安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

村上春樹著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(文藝春秋)を読みました。

2021-07-03 19:33:52 | 読書

小説家で音楽に詳しい、村上春樹さんの新著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(文藝春秋)を購入して読みました。正方形に近いサイズで透明なビニールの外箱(蓋はなくて出し入れが可能)がついた特殊な装丁です。

   

表紙

   

裏表紙

(感 想)

村上春樹さんがどんな曲をどんな演奏家で聴いているのかという興味で購入した本です。著者は、1950年代~60年代中心に録音、製造されたクラシックのレコードを収集していますが、体系的ではなく、自分の好み、関心から集めています。

曲に関しては、バッハからショスタコーヴィチまで幅広いですが、演奏家に関しては、例えば指揮者だとフルトヴェングラーやカラヤン、ベームのものは数えるほどしかなく、トマス・ビーチャム、ストコフスキー、ミトロプーロス、イーゴリ・マルケヴィッチなどが多く、自らの感性の赴くまま選択しています。

同じ曲について演奏者による演奏の違いや自分の好みを、多分に感覚的ですが、記してあり、よく聴いていると感心しました。知っている曲や演奏家が登場すると嬉しくなり、最後まで一気に読みました。聴いてみたい曲や演奏もあり、そういうガイド本としても役に立ちます。

(以下、気になった曲や演奏)

   

『ところどころにシューマンらしい「ちょっと風変わりな展開」が聴き取れて、個性的魅力に満ちた音楽になっている。』と記しています。シューマンの交響曲については、3番をよく聴いてきましたが、2番を聴いてみようと思わされました。

   

グルダの演奏について、『あるがままのモーツァルトを何でもなさげに、ちょっと小洒落た感じで弾いてくれる。』とあります。僕の好きな演奏です。

   

『僕はペルルミュテルの演奏するラヴェルの音楽を愛好しているが、ショパンも同じくらい素晴らしい。なにしろ音が深く、そして内省的だ。』とあります。ペルルミュテ(ペルルミュテール)のものは、LPとCDを何枚かもっているので、村上さんのこの記述は嬉しい。

   

ショスタコーヴィチについては、交響曲第5番も取り上げています。近現代ものもかなりお聴きになっているようです。第1番で、アンドレ・プレヴィンが独奏者として出てきたので、驚きました。

   

ブラームスの交響曲の中からは3番が選ばれています。ケルテスの指揮したものが、『実に素晴らしい演奏だ。』と記されています。僕は、それを聴いたことがないので、CDでよいから聴いてみたい。

   

ベートーヴェンの交響曲の中では、5番と6番が取り上げられています。パウル・クレツキ指揮のものについて、『聴いているだけで「癒される」という感覚がある。』と記しています。このレコードは僕も持っているので、改めて聴きたい。

   

『リストのピアノ協奏曲は僕が初めて購入したクラシックのレコードだ(ピアノがエディット・ファルナディ、指揮がボールト)』とあります。最初に買ったレコードがリストのピアノ協奏曲というのも、マニアックなような気がします。

   

本書では、室内楽もかなり取り上げています。モーツァルトの弦楽四重奏曲第15番では、ジュリアードSQの演奏がお気に入りだそうです。

   

『ピアノ五重奏曲というフォームが僕はなぜか好きだ。』と記していて、ブラームスとシューマンのものを取り上げています。

   

トマス・ビーチャムという英国の指揮者の演奏したアルバムはかなりお持ちのようです。『「感動的な名演奏」みたいなものはとくに思い浮かばないが、楽しい演奏ならたくさんある。』と記しています。

   

『イーゴリ・マルケヴィッチも(1912~1983)も見かけるとついついレコードを買い込んでしまう指揮者の一人だ。」と記されています。トマス・ビーチャムの対極にあるような気がするので、マルケヴィッチへの高い評価は意外でしたが、僕も少しだけマルケヴィッチの指揮したものを持っているので、嬉しい記述です。