今まで読んだ佐々木譲さんの小説は、北海道警察シリーズ(ハルキ文庫)8冊と、エトロフ発緊急電(新潮文庫)で、分野としては警察小説と戦争冒険小説ですが、今回は、企業小説と法廷小説を読みました。
佐々木譲さんは1950年札幌生まれ、「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞、「エトロフ発緊急電」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。著作多数。
表紙
(カバー裏にある内容の紹介)
(感 想)
企業(ガラス工場)の再建を主軸に、ガラス工芸作家との恋愛も描いていて、警察や歴史物ばかりでなく、現代の企業や恋愛を取り上げることのできる著者の幅の広さに、びっくりしました。
ガラスの製造やその応用製品など物造りについても巧に描いていますが、従業員や取引先の社長などとのやりとり、男女の恋愛模様と、登場する人物が感情をもち、実際に動いているように書かれていて、最初から最後まで目が離せません。
表紙
(カバー裏にある内容の紹介)
(感 想)
最初に警察の捜査の様子が描かれ、容疑者の逮捕、取り調べ、送検、起訴、裁判前の打合せ、裁判員裁判と、一つの刑事事件が最終的に評価されるまでの一連の流れを描いていて、感嘆しました。通例は、どこかで止めるか、断面を切り取りすると思います。
法廷での検察官や弁護士の発言やその様子は迫真的で、裁判官や被告人を含めて、実際にあったと思わせる優れた出来栄えです。状況証拠だけで、有罪にできるか疑問を感じながら読んでいたので、判決には好感を持ちました。
佐々木譲さんのファンにすっかりなっています。作品はたくさんあるので、引き続き読みたいと思います。