山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

夕映えの那須岳茶臼岳 姥ヶ平  平成28年10月14日

2016年10月16日 | 日本百名山
 この週も学会なるもので宇都宮に出張となった。単位取得のための講習が午前に入っており、さらにもうひとつ特別講演を拝聴して出発したのはお昼近くになってしまった。那須岳ならばロープウェイを使えばとりあえず茶臼岳山頂までは行ける。さらにこの日は十三夜の明るい月があるので、夜中に下山するのを覚悟ならば三本槍まで行けるのではないかと考えたのだが甘かった。ロープウェイ駅の遥か手前でロープウェイ待ちの交通渋滞に入ってしまう。何時にロープウェイに乗れるか全く予想がつかず、あきらめて沼原側に回り込んでみることにした。悪路と思いきや、一部が未舗装の他はきわめて良い道が沼原の駐車場まで続いていた。時間は午後1時半を過ぎており、頑張れば茶臼岳の山頂までならなんとか日没前に着けるかどうかというところだ。とりあえず行けるところまでということで出発する。


    登山道入り口のところに咲いていたハハコグサ。アキノハハコグサかと思ったが毛が少なく上部であまり枝分かれしていない。これは遅咲きのハハコグサ。


    良い道が伸びている。


    姥ヶ平を目指していたはずだが、この看板は南月山方面の道標。ここで地図とGPSを確認、どうやら違う道を来てしまったようだ。

 姥ヶ平を回って牛首に行くはずだったのだが、どうやら道を間違えたらしい。昭文社の地図ではJAふれあいの森というところから姥ヶ平方面に行く道は書かれていないが、GPSを見ると道があるらしい。ということで、この看板の裏側にある細い道をたどって草地と湿原が広がるJAふれあいの森に行ってみた。


    JAふれあいの森の草原。レンゲツツジがたくさん生えている気持ちの良い草地で、向こうには大倉山の山塊と振り返れば南月山が見える。


    水路の脇は湿原になっていた。春にはいろいろな花が咲きそうだが、鹿の糞がたくさん散乱している。

 気持ちの良い草原を進んで行くとやがて樹林帯に突入し、そこで道は消失した。GPS片手にルートを探すがそれらしきものは無く、さらに背丈以上もある笹薮に突入してしまった。枯れた沢に出くわしたのでそこを下りるが両側から笹がかぶさっている藪には変わりない。GPSで位置を確認しながら、笹の大藪をかき分け踏み付けながら最短ルートを50mほど突き進んで正規の登山道に抜け出た。服は笹の葉っぱだらけ、かなりの体力を消耗してしまった。歩いている人が居たならば、熊か何かが出てきたかとびっくりされたことだろう。まさか山梨県外の山で、しかも那須岳で藪漕ぎするとは思ってもいなかった。


    右手の笹薮を突き抜けてルートに出た。


    紅葉には早いようだが、ダケカンバは色付かずに散ってしまっている。


    三斗小屋温泉分岐の手前で那須岳の茶臼岳が見えてきた。


    ひょうたん池の分岐に到着。


    那須岳の眺望が素晴らしい。

 苦節約2時間、3時40分に姥ヶ平のひょうたん池分岐に到着した。那須岳の茶臼岳が大迫力で迫り、牛ヶ首の脇からシューシューと音を立てて噴煙が上がっているのが見える。頑張れば日没までにギリギリで茶臼岳の山頂までは行けそうだが・・・しかし、そこまで行ってしまうと一番良い日没の時間にこの素晴らしい景色が見られなくなってしまう。西の空に雲は無くこの秋晴れの空、あと1時間も待てばきっと夕焼けに染まる紅葉の斜面が見られるはず。山頂をあきらめてひょうたん池から姥ヶ平の界隈で日没を待つことにした。


    ひょうたん池から見上げる紅葉の那須岳


    ひょうたん池と紅葉の那須岳。風も無くこのうえなく素晴らしい景色、抜群の撮影条件が整った。


    茶臼岳と紅葉を映すひょうたん池


    秋晴れの抜群の風景。花見屋から写真家に戻ったような気分。


    三本槍岳方面


    ベンチがある姥ヶ平の広場


    日没が迫る茶臼岳。少し染まってきた。


    シューシューと音を立てて噴煙を上げる茶臼岳

 時間は午後4時50分を過ぎた。もうすぐ日没を迎える頃、赤い夕陽が那須岳を照らし、那須岳の岩の斜面や紅葉の木々が真っ赤に染まった。このうえない素晴らしい景色を目にすることが出来た。写真ではその美しさは表現できないように思う。


    日没間近、那須岳が真っ赤に染まった。


    夕映えの茶臼岳


    木々も赤く染まった。


    男鹿山塊に沈んで行く真っ赤な夕陽

 わずか10分ほどでこの夕焼けのショータイムは終わってしまい、日が暮れた。この時間にここに居たのは私だけだったのだが、日没後に三脚を担いだ若者がひょうたん池のほとりにやって来た。茶臼岳を越えてここまで来たそうで、撮影が終わったらまた山を越えて戻るという。凄い人がいるもんだと思ったが、同じ場所に居る私も似た者通しなのだろう。この日は十三夜の月が日没後に茶臼岳あたりに昇って来るはずだ。カシミール3Dで位置と時間を見て来なかったのだが、おそらくこのひょうたん池あたりで山頂付近に出てくるだろうと思う。冷え込んできた夕暮れ過ぎにダウンジャケットを着込んで二人で写真談義をしながら月の出を待つ。午後5時半過ぎ、牛ヶ首から立ち昇る噴煙が白く輝き出した。そして遂に月が姿を現した。


    日没過ぎの茶臼岳とひょうたん池


    牛ヶ首から立ち昇る噴煙が輝き、月が昇り始める。


    茶臼岳に現われた月。予想よりも右側から現れた。


    月と茶臼岳を映すひょうたん池。狙っていたのはこのダブルムーン。


    立ち昇る噴煙に茶臼岳の影が投影されている。

 午後6時まで粘ったところで私はこの日の撮影を止めて撤収したが、若者はまだ粘るそうでお先に失礼させてもらった。深夜まで頑張れば、今度は茶臼岳の上にオリオン座と冬の大三角形が昇って来るはずだ。その頃には月が高く昇って茶臼岳を照らし、幻想的な写真を撮ることが出来るはずだが、今日はそこまで根性が無い。月光に照らされた夜道を木の根っこにつまづいて転ばないように気を付けながらテクテクと沼原駐車場に戻った。


    三斗小屋温泉分岐の上から振り返って見る月光の茶臼山

 山頂には立てなかったが、それ以上に素晴らしい景色を眺め、写真に収めることができたと思う。花のシーズンが終わり、これからは星空を含めて写真撮影のシーズンになると思う。
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盗掘に遭ったエビネのその後 武田の杜  平成28年10月12日

2016年10月16日 | 番外編
 今年の春、開花を待たずに武田の杜遊歩道の藪の中に生えていたこの界隈でも最大級のエビネがそっくり盗掘に遭ってしまった。画像を確認してみると、ピンクのエビネが15株、白いエビネが7株花を咲かせていた。春に確認に行った時は跡形も無く消えており葉も確認できなかった。その後はいったいどうなっているのか?他のエビネも見回りながら訪れてみた。


    ヤクシソウか?


    こんな近場でシモバシラを見ることが出来るとは、新たな発見。


    ヤマハッカだと思うが、未だに区別が出来ないこの類の花。


    コウヤボウキはたくさんあるが・・・


    こっちがあるのは初めて知った。オケラ。

 藪の中に踏み込んでみると、初めて踏み込む林の中でエビネに出会うことが出来た。結構な大株もあり、種を付けている。


    初めて訪れる場所で出会ったエビネ。どんな花を咲かせるのか来年が楽しみ。


    種を付けている。あれほどたくさんの花を咲かせながらも実はそれほどたくさん付くものでは無いらしい。


    こちらは春先に見つけた株だが、小さな株はどうも実を付けないらしい。


    こちらはピンクの花を咲かせた株。小さな株もあったはずだが、実を付けているのは大株だけだ。


    こちらが問題の盗掘の被害に遭った場所。何も残っていないと思ったのだが・・・


    良く探してみると小さな葉が2枚出ていた。

 盗掘現場に行ってみると、春には発見できなかったエビネの葉が2枚出ていた。ラン科の植物であるエビネはアツモリソウと同様に共生菌と関わり合いを持ちながら成長する植物である。株が無くなると共生していたラン菌も消滅してしまい、その場所に再び生えることは困難になってしまう。しかし、このように葉が残っているということはラン菌の活性も残っているということであり、うまくすれば再生が出来るかも知れない。しかしそれも5年から10年がかりでの再生になるだろう。ひとまず少しでも葉が残っていてくれたのは不幸中の幸いである。

 夕暮れ間近、富士山を見ると雲の中に山頂付近が浮かんでいた。展望台まで行って甲府盆地の夜景とともに撮影を試みるが、残念ながらその頃には雲の中に隠れてしまった。


    甲府盆地の夜景と月。


    日没の頃は雲の中に頭だけ出していた富士山だったが、この頃にはもう雲に隠れてしまった。


    それにしても、甲府盆地の夜景は美しい・・・と思う。
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秋の四阿山へ  平成28年10月11日

2016年10月16日 | 日本百名山
 学会と10月連休を利用して北アルプスの山に星撮りに出掛ける予定を立てていたのだが、残念ながら連休の天候は思わしくなく星が出てくれそうもない。そこで予定変更して山梨に戻る途中で四阿山に立ち寄ってみることにした。10月9日、一旦は菅平牧場の駐車場まで行ったのだが、山の上は真っ黒な雲におおわれていて今にも降り出しそうな雰囲気だ。しかも時間はもう11時になる。突然の予定変更で地図も持って来ていないので、コース状況を聞くために群馬のお嬢様のところに電話すると、本日は東北遠征から帰宅して自宅休憩中との事。四阿山は根子岳周回して6時間ほどの行程らしい。順調に歩いて下山は午後5時か6時ごろになるが、この空模様では途中でどうなるかわからない。この日はあきらめて、群馬のお嬢様のところに立ち寄らせていただき、ガスト山に行くことに変更し、ご馳走してもらったうえにおみやげまでいただいて山梨に戻る事となった。

 翌日の10日も天候いまいちで1日中自宅で寝て過ごし、天候回復した11日、再び四阿山を訪れた。前日寝すぎた事もあって早朝4時に目が覚め、菅平牧場駐車場には6時半に到着した。7時に出発、牧場の草原に朝日が差し込んで気持ちが良い。


    朝7時、人気の山だけあって既に駐車場は8割埋まっている。


    朝日が昇る。


    草原に朝日が差し込み気持ち良い。


    ノコンギクがいっぱい。


    ここから入山し、まずは四阿山山頂を目指す。


    沢を渡る。


    これはクルマバソウか? 沢沿いに群生。


    イワカガミがいっぱい。この先も葉っぱだけたくさんあった。


    笹の中の道を登る。


    笹に埋もれて種になったヤナギラン。

 美しいシラカバの森を抜けると視野が開けて浅間山から湯の丸の山塊が見えるようになってきた。しかし残念ながらこの日は雲がかかってしまい、山容は見えなかった。登って行くと、ガンコウランやコケモモが生える岩の間から突然オコジョが姿を現した。カメラを構えようとした途端に岩の中に隠れてしまい撮影はならなかった。この時に私の前を歩いていた男性もこのオコジョを目撃し、その後はずっとこの方と一緒に四阿山、根子岳と行動を共にすることとなった。地元の方でこの山域にはたいへん詳しく、すっかりガイドをしていただく形となった。


    浅間山の山塊が見え出したが雲がかかってしまった。


    向こうがこれから登る四阿山(右の奥)と根子岳(左)。まだ結構遠い。


    マツムシソウ


    これはショウジョウバカマか?あるいはネバリノギランか?


    紅葉したイワカガミ。


    ガンコウランの実


    ミツバオウレン


    ほとんど咲き終えてしまっているが、この山はマツムシソウがいっぱい。


    紅葉していればきっと素晴らしい景色だっただろうが、シラカバは色付かずに散ってしまっている。


    山頂付近は木道の階段になっていた。ガスっているうえに風が強い。


    四阿山山頂。人がいっぱいで食事は少し戻った広場でとる。

 途中から案内をしてくださった地元の方はCanon Eos80Dを購入されたばかりだそうで、見せてもらうと操作性はほとんど私の持っているEos7Dと変わらない。絞りの話や星撮りの話をしていると時間の経つのも忘れてすっかり話し込んでしまった。四阿山に登るならば滝のある裏側の米子瀑布側から登ってみたいと思っていたのだが、この方はそちら側のルートにもとても詳しく、神社があってかつては硫黄の採掘を行っていたこと、診療所があったことなど教えていただいた。そちらのルートは1日で歩くには距離が長いので、もし歩くならば根子岳の避難小屋を利用させてもらうことになるだろう。沢沿いを登るルートなので、こちら側とはまた違う植生が楽しめるのではないかと思う。

 昼食をとった後に根子岳に向かうが、ここからは樹林帯の中の急下りになっていた。そしてまた登り返し、急登では無いが結構辛い。


    四阿山から見る根子岳。右手に浮かんでいるのは妙高・火打ヶ岳だと思う。


    一瞬だけ雲海に浮かんだ北アルプスの山並を見ることが出来た。


    コルから振り返って見る四阿山(左側が山頂)。


    根子岳への登り。結構辛い。


    面白い堆積岩から出来ている根子岳山頂付近の岩。


    層状になった大岩が露出している。


    岩に着いているのは枯れてしまっているが、おそらくダイモンジソウ。


    崩落地を見下ろす。


    米子瀑布の谷に雲海が広がった。遠く見える三角錐は志賀高原の笠岳。


    根子岳山頂

 根子岳山頂で休憩し、米子瀑布側のルートを確認する。霧で霞んで眺望は得られなかったが、天気が良ければ北アルプスの山並がずらりと見えるはずだ。きっと星の撮影にも抜群の場所なのだろう。


    ガンコウランがいっぱい。あっちに北アルプスが見えるはずなのだが・・・。


    ここにもヤナギランがいっぱい。


    上では枯れていたが、牧場付近ではまだ咲いていたリンドウ。


    タチフウロ?アサマフウロ?

 8時間かけてゆったりペースで四阿山・根子岳を周回した。案内していただいた地元の男性(名前を伺うのを忘れてしまいました)のおかげであまり疲れることも無く会話を楽しみながら存分にこの山を楽しむことが出来た。

 この山の界隈はニホンカモシカが生息しているそうで、そのためニホンジカが少なく食害にはあまり遭っていないように見受けられる。ニホンジカの好物のヤナギランやマツムシソウが多く見られるのはそのためであろうが、気になるのは笹がだいぶはびこってしまってきていることだ。地球温暖化とともにこれから増殖してくる植物は笹ではないかと予想している。根をはびこらせて増殖する笹は刈ってもすぐに生えてくるので今後は鹿以上に手強くなってくるのではないかと考えられる。



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