◆雪「ゆきひめ」
振付:関直人
主演:菅井円加、福田圭吾
怪談「雪女」をモチーフに創られた作品
◆月「月夜に集う民の詩」
振付:二見一幸
日本のコンテンポラリーダンスを牽引してきた二見一幸の新作
振付:二見一幸
日本のコンテンポラリーダンスを牽引してきた二見一幸の新作
◆花「桜の森の満開の下」
振付::池上直子
主演:藤間蘭黄・本島美和
坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」をモチーフに展開する新作
振付::池上直子
主演:藤間蘭黄・本島美和
坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」をモチーフに展開する新作
今年のサマー・コンサートは、昨年(夏のダンス・ウィーク(10))とは打って変わって、”和”の世界が展開される。
こうしたコンセプトの転換は、昨年の「宗達」から始まったようなのだが、残念なことに日程があわず、「宗達」は観られなかった。
最初の「ゆきひめ」は、もともと日本舞踊を中心に構成されたバレエ作品。
日本舞踊の動きの大きな特徴の一つは、私見では、「重心の平行移動」にあるのではないかと思う。
なので、日舞の踊り手は、移動する際、基本的に頭が上下にブレない。
あと、これも私見だが、「『象徴』としての仕草」、要するに仕草の「言語性」も大きな特徴だと思う。
「ゆきひめ」では、こうした日舞の特徴を、バレエダンサーがどう解釈しどう表現するのかが注目ということになる。
観たところ、菅井さんは「ジャンプの抑制」で対応したようだが、一番楽しそうだったのは「雪女」の表情のように見える。
つまり、「静かで怪しい微笑みの持続」(これもある意味では舞踊の一種)というところが大きなポイントだったようだ。
次の「月夜に集う民の詩」は、ベートーヴェンの「月光」などの音楽に合わせた典型的なハイ・テンポのダンスで、ストーリー性はない。
なので、音楽に親和的なはずなのだが、そこで意表を突くのが、途中からメロディーを欠く単なる「音」の連打に合わせたダンスに変わるところ。
ここで一挙に集団的一体性が動揺するのが面白い。
実は、集団的一体性は、メロディによって保たれていたのである。
ラストは「桜の森の満開の下」で、主役は、日舞の藤間 蘭黃さんと新国立劇場の本島 美和さんという異色のコンビ。
藤間さんは、普段は動きは抑制的なはずだが、この演目では活発に動き回り、ジャンプも頻発する。
なので非常に若々しく見えて、おそらく従来の彼のファンも驚いたのではないだろうか。
対する本島さんは、「人間の首が大好物」という魔女的な役柄で、三浦雅士さんが「ダンス・マガジン」8月号で指摘した、「ある種の不穏さ」を前面に出してきている。
・・・というわけで、私にとっての今年の「ダンス月間」は、ひとまずこの公演で終了。