安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

エリック・アレキサンダー NIGHTLIFE IN TOKYO

2016-03-16 22:04:06 | テナー・サックス

朝食にはパンを食べていますが、先日、自宅在庫のパンが切れていたので、長野駅新幹線改札口向かいにある「Beck's Coffee Shop(ベックスコーヒーショップ)」で、珈琲にトーストなどがついたモーニングサービス(400円)をいただいてから、職場に行きました。新幹線で東京に向かおうとする人など店内は、外国の方も含めて賑わっていました。この3月下旬に東京のライブハウス「SOMEDAY」で公演を行うエリック・アレキサンダーの作品。

ERIC ALEXANDER (エリック・アレキサンダー)
NIGHTLIFE IN TOKYO (Milestone 2002年録音)

    

人気テナー・サックス奏者のエリック・アレキサンダーが単身来日し、ジャズクラブ「SOMEDAY」(東京都新宿区)で3月22日(火)から28日(月)まで7日間の公演を行います。伴奏は椎名豊(p)など日本人ミュージシャンが務めます。残念ながら、仕事やプライベートの予定が立て込んでいて、僕はその期間には出かけられません。アレキサンダーのライブを聴いたことがないので、いつか聴いてみたいと、彼の今後の来日を希望しています。

メンバーは、エリック・アレキサンダー(ts)、ハロルド・メイバーン(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・ファンズワース(ds)。メイバーンとファンズワースは、アレキサンダーとレギュラーで活動しているので、録音のメンバーに入っていて不思議ではないのですが、今回、ベースにロン・カーターを迎えているので、カーターにも注目して聴いてみました。

曲は、アレキサンダーの自作が「Nemesis」、「Cold Smoke」、「Island」、「Big R.C.」、「Lock Up and Bow Out」の4曲、メイバーンの自作の「Nightlife In Tokyo」、スタンダードの「I Can Dream, Cant' I?」と「I'll Be Around」の全7曲。「Big R.C」は、アレキサンダーがロン・カーターに捧げた曲で、カーターのフューチャー曲です。

アレキサンダー(ts)のワンホーンアルバムで、現代のハードバップとして面白く聴けます。タイトル曲の「Nightlife in Tokyo」はブルースっぽい曲ですが、ソロに入ってからのアレキサンダーの切れ味鋭いフレーズは聴きものです。「Nemesis」や「Cold Smoke」では、出だしの雰囲気やサウンドにジョン・コルトレーンからの影響を感じさせ、メイバーン(p)のプレイもマッコイ・タイナー風です。「I'll Be Around」は、じっくりと吹いていて、美しいバラードになっています。

【エリック・アレキサンダー公演チラシ】

   

【Beck's Coffee Shop長野店】

   

ベックス・コーヒー・ショップの外観

   

店内に掲示された新幹線の時刻表。さすがに、ベックスコーヒーショップは、JR東日本の系列だけのことはあります。

   

モーニングサービス。いろいろな種類がありますが、これは400円のものです。


ウェストン著 青木枝朗訳 日本アルプスの登山と探検 (岩波文庫)

2016-03-14 22:16:23 | 読書

「面白いので読んでみてください」と言われ、山登りでお世話になっているSさんからいただいた本です。日本アルプスの父といわれるウォルター・ウェストンの著書ですが、青木枝朗さんによる日本語訳がこなれていて、たいへん読みやすく感心しました。さらに青木さんによる解説も要を得たもので、この本の価値を高めています。

   

著者のウォルター・ウェストンは、1861年イギリスのダービー市生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後神学校に学び聖職につき、1888(明治21)年に宣教師として来日。7年間日本に滞在し、その間宣教師を辞して登山と探検を行い、その内容を「マレーの旅行案内」に寄稿したのが、この本の原書です。1902(明治35)年に牧師として再来日し1905(明治38)年に帰国、三回目は1911(明治44)年に来日し1915(大正4)年まで滞在しました。帰国後は、英国各地で講演を行い、1940(昭和15)年にロンドンで没しています。

◯初めてウェストンが来日した際の山岳紀行です。その足跡のあらましは次のとおり(青木さんの解説からの抜粋です)。

1891(明治24)年
碓氷峠、浅間山、保福寺峠、槍ヶ岳。鳥居峠、御岳、木曽駒、天竜川下り。富士山。
1892(明治25)年
富士山。平場峠。乗鞍岳、笹ヶ岳、安房峠、徳本峠、槍ヶ岳。市野瀬峠、赤石山、金沢峠、富士川下り。
1893(明治26)年
恵那山、天竜川下り、富士山。矢ノ尻峠、針ノ木峠、ヌクイ谷峠、佐良越え、弥陀ヶ原、笠ヶ岳、安房峠、檜峠、徳本峠、穂高岳、保福寺峠。
1894(明治27)年
大蓮華山(白馬岳)、神坂峠、笠ヶ岳、焼山峠(中尾峠)、常念岳、御岳、権兵衛峠、身延山、富士川下り。

◯感想

100年以上前の日本の中部地方の山岳やそこに暮らす人々が生き生きと描かれていて、大変興味深く面白く読みました。僕は、長野県に住んでいるので、文中に出てくる山や峠、河川の名称、地名、街道名などなじみのあるものが多く、行程の様子が想像できる記述があって、親しみも覚えました。

当時の日本では、今でいう登山は全く行われておらず、案内人である猟師や人夫を見つける苦労があったり、登山口までは馬車や人力車を使い、麓ので宿を見つける苦労など、様々な困難を伴いながら登攀を試みていく、その執念には驚きました。

嬉しかったのは、ウェストンが日本アルプスに対して、高い評価をしていたことです。例えば、『日本のマッターホルンというべき槍ヶ岳』(101ページ)、『ほんとうに私たちは、神様の描いた絵のうちでもえり抜きの傑作を展示した画廊のなかに入り込んでいるようなものだった』(202ページ)という記述など、山岳景色の素晴らしさや植物の多様性を称えています。

イギリス人から見た当時の日本人とその暮らしに対する記述も興味深いものです。例えば、『日本人は遊びごとにかけてはまったく天才だから、演芸は夜半まで続いた』(88ページ)とあり、旅館ではしばしば宴会の騒ぎで眠れなかったことを嘆いています。

また、衛生状態の悪さについても指摘しています。「蚤」がいたるところにいて、さんざんな目にあっています。その一方、日本人の礼儀正しさやフレンドリーなことをほめているところもあって、ことに中部山岳地方では、俗化されていないところが気に入っていたようです。

◯まとめ

ウェストンは、本国の読者を意識して、かみくだいた注釈もつけてあり、ユーモアも漂っていて、わかりやすい記述を心掛けたようです。青木枝朗さんによる訳がこなれていて読みやすく、岩波文庫版の価値を高めています。山岳に興味をお持ちの方はもちろん、当時の山里の様子を知りたい方、また、長野県の中南信地域にお住いの方は、一読してもいい本です。

【本文に掲載された写真の一部】

   

現在の長野県大町市。ウェストンは針ノ木峠を越えています。

   

『福島は、東から御岳参りに来る人々の出発点で、頂上から約23マイル離れた、絵のように美しいところです。くすんだ色調の民家が石の重しを載せた軒を異様に長く突き出しているのは、アルプスの牧人小屋を目のあたりに見るようだ』と記しています。現在の長野県木曽郡木曽福島町。


カーティス・フラー MEETS ROMA JAZZ TRIO

2016-03-13 10:01:34 | トランペット・トロンボーン

先日、伊那市(長野県)に行った際、最近もらって食べてみたら気に入った「まゆ」というお菓子を製造販売している「越後屋」に寄って、「まゆ」を自宅用に買い求めました。「月夜唄」というお菓子もほしかったのですが、売り切れでした。この2品は素朴ながら、なかなか美味しくて、伊那にこのようないいものがあるとはつい最近まで知りませんでした。帰りの車の中で、豪快なフラーの演奏を聴きながら、さっそく「まゆ」を一ついただきました。

CURTIS FULLER (カーティス・フラー)
MEETS ROMA JAZZ TRIO (TIMELESS 1982年録音)

   

1934年生まれのカーティス・フラー(tb)は、1950年代のハードバップ期に、プレスティッジ、ブルーノート、サヴォイと主要レーベルにリーダー・アルバムを残していて、その当時の活躍が目立ち、70年代から80年代にかけての活動やアルバムは、あまり話題に上らないようです。しかし、オランダのTIMELESSレーベルに録音した「FOUR ON THE OUTSIDE」やこのアルバムは、好調なフラーを捉えていて、一聴の価値があります。

メンバーは、カーティス・フラー(tb)、ダニーロ・レア(p)、エンツォ・ピエトロバオリ(b)、ロベルト・ガット(ds)。ローマ・ジャズ・トリオは、1975年にダニーロ・レアによって結成されたグループです。この3人は現在ではイタリアを代表するュージシャンになっていて、レアは2015年10月に来日しています。

曲は、ジャズ・オリジナルとフラーの自作です。ジョン・コルトレーン作「Impressions」、「Naima」、ジョン・ルイス作「Afternoon in Paris」、ケニー・ドーハム作「Blue Bossa」、フラーの自作が「R.E.D.'S Delights」と「Jazz Island」で全6曲。モーダルがかったコルトレーンの2曲をどう演奏しているのかに、ことに興味が湧きます。

豪放なカーティス・フラーのトロンボーンとキース・ジャレット・トリオを想起させるようなピアノ・トリオが一体となって、迫力ある演奏が聴けます。「Impressions」では、疾走するリズムに乗ったフラーのプレイや、続くレア(p)の鍵盤をいっぱいに使ったソロに興奮させられました。「Jazz Island」は、リズムがカリプソで、ちょっとおどけたフラーのプレイにほほが緩みます。お馴染みの「Blue Bossa」をトロンボーンで聴けることもあり、このイタリア録音は手元に置いておきたい一枚。

【越後屋】

住所:長野県伊那市新井3473
電話:0265-72-2512
営業:9:00~19:00
定休:水曜日

    

お店のパンフレットに記載された販売商品。販売しているお店はこちらの一店舗のみですで、通販の取り扱いもあります。

   

お店の外観

   

   

   

チョコレートコーティングされた外観はエクレアのようですが、最中の皮を使っていて、甘すぎない中のクリームと溶け合って、優しい味わいになっています。

   

お店の場所は、JR伊那市駅の向かい側になります。


新田ユリ指揮ensemble NOVA(アンサンブル・ノーヴァ)演奏会

2016-03-11 20:31:06 | 演奏会・ライブ

3月6日(日)に長野県上田市で行われたensamble NOVAのコンサートを聴きに行ってきました。ensemble NOVAは、長野県出身のプロ奏者を中心とした年に1~2回公演を行う臨時のオーケストラです。曲目は多彩ですが、ハチャトリアンの管弦楽曲とピアノコンチェルトを聴きたくて出かけました。

   

指揮:新田ユリ
管弦楽:アンサンブル・ノーヴァ
会場:上田市交流文化芸術センター(サントミューゼ)(上田市)

曲目:

第一部・古典への誘い

ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」より「春」Op.8-1
 ヴァイオリン独奏/村上あゆ美

ヴァーゲンザイル:トロンボーン協奏曲
 トロンボーン独奏/奥村 晃

第二部・Jazzyな響き

シネマ・パラダイス
エル・クンバン・チェロ

 トランペット/奥村 晶、パーカッション/荻原松美、演奏/上田市民吹奏楽団(友情出演)

第三部・オーケストラの楽しみ

ハチャトゥリャン:バレエ「仮面舞踏会」組曲より ワルツ
ハチャトゥリャン:バレエ「ガイーヌ(ガヤネー)」第3組曲より 剣の舞
ハチャトゥリャン:ピアノ協奏曲 変ニ長調
  ピアノ独奏/秋場敬浩

八十二文化財団(八十二銀行が出資している公益財団法人)の創立30周年を記念したコンサートということで、通常は長野市で公演を行っているアンサンブル・ノーヴァが上田市で公演を行ったものです。一部と二部の独奏者は、上田市ないしその近郊出身の方でした。また、三部構成の二部ではポピュラーも聴かせてくれました。

第一部のヴィヴァルディの「春」は、目の前でどういう楽器が鳴っているかがよくわかりました。ことに、チェロのトップの人(メンバー表によると、西山健一さん(NHK交響楽団)のようです。)の音色、演奏が目立ちました。ヴァ—ゲンザイルのトロンボーン協奏曲は、独奏者の奥村晃さん(新日本フィルハーモニー交響楽団)が、豊かな音色で快活に吹いた第2楽章が楽しかった。

第二部は、トランペットの奥村晶さん(熱帯JAZZ楽団、小曽根真No Name Horsesなどで活躍中)のジャジーな吹奏がかっこよく、楽器の鳴りっぷりのすごさに目を見張りました。

第三部では、ハチャトリアンの「仮面舞踏会」組曲よりワルツと「ガイーヌ」からの剣の舞の2曲で、スケール感のあるオーケストラらしい響きが聴けて、安曇野市から上田市へ駆けつけた甲斐がありました。この2曲における、新田ユリさんの指揮ぶりが大きく感じられました。「ピアノ協奏曲」の独奏者は、ハチャトリアンの出身地であるアルメニアの音楽に造詣の深い秋場敬浩さんでした。

客席は満員で、ヴィヴァルディの楽譜を抱えたお子さんも何人か見かけました。てんこ盛りの感はあったのですが、地方では、滅多に聴くことのできない曲目もあって、好企画の催しでした。

【ハチャトリアンのCD】

   

バレエ「スパルタクス」抜粋、バレエ「ガイーヌ」抜粋。アラム・ハチャトリアン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。作曲者本人の指揮によるウィーン・フィルの演奏で、弦楽器の響きが豊麗です。

   

ハチャトリアン「ピアノ協奏曲」、リスト「ハンガリー幻想曲」。フィリップ・アントルモン(p)、小澤征爾指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団。歯切れのよいピアノを、小澤征爾指揮の色彩感豊かなオーケストラの演奏が盛り立てます。


特集 このごろ聴いている女性ヴォーカルアルバム

2016-03-09 21:53:32 | ヴォーカル(S~Z他)

最近気に入って聴いているヴォーカリストとそのアルバム(CD)をまとめてみました。思いつくままに書いたので、順不同です。

ROBERTA GAMBARINI (ロバータ・ガンバリーニ)

ライブでも聴きましたが、本格派のジャズヴォーカリストで、なんでも歌える優れた歌手だと思います。発表したアルバムはそう多くないですが、「The Shadow of Your Smile」(フィフティ・ファイヴ・レコード 2013年録音)は、選曲がスタンダードで日本のファンを意識して作られたもののようで、僕も喜んで聴いています。この2月に来日し、ヴァレンタイン公演をコットン・クラブで行っています。

   

EMILLIE-CLAIRE BARLOW (エミリー・クレア・バーロウ)

エミリー・クレア・バーロウについては、先日(2016年1月)、東京のコットン・クラブで聴いてきました。ジャズヴォーカルを主体にポップスやバラードなどをよく伸びる歌声で多彩に歌います。また、伴奏バンドには、テナーサックスとギターを入れていて、インストも併せて楽しめます。コットンクラブのステージを収録した「Live in Tokyo」(eOne 2013年録音)がお気に入りです。最新作は、「Clear Day」(eOne 2015年録音)で、オーケストラとの共演を行っています。

   

   

DIANA PANTON (ダイアナ・パントン)

ダイアナ・パントンは、そのスイートヴォイスが人気で、彼女のファンは多いようです。ハードにスイングするのではなく、ソフトに歌う女性版のチェット・ベイカーといった趣があります。発表するアルバムは、よく考えられ丁寧に作られていて、「RED」(eOne 2012年録音)がなかなかよいです。最新作は、「I Believe in little Things」(Factor 2014年録音)です。

   

   

CYRILLE AIMEE (シリル・エイミー)

フランス出身でアメリカで活躍する歌手。初めに「It's A Good Day」という評判の高いアルバムを聴いたのですが、ギター伴奏のジプシースイング系の歌が僕には今一つ馴染めませんでした。次にジャズクラブのスモールズにおけるライブ盤「Live At Smalls」(Smalls Live 2010年録音)を聴いたのですが、これにはぶっ飛びました。新時代のスキャットが聴け、迫力十分で活きのいいジャジーで楽しい歌が聴けます。インストファンにもいいアルバムです。

   

   

HALIE LOREN (ヘイリー・ロレン)

ピアノトリオが伴奏をしていますが、ポピュラーに近く、ことさらジャズ好きでなくても親しめる歌手です。高音はファルセットで歌うところも出てきますが、個性的で悪くありません。懐かしい「青い影」を収録した「They oughta Write A Song」(White Moon 2008年録音)が代表的かと思いますが、最新作は2015年録音の「Live at Cotton Club」(Victor)で、「いとしのエリー」も歌っています。この4月に来日するので、僕も聴きに行く予定で、コットンクラブの席を予約しました。

   

   

DENA DEROSE (ディナ・ディローズ)

シャープナインレーベルにアルバムがあったので、知った歌手です。あまり日本では知られていないかもしれませんが、素晴らしい歌手です。もともとはピアノを弾いていて、歌いだしたのはあとからとのことですが、弾き語りをよくします。スイングし、スタンダードをジャジーに歌ってくれます。「Another World」(Sharp Nine 1998年録音)や「I Can See Clearly Now」(Sharp Nine 2000年録音)といったアルバムがありますが、新譜の「United」(High Note)がこの3月にタワーレコードで発売されるので予約しました。

   

   

   

CAROL WELSMAN (キャロル・ウェルスマン)

非常に安定した実力派の歌手で、ピアノも上手く弾き語りを行います。作風が幅広いですが、ジャジーなものを歌わせたら最高の歌手の一人です。また、伴奏陣が豪華で、楽器とのコラボも楽しめるので、ジャズのインストがお好きな方にも向いています。ケン・ぺプロウスキー(cl)が参加した「Memories of You」(All Art 2008年録音)をよく聴きましたが、ウォーレス・ルーニー(tp)が参加した最新作の「Alone Together」(Idla 2014年録音)も意欲的かつ上質なアルバム。 

   

   

他にも、コニー・エヴィンソン、ダイアン・リーヴス、シーネ・エイ、イーデン・アトウッド、ジャネット・サイデルなどの歌手についても新しめのものも聴いていますが、次の機会で。