安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

山出 保著「金沢を歩く」(岩波新書)

2019-10-13 20:17:25 | 読書

金沢に住んでいる友人から、たまには金沢で飲もうという、嬉しいお誘いがきているのですが、なかなか実現に至りません。その代わりというわけではありませんが、書店で目についた山出 保著「金沢を歩く」(岩波新書)を読んでみました。

   

著者の山出 保(やまでたもつ)さんは、1931年金沢生まれで、1974年に金沢大学を卒業し、金沢市役所に入り、87年に同市助役、90年に金沢市長に初当選し、5期20年市長を務めた方です。あとがきで『この本は、金沢の成り立ちから現代までのまちづくりと市民の暮らしの歩みをまとめたものです』と記しているように、広範な内容を含みます。

簡単な目次は次のとおり。

第1章 金沢のまちを歩く  
この章は、「金沢駅周辺から武蔵ヶ辻、近江市場へ」や「金沢城址から兼六園へ」、「犀川沿いから寺町台へ」など実際に歩くのに使えるガイドブック的な面もあります。

第2章 金沢の歴史を歩く
「前田利家にはじまる加賀藩」、「明治・大正期にみる金沢の先見性」など、金沢の歴史について書かれた章です。

第3章 職人のまちを歩く
「金沢箔、加賀友禅など多種多様な伝統工芸品」、「菓子と料理も、ものづくり」、「金沢の文化、経済の根底にあるもの」など、産業、経済について記されています。

第4章 人とまちの暮らしを歩く
「福祉と教育から地方自治を問う」、「生き続けている金沢の共同社会」など住民の暮らしとそれに関わる市政、さらに著者の地方自治に関する持論が述べられます。

(感 想)

一歩深めた金沢案内として、特に第1章は実際に役に立ちそうで、面白く読めます。金沢には数回行っていますが、訪れたことがない場所が多く、「石川県立美術館」など出かけたい場所がたくさん出てきました。第2章では、加賀藩の草創期にキリシタン大名の高山右近が金沢に滞在し貢献したことが出てきて驚きました。

著者は、実際に市政に携わった方だけに利害調整の話がところどころで出てきて、苦労が偲ばれました。金沢城址のそばにあった石川県庁が郊外に移転し、跡地を公園として整備し空間を確保したことは、すごいとかねがね感服していたのですが、その内情が書かれていて、感激しました。

第3章や第4章では、著者が金沢の「顔」だと言っている「歴史と文化」を守り、育てている様子も描かれています。景観を守ることに対する住民の協力もあり、駐車スペースにしてあった用水の蓋を取り外して、親水スペースとした整備事業は特筆ものです。

北陸新幹線が開業して多くの観光客が金沢を訪れていますが、読了後、リピートする人が多いだろうと感じました。僕も、仕事やプライベートで数回以上は訪れていますが、金沢をまた訪れたくなりました。 

   

雪が降った直後でしょうか。出かけたたくなります。

   

大学もあって、工芸も盛んな街です。

   

兼六園の雪吊です。印象的な写真です。