原田マハの小説「モダン」(文春文庫)を読みました。5編の短編を集めてある文庫本ですが、すべてニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台として、そこで働く人に焦点を当てた小説です。また、文中にはワイエス、ピカソ、マティスなどの20世紀絵画の傑作が登場します。キュレーターとして仕事をしていた著者ならではの美術小説で、それぞれ面白く読みました。ちょっとアート風の写真を使ったジャケットのCDを聴きました。
STEVE GROSSMAN (スティーヴ・グロスマン)
LOVE IS THE THING (RED 1985年録音)
スティーヴ・グロスマン(1951年生)は、1969年から70年にかけてマイルス・デイビス・グループ、71年から73年までエルヴィン・ジョーンズ・グループで活躍していたので、当時から日本でも名の知れていたテナー・サックス奏者です。80年代に入ると、ソニー・ロリンズに近いプレイをするようになりましたが、これはコルトレーンへのトリビュート作です。
メンバーは、スティーヴ・グロスマン(ts)、シダー・ウォルトン(p)、デヴィッド・ウィリアムス(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。イタリアのミラノ録音で、REDレーベルからのリリースです。REDは、米国のミュージシャンも多数録音し、注目すべきレーベルだと思います。グロスマンのワンホーンアルバムですが、最上のリズムセクションがバックを務めています。
曲目は、ジョン・コルトレーン作「Naima」、スティーヴ・グロスマンの自作「415 Central Park West」、あとは、よく知られたスタンダード曲で「Easy to Love」、「My Old Flame」、「Easy Living」、「I Didn't Know What Time It Was」、「What's New」で全7曲。コルトレーンの名曲とともに、バラードの名曲が並び、スタンダード集ともいえる内容です。
スティーヴ・グロスマン(ts)というとフュージョンだったり、ハード系ブロウテナーというイメージもありますが、本作は基本的にバラード集なので、聴いていると癒されます。ジョン・コルトレーンが蘇ったかのように聴こえる「Naima」は、グロスマンのコルトレーンへの敬愛の念が感じられ、胸を打つような演奏です。グロスマンは、どの曲もストレートにメロディを吹いていてわかりやすく、シダー・ウォルトン(p)のイントロやソロもよく、他の曲も素晴らしい。遅めのテンポの「Easy to Love」やゆったりと歌っている「Easy Living」など、楽しめます。
【原田マハ著「モダン」(文春文庫)】
原田マハさんは、いろいろな分野の小説を書いていますが、絵画を中心とした美術に関連したものが面白い。僕にとっては、全く知らない世界を垣間見させてくれるせいだろうと思っています。