株式会社舵が1986年に発行したこの本はヨーロッパにおける帆船の構造的発展の様子から大航海時代の新大陸発見と植民地の歴史、さらには帆船捕鯨や海賊船、幽霊船の話まで実に内容の豊富な単行本である。4月25日、横浜の みなとみらい岸壁に係留してある日本丸を訪問した時に、大西船長が勧めてくれた本で、著者は大西船長の恩師だそうだ。
先日、山林の中の小屋で、静かな夜に小川の水音を聞きながら読んで来た。読みながら思い出した。昔、仙台の県立高校でカッターを何度も松島湾へ漕ぎ出したことを。20人位で海を渡り、海水浴場の桂島や馬放島の砂浜へカッターを乗り上げ、昼食をとったものだ。
帰りは船首に近いところに太い木のマストを立て、三角形の帆を上げて走った。
この経験で2つの事が分かった。オールで漕ぐ船は喫水が浅く、砂浜へ容易に乗り上げることが出来る。離岸も簡単。もう一つのことは、帆走は風向きさえ良ければオールで漕ぐより楽で速い。
杉浦昭典著「帆船ー航海と冒険編」では数十人の漕ぎ手が乗る、一本マストのローマのガレー船の構造を説明している。船を軍艦として、あるいは商品の輸送船として用いるために、帆走能力が次第に大きくなって行った歴史が明快に書いてある。大航海時代には漕いで走ることを完全にやめ帆走だけで外洋を駆け巡れるように改良に、改良を重ねて行った歴史が分かり易く説明してある。
帆船は帆だけでは離岸も着岸も困難である。昔は積んであるカッターを下ろしてオールで漕いで帆船を引っ張り離岸させた。現在はジーゼルエンジンが補助機関としてついているのでオールを漕ぐ必要はない。
帆船の発展の歴史を読むと上の大きな写真に示す英国製の日本丸が西洋式帆船の最高到達製品である感じが、しみじみとする。日本丸が出来た昭和5年には、既に紹介した氷川丸も出来ている。お客や貨物を運ぶコストとリスクを考えれば氷川丸が決定的に優位であることは誰の目にも明らかである。とにかく色々なことを考えさせる内容豊かな本である。いずれ考えた色々なことを書いて行く予定である。(続く)