山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

急斜面の岩場に咲く可憐な薄紫の花  平成27年7月13日

2015年07月14日 | 番外編
 かつてはあちらこちらにたくさんあった花らしいが、高値で取引されたために徹底的に採取され、今では全国的にほとんど見られなくなってしまったこの花。急斜面の崖でこの花を採取しようとして滑落し、命を落とした人もいると聞く。

 ネット上の記録を見ると、渓谷の岩壁の上などに咲いているという記事を散見するが、昨年この花を発見した環境は渓谷では無くてむしろ尾根に近い場所のやや日当たりの良い岩場である。ザイルで下降して危険な岩場から採取したなどという話を聞く限りでは、おそらくは多くの場合そのような岩場に咲いていたのではないだろうか。おおよその環境がわかったので、今回は似たような環境にある別の岩場を探してみることにした。急峻な崖が予想されるので10mザイルを携帯して行く。それ以上に下降しなければならないとすれば、その時点であきらめるしかない。

 登山道から外れて岩壁の脇を覗き込んでみると、紫色の花が目に付いた。近付けるところまで近付いてみると・・・あった。探していた薄紫色の可憐な花、ウ・チョウ・蘭だ。


    急峻な斜面に薄紫色の花が見える。


    今回の目的の花、ウ・チョウ・蘭(ラン科 ハクサンチドリ属)。 


 この場所は切り立った崖になっていてこれ以上近付けない。木の根につかまりながらトラバース気味にさらに上の岩に登ってみると、さらに数株発見できた。


    さらにその上でも発見。


    接写。この日は風が強く、花が揺れてなかなか撮らせてくれない。もちろん、三脚を立てられるような場所では無い。

 持って行った双眼鏡でさらに遠くの岩壁を見てみると、数株花を咲かせているのが確認できた。

 さらに次の岩場はハズレ、次も無し、さらにその先の岩場はやや傾斜が緩く、足場も比較的しっかりしていた。ここにも数株咲いている。さらに別の場所はかなり急峻、上から見下ろすとちらほらと咲いているのが見える。ザイルを出すことも考えたが近場のものだけと決めてザイル無しで下降する。観察を終えて登り返す時、右手でつかまっていた岩が30㎝大の大きさで脆く崩れ落ちて行った。全加重をかけていたら滑落間違い無し、危ないところだった。


    やや大きめの株が花を付けている。


    別角度から


    草むらの中にひっそりと咲いていた。


    別株


    別の場所。ここは足場がきわめて悪い。


    風に揺れてなかなか撮らせてくれない。

 おそらくかつては登山道脇の岩場にもたくさん咲いていたのだろうが、今ではほとんど人が近付かない(近付けない)ような急峻な岩場にしか残っていないのだろう。鹿が立ち寄るような場所でも無いので、盗掘さえ無ければこれからも咲いてくれることと思う。できるだけそっとしておいてあげたいと思う。


コメント (8)
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植生の再生著しい櫛形山 山梨県山岳連盟植物観察会  平成27年7月12日

2015年07月14日 | 南アルプス
 富士北麓の森、三つ峠に続いて今季3度目となる山梨県山岳連盟植物保護グループ主催の観察会に急遽参加させていただいた。

 今回歩くのは何本もある櫛形山登山ルートの中でかなり長いルートとなる丸山登山道コースだ。2週間ほど風邪症状が続いて体調がいまいちだったので、付いていて行けるかどうか、それよりも登れるかどうかにかなりの不安があった。案の定ピッチの遅い私が足を引っ張ることになってしまったが、なんとか目的地まで登ることができた。今回も三つ峠に続いて講師を仰せつかったが、全く役に立たず、登り始めからいきなりわからない花ばかりだ。


    登山口の脇に咲いていた白い花、これは何じゃ?? たぶんシロバナイナモリソウ(アカネ科イナモリソウ属)。


    カラマツ樹林帯の中にシャクジョウソウが一本。(イチヤクソウ科シャクジョウソウ属)


    未だに正体がわからない花。葉の分岐あたりから花が咲いている。


    別株を見るとツルのように地面を這っており、ツル性の植物ではないかと思うのだが、正体不明。


    サワギク(キク科 キオン属)


    丸山山頂。あまり訪れる人が居ない静かな山頂。


    こちら側のルートも他のルートと同様に徹底的に鹿の食害に遭ったようだ。バイケイソウばかりが残る荒れた森と化している。


    唐松岳山頂。

 3時間半ほどかかってようやくアヤメ平に到着した。すっかり汗だくであるが、アヤメ平まで登って来るとさほど暑いといった感じでは無く快適な温度だった。昼食をとってアヤメ平の中を散策する。保護柵が設置されて今年で5年目になるだろうか、昨年にも増して植生の再生は著しく、驚くほどのキンポウゲのお花畑や、テガタチドリ、キソチドリなどのラン科植物が再生しており、さらに昨年はお目にかかれなかった絶滅危惧種の植物にも何種類かお目にかかることができた。


    黄色い絨毯と化した櫛形山アヤメ平のキンポウゲお花畑。


    元気の良いテガタチドリがたくさん咲く。


    アオスズラン(エゾスズラン)は確実に数を増やしているが、柵の外で昨年見つけた株は今年は見つけられなかった。(ラン科カキラン属)


    一方、保護柵設置前から囲われていた場所はハンゴンソウだらけの荒れた草地に変わってしまっている。やはり手入れしないで囲っておくだけでは植生の維持ができないことを思わせる。

 アヤメ平1周し、裸山に向かう。こちらは新たに裸山全体を覆う柵が設置されていた。昨年訪れた時は一面がピンク色に染まるほどのテガタチドリ大群落だったが、今年はそれに加えてアヤメがだいぶ復活してきた。ちょうど南アルプス市の植物調査隊が見回りしていたので、種を蒔いて増やしたのかどうか尋ねてみたところ、そうではなくて自然に出て来たものだそうだ。鹿の食害で激減してしまったアヤメだが、根は残っていたようで予想していたよりも早く復活しそうな様相を呈している。


    裸山のお花畑。テガタチドリに加えてアヤメがかなり数を増やしている。


    テガタチドリとアヤメの群落


    こちらはアヤメが主体の群落


    うーさんの手にとまって逃げようとしないコヒョウモンモドキ。クガイソウを食草とするこの蝶はかなり数を増やしており、植生復活の証拠でもある。


 昨年よりもさらに復活した櫛形山を存分に堪能した植物観察会であった。毎年姿を変えて行く櫛形山のお花畑、これからが楽しみである。

 下山は車をデポしてあった平成峡に下りた。午後4時、下山。
コメント (14)
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富士山麓の着生植物 植物観察会  平成27年7月11日

2015年07月14日 | 番外編
 着生植物(ちゃくせいしょくぶつ)とは、土壌に根を下ろさず、他の木の上、あるいは岩盤などに根を張って生活する植物のことである。木の幹に付着しているのを良く見かけるノキシノブなどもその中のひとつであるが、中にはめったにお目にかかれない植物もある。今年のうちにどうしても見ておきたかった花の中にフガ・ク・鈴虫・草があるが、これも着生植物のひとつで、富士山樹海の中にあるということだけは知っているが場所だけでなく咲いている環境や着生する木の種類、高さなどがわからないとやみくもに探し歩いてもただ樹海の中を踏み荒らすだけになってしまう。今回は富士山自然学校の主催する植物観察会があり参加させていただいた。参加者は10数名、知っている顔が数人と有名なブロガーの方が数組、私のブログファンという方もおられた。

 車に分乗して樹海の中に入る。初めて知ったのだが、富士山2合目から下のツガの樹林帯は大部分が植林されたものなのだそうだ。杉や檜は積雪の多い富士山裾野には不向きでツガが植林されたそうで、どうりで整列したように綺麗に並んでいるわけだ。フガ・ク・鈴虫・草は広葉樹林に好んで着生し、ツガの森で見かけることはまず無い。着生植物は木の上に着生するわけだが、水分を補給するために雨や霧の多い森を好む。朝霧高原とは良く言ったもので、富士山は南から流れ込んだ海風が朝霧高原と山中湖周辺で渦を巻き、その界隈には霧が発生し易く空気湿度が高く保たれている。この環境こそが着生植物が生息するに絶好の環境を生み出しているのである。


    思っていた以上に高い場所に着生していたフガ・ク・鈴虫・草。


    ほら、あの上に赤っぽいのが・・・と言われても近眼の私には全く見つけられない。


    これは比較的低い位置に着生していた株。


    かなり高い位置に群生していた株。200㎜+エクステンダー×2倍=400㎜で撮影。三脚で固定してもブレまくる。


    白っぽい花にもめぐり会えた。


    スギラン。といってもラン科の植物では無くシダの仲間(ヒカゲノカズラ科)。


    シダ植物オシャグジデンダ(ウラボシ科)。上側左右に2本ずつ、および画面下のほうに出ている細葉の植物はマツノハマンネングサ(ベンケイソウ科マンネングサ属)。


    ヤシャビシャク(ユキノシタ科スグリ属)。花期は4月で既に種になっている。

 花の名前はなんとなく聞いたことはあるのだが、実際に見るのは全てが初めてのものばかりの着生植物たち、大感激してさらに次の場所に移動する。そちらにもまた初めてお目にかかる素晴らしい着生植物たちが居た。


    右側と幹の上右寄りにぶら下がっているのがカヤラン、左側に着いているのがマツラン、別名ベニカヤラン。


    カヤラン(ラン科カヤラン属)


    マツラン、別名ベニカヤラン(ラン科マツラン属)。この画像では分かりにくいが、葉に赤紫色の斑点がある。


    赤っぽい種をつけたカヤラン。

 今回のいちばんの目的が着生植物、特にフガ・ク・スズ・虫ソウであったが、その他にもこのような様々な着生植物を見ることができた。富士山樹海の中がいかに植生に富んだ素晴らしい森であるかを改めて見直すことができ、感心させられた。



コメント (2)
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