Danna Nanda さんがご自分のブログで贋作の喜びを書いています。
なんだっ亭の、< 館 主 独 白 >
私、体験的に思いますに、贋作の喜びは以下の3点です。
1. 贋作をしていると、その絵を少しずつ食べている
ような気分になれます。
2. 贋作しなければとても見つけられないような
小さな物を発見できます。
3. 贋作ではありますが、何か美の創造に関わって
いるような気分を味わえます。
以下は、生来不精な私が本業の合間を縫って描いてきたいくつかの贋作品でございます。しかしこの程度で贋作と称するなど、その道の本職の方に大変失礼かなとふと思い、以下は「模写」という、素直な表現に変えさせていただきます。
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以上の文章のあとで、ゴッホやモネーの、あるいは藤島武二の絵まで模写し、その作品を数多く展示しています。そして、「ゴッホは芋虫くらいのタッチを複雑に絡み合わせながら凄いスピードで描きあげている。しかもゴッホの絵は細かいところまで神経が行き届いいて、デッサンが非常に上手だ。色の組み合わせも良い。真似が出来ない。ああ、ゴッホの絵は模写してはいけない。」と反省しています。全ての模写にこのような反省の文が付いています。それで我々は「絵を描くスピードが大切なんだ。ゴッホは下手のように見えるがデッサンが上手なんだな、、」と理解できるわけです。ゴッホ独特の絶妙な色の組合わせは誰でも感心するでしょうが、描くスピードやデッサンの上手さは普通は気がつかないでしょう。
贋作の本質的な面白さを、上記のようなご自分の体験から決定的に書いています。それで分かりました!世の中に贋作的なと言えば言い過ぎですが、模造品が多い理由が。
いきなり学問の世界へ話が飛びますが、研究の仕方や学説には似たようなものが多いのです。昔、小生がある分野の実験科学を研究していたとき、真似のような実験研究があまりにも多いのを不思議に思っていました。欧米の研究者が専門誌に論文を発表すると、日本人は間髪を入れずにその実験方法を真似して、ほんの少し改良した実験結果を日本の学会誌に発表します。欧米の研究者より少し実験の精度が良いだけで、何も新しさが有りません。
欧米の研究者の実験方法を真似ることは、上の3つの贋作の喜びに一脈通じているのでしょう。
「3. 贋作ではありますが、何か美の創造に関わって いるような気分を味わえます。」を少し変えて、「模倣ではありますが、何か学問の創造に関わって いるような気分を味わえます」と書き換えてみると納得がいきます。
日本の大学にはノーベル賞をもらえるくらい独創的で優秀な研究者が沢山います。しかしその一方で、欧米人研究者の模倣をして楽しんでいる研究者も沢山います。そんな現象が起きる原因をDanna Nanda 氏が明快に教えてくれました。贋作は悪ですが、模写や模倣は謙虚さの表れで、善です。少なくとも専門技術を磨く良い方法と言う人もいます。でも、一生それだけで終わるとしたらどうでしょうか? Danna Nanda 氏のブログの感想です。(終わり)