後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

三笠と帆船日本丸と氷川丸の装備の比較

2008年05月29日 | 日記・エッセイ・コラム

1900年英国、ビッカース造船所製の三笠と、1930年英国、ラメージ&ファーガソン社製の帆船日本丸と同じく1930年三菱造船、横浜ドック製の氷川丸の構造と装備を比較すると欧米の船建造の思想が実に明快に理解できる。

欧米では船、特に大型船を建造する場合にその船の使用目的をまず明確に決定する。その後で使用目的を達成する一番合理的な構造と装備を考えて建造する。

欧米の設計思想の根幹にはこの合目的性が一番重要になる。三笠の目的は敵艦より優れた大砲を多数装備し、高速で海上を自由に動けなければならない。その断面構造図には戦闘目的に関係しない装備は一切無い。士官室は後部、水平室は前甲板の下と画然と分離され規律保持が徹底している。砲弾庫は船底の一番安全なところにあり、大量の食料は長期作戦のために冷凍庫に保存されている。

撃沈した敵の戦艦の乗員を救助し、捕虜にする予定で「捕虜収容室」も装備してある。

動力は蒸気機関で直立3気筒レスプロ蒸気機関で2基で合計15000馬力、2軸スクリューで15140トンの船体を18ノットで推進させる力を備えていた。燃料は石炭で、甲板の左右に多くのマンホール状の穴を作り船底に石炭を人力で落とし込む。出動の前には1500トンの石炭を積んだ。積み込むときは乗組員総員で迅速に積み込む訓練を重ねたという。

三笠の建造後30年たって1930年に日本丸と氷川丸が出来た。

日本丸は三笠と同じ英国製の排水量2279トンで池貝鉄工所製ジーゼルエンジン600馬力2基を装備している。この船の使用目的は帆走訓練生の大洋航海術の教育である。したがって大洋航行用の4本マストで、おもに横型帆と少しの縦型帆の合計、29枚の全てを人力で操作するように出来ている。甲板から上の全ての装置は、舵も含めて電気モーターや油圧動力は一切使わない。小さなジーゼル発電機は艇内の灯火と航海灯と無線電信機のみへ供給された。航海の90%は帆走し、ジーゼル燃料を節約した。

この船には武器は一切積んでいない。食料と清水だけを乗員数と航海日数に従って積載していた。この船の断面構造図を見ると平和的な構造になっている。それに比較して戦艦「三笠」が戦争目的の殺伐とした構造になっていることが歴然とする。平和な現在の日本人として見ると、非常に残酷な構造になっているように感じる。捕虜収容室など本気で作ってあるのは敵艦を沈めて、生存者を拾い上げようとしている。

さらに1930年製で排水量11622トンの氷川丸は客船であり、客室とダイニングルーム、社交室などが主な部分を占めている。5500馬力の大型ジーゼルエンジンを2基装備して太平洋を時速18.2ノットで駆け抜けた。ただ当時の社会風習に従って一等客室と三等客室の差が大きい。1等は個室で三等は上下2段ベットの狭い8人部屋で船底近くにある。食堂も貧弱である。三等船客は一等客室部分へは立ち入り禁止である。三等船客にとって、航海中は暗い毎日であったに違いない。最近の豪華客船のニッポン丸や飛鳥の船内とは雲泥の違いである。

三笠と帆船日本丸と氷川丸の構造・装備の違いを簡単に比較して欧米の船の建造の思想を考えてみた。そしてそれを敷衍すれば飛行機や自動車の設計思想にも同じようなことが見られる。皆様のご叱正をお待ちしています。(終わり)


趣味には無理は禁物

2008年05月29日 | 日記・エッセイ・コラム

Dscn4166_2 挿絵の写真です。

以前、甲斐駒ケ岳へ登り、7合目の山小屋に泊まった。小屋番の老人が一人いて、夕食を食べるか?と聞く。「夕食と言ってもインスタントラーメンしか出来ないが」と言う。具の無いラーメンを一緒に食べながら老人が言う。「昔、冬以外は、毎週、週末ごとに夜行列車に乗って、そのまま登ってきた技師が居たよ。川崎にある製鋼工場の技師をしていた男だった」「だった。とは?もう来ないの?」「10年くらい毎週登って来たが急病で死んでしまった」「死んだと知らせがあったの?」「無いね。来なくなって、次の年の初夏に数人の男が登って来て、死んだと教えてくれた」彼に世話になった同僚たちが追悼登山に登ってきたという。

それだけの話である。寝ながらあれこれ考える。山がそんなに好きなのは何故だろうか?そんなに無理して毎週来る必要があるのだろうか?苦行の山登りは趣味なのであろうか?結婚していたら週末に家をあけることは不幸ではないか?同僚が追悼登山をするくらいだから職場では人望があったのだろう。若死にしたのは登山の無理が祟ったのだろうか?

何十年たっても小生には答えが無い。答えが出ないから忘れられない。皆様はどうお思いでしょうか?

ヨットの趣味の話。葉山マリーナの年間の陸置き料金は船の長さによるが、150万円位は普通だ。内装の見事なフランス製のヨットを、12人で共同所有しているあるグループあった。そのなかの1人、Tさんに呼ばれて何回か葉山沖をセイリングした。

Tさんは元予科練に居た。穏やかな性格でのんびりしている。こんな人が特攻機に乗るのかと、戦争の恐ろしさを思ってしまう。そのTさんが、「12人でフランス艇を共有すると、いろいろ意見が違って苦労する」という。

レースで勝ちたいのでレース用のセールを何枚も買いたいと言う人。仕事の都合で毎月は来れないので負担金を安くしてくれと言う人。キャビンに泊まりたいから陸置きでなく浮桟橋に係留してくれという人。昼間だけのセイリングだけでなく、せめて大島へ行きたいのでレーダーや海上無線機、そして性能の良いGPSを取り付けてくれという人。フランス艇は金具類が悪いから全部取り替えようと主張する人。このような12人の調整をするのがTさんである。

油壺、佐島、葉山、逗子などのマリーナ係留料が大きい。他にクルーザー購入代金もある。それで、6、7人から15人くらいで共同所有し、ヨットを預ける場合が多い。

仲間同士の話し合いに、無理があったら趣味として良い趣味と言えるであろうか?

どんな趣味でも日常の生活を犠牲にしてまでするべきでは無い。それが小生の信条である。中古ヨットを係留料の格安な霞ヶ浦に置くのも自分の信条にしたがったからである。侘しい山林の中の小屋にこだわるのも同じ理由だ。

趣味と日常の生活のバランスを皆様はどのようにお考えでしょうか?(終わり)