後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

三輪修画伯の独自の画風の確立への苦悩

2010年04月22日 | 日記・エッセイ・コラム

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  上の絵の出典は、http://ameblo.jp/miwa-art/entry-10098717668.html で、下の絵の出典は  http://mujika.jp/miwa/miwa-tenji.htm です。上は1975年作の自画像でピカソ風のキュビズムの絵画です。17歳の時の本格的油彩画です。いきなり中部白日会賞を受賞しました。

下は1994年の作で、「果物と貝」と題する絵です。平凡なように見える静物画ですが、良く見ると息を飲むような感動を覚えます。丁寧に、丁寧に色を重ねて何か月もかけて完成したような感じを与えています。三輪修画伯の作品は、http://mujika.jp/miwa/miwa-tenji.htm に年代別に掲載してあります。私はどの絵も好きです。全ての絵には存在感があります。存在の向こうにあるものが見え隠れしています。あの世の風景でしょうか?希望の光輝く世界でしょうか?深い悲しみの世界でしょうか?見るたびにその光景が変わります。

4月9日に名古屋日動画廊で彼の個展を見に行った時、聞いてみました。この独自の画風の確立に苦労なさいましたか?彼は携帯電話を取り出して処女作を見せてくれました。後でメールに添付して送ってくれたのがこの自画像です。そして話してくれました。毎日のように画風を変えて描いていました。それは苦悩といえばそうですが、後から考えると懐かしい苦しみです。そして十数年前に現在の画風を確立したのです。

彼の作品のHPは1992年からの同じ画風の作品が年代順に出ています。きっと1992年前後に画風を確立することに成功したものと思われます。

この画風にこだわっています。変えるつもりはありません。(私はおめでとう御座いますと言いたかったのです。しかしその言葉を飲み込みました。軽々しい言葉は言うべきではないのです)。

三輪修画伯には画家としての勇気があります。思想があります。節操があります。抜群の眼とテクニックもあります。まだお若いのでこれからもっともっと傑作を描くでしょう。そして必ずや日本の絵画の歴史に名をとどめる人であると信じています。(終り)


独自の画風を確立するための画家の苦悩・・・安井曽太郎の場合

2010年04月22日 | 日記・エッセイ・コラム

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◎没後50年・安井曽太郎展を観て

水戸市の千波湖のほとり、県立近代美術館で2005年の7月に安井曽太郎氏の油彩109点、水彩・素描35点が年代順に展示された。浅井忠に師事していたころの少年期の作品、フランスでセザンヌの影響を受けていたころの滞欧期の作品、帰国後の東洋と西洋のはざまで苦しんだころの作品、そして曽太郎流画風の確立した後の傑作の数々が順序よく、ゆったりしたスペースに展示されている。

全国の美術館や個人所有の油彩を109点も借り出して、曽太郎氏の芸術遍歴を浮き彫りにした企画展は、見る人にいろいろなことを考えさせる。

どの時期の作品でも、とにかく抜群に上手である。と言うと、一緒に行った家内が「上手なのは当たり前です。そんな誉め方をするのは芸術家に対して失礼です」と怒る。しかし、浅井忠に師事して描いた油彩を見た曽太郎氏の家族や友人は「上手だ、すごく上手だ。一流の画家になれる」と誉めたに違いない。本人もその気になって18歳の時パリへ渡る。

後期印象派、特にセザンヌの直接的な影響を受け、澄んだ青を基調にしたいかにもセザンヌ風の裸婦、フランスの風景、静物などを精力的に描く。特に裸婦のデッサン力、深みのある陰影はとても東洋人の絵画とは見えない。セザンヌの作品といえばそう信じられる。

ところが、帰国後数年間の画風は混乱に続く混乱である。パリで学んだ絵画精神で日本の風景、日本の裸婦、日本の静物を描こうとすればするほどバランスの取れない絵画になってしまう。私はこの混乱期の、例えば京都近郊の多くの風景画や裸婦群像などは好きにはなれない。見ているうちに苦しくなってくるのだ。

       @独自の画風の確立

独自の画風を確立するまでの帰国後数年間の模索と深い思索こそが、曽太郎独自の芸術を生んだ。西洋の絵具、画材を使い西洋風の色合いで日本画の構図や線描を交えて和洋折衷の絵画を作ることは可能である。日本の風景、日本人モデルを用いてセザンヌ風に描くことも可能である。しかし安井氏はそんな浅薄なことはしない。浅薄な作品ではないが、絵全体として何か緊張感が弱い。

東洋と西洋の文化の両方を受容して独自の境地を作り上げることに成功した画家はそんなに多くはない。ところが、昭和初期の少女像、玉虫先生像、気位の高い和服の婦人像のころから、いわゆる曽太郎流画風が確立されて行く。セザンヌからの卒業、日本画ではないオリエンタルな精神性を背景にした表現は独創的な画風を生んだ。

昭和9年の「金蓉」と題した中国服を着た婦人像が最高の傑作と言われる。女性の強さ、美しさが伝わって来る。横長の大きなキャンバスに描いた外房風景。強風の沖を、左から右へ流れるように白波が動いている。漁村の歪んだ家々が漁師一家の必死の生を暗示している。風景が美しいだけではない。漁師の生活そして人生を描いている。薔薇・果物を重厚に描いた静物画にも氏の誠実な心が表れている。深い余韻を感じさせるのも、研鑽を重ねた技量のおかげである。

安井曽太郎の昭和25年の「孫」と題した少女像も傑作である。かろやかなこの絵は少女のパーソナリテイーを浮き彫りにし、その後の人生を暗示している。もし「玉虫先生像」、「金蓉」、「外房風景」、「孫」など曽太郎画風確立以後の傑作のみの展示であれば、曽太郎氏の絵の面白みや深みが理解されない。才能豊かなある東洋人が西洋の芸術を受容して帰国。その脱却と独自の境地の確立に苦悩したすべての時期の作品を展示することが重要である。没後五十年・安井曽太郎展を企画した方々の考えの深さに感心する(終)

脚注:上記の文は2007年11月17日掲載の「外国体験のいろいろ(6)」を改訂したものである。次の掲載記事、「三輪修画伯の独自の画風の確立への苦悩」に関係する内容なのでここに掲載しました。次の記事とおわせてお読み頂ければ嬉しく思います。


世界から好かれている日本・・・嬉しいです!

2010年04月22日 | 日記・エッセイ・コラム

読売新聞の4月19日の一面で日本の国際的な評価の報道がありました。英国のBBCと読売新聞が昨年11月から今年の2月にかけて、面接や電話で29977人から回答を得た結果を集約したのです。

「日本は世界に良い影響を与えている」という評価は53%で、「悪い影響を与えている」の21%を大きく上回ったのです。一番良い評価を受けたのはドイツで2番目が日本と欧州連合(EU)でした。一年前の同じような調査では一位がドイツで、それに続いて英国、カナダ、に次いで日本でした。悪い影響を与えている国々はイラン、パキスタン、イスラエル、北朝鮮などです。

こういう調査はその調査方法で結果が左右されるので、そのまま信用出来ない場合が多いものです。それにしても嬉しい結果です。

外国旅行をしたり、そこに住んでいると日本人が尊敬され、好かれていることが肌で感じることがあります。私個人の経験では、1980年頃の高度成長期から、そのような実感が得られるようになりました。

しかし当時は日本が安くて品質の良い工業製品を大量に世界へ供給し始めたからです。その後1990年に日本は長い経済不況に陥ります。それでも日本への評価が高いのは工業製品のお陰だけではないのです。

その原因を深く考えると、「日本人の個人、個人」が外国で立派な仕事をして来たからという確信に至りました。立派な仕事は海外ボランティア、学者や芸術家、などのあらゆる分野で行われて来たのです。実例を上げればキリがありません。

そこで最近知った身近な例を2つだけ上げてこの随筆を終りにしたいと思います。

私の住んでいる小金井で育ったロイター通信日本支局のカメラマン村本博之さんがタイのバンコックでデモの鎮圧隊に撃たれて殉職しました。報道に携わる多くの日本人が海外で殉職しているのです。例えばベトナム戦争中の1970年から1975年にかけて報道関係者が合計37人死んでいます。その中で日本人が10人も含まれているのです。沢田教一さんや一ノ瀬泰造さんの名を覚えている方も多いと思います。命を賭けた日本人の報道関係者の活躍は尊敬されるものです。

日本人の評判を上げる個人的な影響で、見落されがちなものに輝かしい女性の活躍もあります。例えばイタリア人と結婚してローマ帝国に関する本を多数出版している塩野七生さんなどがその例です。そして、その他にヨーロッパのオーケストラやオペラ界で活躍している日本人女性も多数居ます。

しかし私がネットを通して身近に知っている平凡な主婦の影響も大きいと考えています。先日このブログでご紹介したモンタギューさんはアメリカ人と結婚してアメリカの高校で日本語を教えています。生徒には白人も黒人もアメリカ先住民もいます。生徒は皆、モンタギュー先生を尊敬し、日本文化が好きな様子です。詳しくは、日本の文化を勉強しているアメリカの高校生達の素晴らしさ をクリックすると出てきます。

日本人の女性が外国人と結婚し夫や子供に愛されることが、回り回って日本の評判を上げるのです。この効果は派手ではありませんが、何代にもわたって外国人の心の奥底に棲みついて行くのです。趣味人倶楽部で3月21日に発表した英香さんの遺書に関するしみじみとした日記を読むと、こんな感想を持つことが出来ます。(趣味人倶楽部:http://smcb.jp/_pr00?oid=112716

勿論同様のことは外国人の女性と結婚した日本人男性にも言えることです。

このように個人の生き方が積り積って日本の評価を上げているのです。こんな結論を言うのは間違いでしょうか?

今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。藤山杜人

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