ラン科植物の多くはラン菌と呼ばれる地中にいる菌との共生によって発芽・成長し花を咲かせることが知られている。ラン科植物の種子は他の植物と違って種子の周辺に発芽するための栄養分を持っておらず、地上に落下した時にラン菌と出会わなければ発芽出来ないため、その確率は極めて低い。アツモリソウにおいては、プロトコームと呼ばれる根の状態で地中で数年ラン菌と共生して成長し、地上に葉を出してから花を咲かせるまでにさらに3年以上かかり、合わせて10年もの歳月をかけて花を咲かせる。ラン菌と出会う確率が低いうえに花を咲かせるにも大変な苦労をしている花なのである。
アツモリソウ
花が大きくて鮮やかなアツモリソウは徹底的な盗掘に遭い、さらには鹿の大増殖による食害に遭って今では保護地以外ではほとんど観察することが困難になってしまっている。さらに拍車をかけたのが直接の鹿の食害では無く植生の大きな変化である。鹿に植物を食べ尽くされた草原や森は笹やテンニンソウ、ススキ、バイケイソウなど鹿が食べない植物ばかりがはびこる荒れた場所に変ってしまう。このような環境になってしまうと、アツモリソウの増殖や成長、さらに花を咲かせるために必須であるラン菌の活性が大きく低下してしまう事態を引き起こし、花は咲かなくなってしまうのである。現在は保護柵で囲んで食害から逃れる方法がとられてはいるが、いずれの場所も予算不足、人手不足のために対処が遅れて既に手遅れという感が無きにしも非ずである。
カモメランもアツモリソウと同じような生活史を歩んでいると考えられる。アツモリソウよりも小型で種子が移動し易いカモメランは、ラン菌の活性が強く快適な場所に移動して株を増やすと考えられ、花を咲かせるにはやはり10年ほどの歳月を要する。今年たくさん花を咲かせた場所は10年以上前に種子が定着して花を咲かせるに至った場所なのかも知れない。ラン菌の活性には土壌内にある程度の空気の層があることが必須である。たとえ株を踏まないで人が歩いたとしても、多くの人が訪れることによって土壌が圧縮されることによって空気の層が減ってしまうと、結果的にラン菌の活性に悪影響を及ぼすこととなり花の数が減ってしまうという事態を引き起こしてしまう可能性がある。せっかく咲いた花なのだから多くの人に見て欲しいという気持ちもあるのだが、それによって悪影響を及ぼしてしまうことがあるわけで、そのような配慮をしつつ決して花の群落に踏み込むこと無く愛情をこめてそっと歩いていただきたいと思う。(としか言いようが無い。)
カモメラン
三つ峠はこのような鹿の食害や、さらに人の盗掘や踏み荒らしから山を保護するために早くから山に柵を廻らせ、植生の保護と維持に取り組んで成果を上げてきた全国でも数少ない場所である。今回は山梨県山岳連盟主催で行われた三つ峠植物観察会・勉強会および清掃登山に植物指導という立場で参加させていただいた。昨年は20人ほどの人数だったが、最近は植物に関心を持たれている方が増えてきたようで、40数名という大人数が参加された。先日富士北麓の森を一緒に歩いたメンバーはほとんどがこの日も参加しており、一般参加で花見隊メンバーも参加した。
三つ峠御坂側登山口に集合した参加者たち。
??イチゴ。植物指導を仰せつかったのにほとんど花の名前わからず、全く頼りにならず。もっと勉強します。
あいにくの雨となった三つ峠。植生保護には環境が大切であることを説明される三つ峠山荘ご主人中村さん。
このあたりは昨年草刈りをしたはずなのだが、1年にしてテンニンソウだらけ。
テンニンソウや笹の除去を行って植生の維持を行っていることを説明していただいた。
植生の保護と維持には保護柵で囲むだけでは不十分で、増殖力が強いテンニンソウや笹の除去を行わなければいずれはそれらの植物がはびこる山に変ってしまう。それによってラン菌の生息する環境が大きく変化し、アツモリソウやカモメランをはじめとする多くのラン科植物は花を咲かせるだけの栄養分を得られなくなり、開花できなくなってしまう。そのような状況が続くとやがて花は年老いて絶えてしまうことになる。実際に昨年はラン科植物が咲いていたはずの山を何か所か調査させていただき、葉はあるものの全く花を付けそうもない株を多く見て来た。いずれの山も鹿の食害著しく、山が乾燥化してしまってラン菌が生息する環境が損なわれてしまった場所であった。あれらの花たちをこれから守りつつ、さらに開花に至らせることが出来るのかどうか、今後の大きな課題であり、おそらくは保護柵だけでなく何らかの人の手を加えなければ再生させることは困難なのではないかと考えている。
テンニンソウや笹を除去して山を保護することでこのような瑞々しい元気な葉が茂る環境が維持できる。
そのような環境があってこそ、この草も元気に花を咲かせることができる。
富士箱根伊豆国立公園の敷地内にあって草刈りをする作業などやって良いのかという議論が多くあったと聞くが、中村さんを中心とした人たちの尽力によって現在の三つ峠の環境が保持されている。さらに三つ峠ネットワークの方々、日本高山植物保護協会、山梨県山岳連盟をはじめとする多くのボランティアの方たちもこの活動に協力・参加されており、私自身、これからもこのような活動に多く参加して行ければと思っている。
アツモリソウ
花が大きくて鮮やかなアツモリソウは徹底的な盗掘に遭い、さらには鹿の大増殖による食害に遭って今では保護地以外ではほとんど観察することが困難になってしまっている。さらに拍車をかけたのが直接の鹿の食害では無く植生の大きな変化である。鹿に植物を食べ尽くされた草原や森は笹やテンニンソウ、ススキ、バイケイソウなど鹿が食べない植物ばかりがはびこる荒れた場所に変ってしまう。このような環境になってしまうと、アツモリソウの増殖や成長、さらに花を咲かせるために必須であるラン菌の活性が大きく低下してしまう事態を引き起こし、花は咲かなくなってしまうのである。現在は保護柵で囲んで食害から逃れる方法がとられてはいるが、いずれの場所も予算不足、人手不足のために対処が遅れて既に手遅れという感が無きにしも非ずである。
カモメランもアツモリソウと同じような生活史を歩んでいると考えられる。アツモリソウよりも小型で種子が移動し易いカモメランは、ラン菌の活性が強く快適な場所に移動して株を増やすと考えられ、花を咲かせるにはやはり10年ほどの歳月を要する。今年たくさん花を咲かせた場所は10年以上前に種子が定着して花を咲かせるに至った場所なのかも知れない。ラン菌の活性には土壌内にある程度の空気の層があることが必須である。たとえ株を踏まないで人が歩いたとしても、多くの人が訪れることによって土壌が圧縮されることによって空気の層が減ってしまうと、結果的にラン菌の活性に悪影響を及ぼすこととなり花の数が減ってしまうという事態を引き起こしてしまう可能性がある。せっかく咲いた花なのだから多くの人に見て欲しいという気持ちもあるのだが、それによって悪影響を及ぼしてしまうことがあるわけで、そのような配慮をしつつ決して花の群落に踏み込むこと無く愛情をこめてそっと歩いていただきたいと思う。(としか言いようが無い。)
カモメラン
三つ峠はこのような鹿の食害や、さらに人の盗掘や踏み荒らしから山を保護するために早くから山に柵を廻らせ、植生の保護と維持に取り組んで成果を上げてきた全国でも数少ない場所である。今回は山梨県山岳連盟主催で行われた三つ峠植物観察会・勉強会および清掃登山に植物指導という立場で参加させていただいた。昨年は20人ほどの人数だったが、最近は植物に関心を持たれている方が増えてきたようで、40数名という大人数が参加された。先日富士北麓の森を一緒に歩いたメンバーはほとんどがこの日も参加しており、一般参加で花見隊メンバーも参加した。
三つ峠御坂側登山口に集合した参加者たち。
??イチゴ。植物指導を仰せつかったのにほとんど花の名前わからず、全く頼りにならず。もっと勉強します。
あいにくの雨となった三つ峠。植生保護には環境が大切であることを説明される三つ峠山荘ご主人中村さん。
このあたりは昨年草刈りをしたはずなのだが、1年にしてテンニンソウだらけ。
テンニンソウや笹の除去を行って植生の維持を行っていることを説明していただいた。
植生の保護と維持には保護柵で囲むだけでは不十分で、増殖力が強いテンニンソウや笹の除去を行わなければいずれはそれらの植物がはびこる山に変ってしまう。それによってラン菌の生息する環境が大きく変化し、アツモリソウやカモメランをはじめとする多くのラン科植物は花を咲かせるだけの栄養分を得られなくなり、開花できなくなってしまう。そのような状況が続くとやがて花は年老いて絶えてしまうことになる。実際に昨年はラン科植物が咲いていたはずの山を何か所か調査させていただき、葉はあるものの全く花を付けそうもない株を多く見て来た。いずれの山も鹿の食害著しく、山が乾燥化してしまってラン菌が生息する環境が損なわれてしまった場所であった。あれらの花たちをこれから守りつつ、さらに開花に至らせることが出来るのかどうか、今後の大きな課題であり、おそらくは保護柵だけでなく何らかの人の手を加えなければ再生させることは困難なのではないかと考えている。
テンニンソウや笹を除去して山を保護することでこのような瑞々しい元気な葉が茂る環境が維持できる。
そのような環境があってこそ、この草も元気に花を咲かせることができる。
富士箱根伊豆国立公園の敷地内にあって草刈りをする作業などやって良いのかという議論が多くあったと聞くが、中村さんを中心とした人たちの尽力によって現在の三つ峠の環境が保持されている。さらに三つ峠ネットワークの方々、日本高山植物保護協会、山梨県山岳連盟をはじめとする多くのボランティアの方たちもこの活動に協力・参加されており、私自身、これからもこのような活動に多く参加して行ければと思っている。