く。1時半、涸沢到着。

    光射す屏風の頭  涸沢まであと少し。

 テント場はまだ半分強埋まった程度で、テントを張る場所は十分にあった。途中で会った人から聞いた話だと、山小屋宿泊率は昨日が200%、本日はなんと400%、畳1畳に4人寝ることになるそうだ。横になっても寝返りさえ打てない状態だろう。テント泊で正解だった。先にテント設営し、テント場受付に行くと、既に30人以上の長い列ができていた。受付を済ませて涸沢ヒュッテ周辺をブラブラ散策し、テントに戻る。紅葉の写真撮影も良いのだが、まだ空に雲がかかり、紅葉は真っ盛りなものの鮮やかさはいまひとつ。明日の朝に期待し、食事をとってさっさと寝ることにする。本日は日が暮れて天候が回復してから、月光の涸沢に期待だ。

    月光のテント場と北穂高岳


    プレアデス昇る

 目が覚めたのは日が暮れた7時半。月が昇り、テントの中でも物が見えるほどに明るい。外に出ると、空いていたテント場ももう満杯状態、月光に映えて色とりどりのテントが怪しく光る。三脚とカメラを担いで涸沢ヒュッテの展望台に移動する。同じように月光の涸沢の写真撮影をしている人が数名いた。山影がくっきりと見える程度の月明かりだとIso感度800に上げてもノイズはさほど出ないことは数回の月光撮影でわかっているので、絞り開放2.8、Iso 800、30秒で撮影すると、モニター上はかなりきれいに写っている。出来上がりが楽しみだ。2時間ほど撮影を楽しみ、再びテントに戻って寝る。

    月光奏でる涸沢の夜


    涸沢岳の上に羽ばたく白鳥座

 次に目が覚めたのは午前4時。明るい月が、奥穂高岳の上に沈みかけていた。南側の前穂高の尾根上にはオリオン座と冬の大三角形が登っている。再び展望台に行き、カメラをセット、ちょうど北穂高の上にカシオペア座が沈んでゆくところだった。

    北穂高岳の上に輝くカシオペア座


    前穂高岳の尾根に昇る冬の大三角形とオリオン座


    夜明け前の涸沢

 しだいに赤らみ始めた空、そして動き出した人々。夜明けとともにあたりがざわめき始める。もう奥穂高岳や北穂高岳にヘッドライトを点けて登って行く人たちの姿も見える。そして夜明け。奥穂高岳から涸沢岳、奥穂高の稜線、そして涸沢のカールが見事に赤く染まってゆく。そう簡単に見られる風景ではないのだろうが、初めて訪れた涸沢でこの景色が見られたのはラッキーだ。

    朝焼けの稜線


    焼ける涸沢岳とカール

 朝焼けのひとときが過ぎた後、周囲をひとまわりしてテントに戻る。大きなカメラを持った人たちは展望台ではなくて、登山指導所の裏側あたりに集結していた。どうやらそのあたりが撮影に適しているらしい。次回はこのあたりでカメラを構えることにしよう。さて、朝食をパンで軽く済ませ、本日は北穂高岳にテントを担ぎ上げる。(北穂高岳に続く)
コメント (6)
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