角フェスと題された角川文庫の2020夏のおすすめ本を掲載した小冊子の中に、長野県安曇野市を舞台にした小説があったので、買って読んでみたところ、スリリングでかなり面白かったので、カテゴリー「読書」で取り上げました。
北林一光「ファントム・ピークス」がその作品ですが、著者は、1961年長野県生まれで映画宣伝会社のプロデューサーを経て執筆活動に入りました。2005年本作(応募時作品名「幻の山」)が第12回松本清張賞最終候補になり、次回作を執筆時に癌を発症し2006年お亡くなりになりました。
粗筋は文庫の裏面にあるものを引用します。読む際の驚きが半減しますので、最初の方だけの紹介になっています。
(粗 筋)
長野県安曇野。半年前に山で行方不明となった妻の頭蓋骨が見つかった。三井周平は悲嘆に暮れながらも、避難場所から遠く離れた場所で発見されたことに疑問を持つ。あれほど用心深かった妻に何があったのか? 数週間後、沢で写真を撮っていた女子大生が行方不明に。捜索を行う周平たちをあざ笑うかのように第三の事件が起こる。山には、一体何が潜んでいるのか?
(感 想)
カドフェス2020用の表紙には、宮部みゆきさんが「先が読めないから、最終ページまでぐいぐい引っ張られる。私は、こういう小説が大好きです!」と絶賛しているとありました。舞台は、烏川沿いの渓谷から常念岳と蝶ヶ岳の登山口である三股周辺で、実際の地形や事物に即して著者が書いていて、その正確さや克明さに驚きました。
示唆される謎と予想できない次の展開がめまぐるしく、解説を書いた映画監督黒沢清さんが映画的な小説だと指摘していましたが、まさにそのとおりです。手に汗握る場面が多く設定されていて、最後の謎解きまで一気に読了しました。
ちょっと怖い話でもあるので、暑い夏にもよいかもしれません。自然と人間との関係も考えさせられる小説でした。
カドフェス2020用の表紙。本来のカバーの上に被っていました。宮部みゆきさんの推薦文が載っています。
角川文庫の2020夏おすすめ本を紹介した小冊子。カドフェスと題されています。
心をつかむロングセラーとして「ファントム・ピークス」は紹介されていました。20万部超のベストセラーだそうです。