長野市の千石劇場で、「生きうつしのプリマ」という映画が上映されたので、観てきました。ミステリー仕立てのあらすじばかりでなく、メトロポリタン歌劇場の場面もある音楽映画でもあるという点に興味をひかれました。
監督・脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ (「ハンナ・アーレント」という映画で知られているそうです。)
出演:バルバラ・スコヴァ(「ハンナ・アーレント」に主演)、カッチャ・リーマン(「帰ってきたヒトラー」に出演)など。
父が偶然ネットで見つけた、1年前に亡くなった母エヴェリンに生き写しの女性(スコヴァ演じるカタリーナ)は、メトロポリタン・オペラで歌う著名なプリマドンナだった。父が彼女のことを知りたいと、娘のゾフィ(カッチャ・リーマン)をニューヨークへ送り出し、母とカタリーナの関係を調べるうちに真実が明らかになっていきます。ミステリー仕立てで、母の秘密や父との結婚生活のことなどが明らかになり、物語は進みます。
音楽の使われ方が面白く、出てくるクラシックの曲が、状況を暗示していました。例えば、カタリーナはマーラーの「フリードリッヒ・リュッケルトの詩による5つの歌曲」から『私はこの世に忘れられた」を歌いますが、その歌詞は、忘れ去られたとか見捨てられたという中身で、それが、カタリーナの状況も示しています。
カタリーナ役のスコヴァという女優は、クラシックの歌手もやっていて、吹き替えなしで歌っていますし、また、ゾフィー役のカッチャ・リーマンも歌手でもあり、映画の中でブルーズを歌っていて、この二人を意識して映画も作られているようです。あらすじは、実際にトロッタ監督の身に起きたことを素材とし、二人の女優も同監督の過去の作品に出演するなど、まさにトロッタ・ファミリーの映画です。
マルガレーテ・フォン・トロッタ (監督・脚本)
ゾフィー役のカッチャ・リーマン。ニューヨークのジャズクラブの場面。
本格的ミステリーやサスペンスだと思ってこの映画を見ると、若干肩透かしをくらうかもしれませんが、丁寧に描かれた家族の物語で、音楽映画としても観ることができました。ジャズだと「枯葉」の器楽演奏も流れます。