2010年に「廃墟に乞う」で直木賞を受賞した佐々木譲さんの小説のファンですが、北海道警察シリーズ(ハルキ文庫)など警察小説ばかり読んでいたので、今回は、スパイ(工作員)ものを読んでみました。
表紙
(カバーの裏面にある荒筋)
(感 想)
息もつかせないストーリーの連続で、面白い小説です。日本海軍が真珠湾を攻撃するという情報を得た米国海軍情報部が、ケニー・サイトウという日系人をスパイとして訓練し、日本に潜入させ、日本海軍の動向を探らせます。
日本国内の協力者と情報を探り、海軍の軍艦集結地が択捉と知り、ケニーは択捉に向かいますが、東京から青森、北海道、択捉(エトロフ)へと、憲兵に追われながらの潜入は手に汗を握りました。史実を背景にしたストーリーなので、真実味が感じられます。
択捉では、アメリカへ向けて打電するなど諜報活動を実行するものの、最後は工作員であることが見破られます。徹底的に虚無的なケニーが、現地の女性に恋をし生きる希望を抱いたのが、悲惨な結末ではあったものの、読んでいて救われました。
(作家について)
佐々木譲さんは1950年札幌生まれ、「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞、「エトロフ発緊急電」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。著作多数。
本書にある作者の紹介