明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

  


谷崎潤一郎のこだわりといえば足である。つまり足首より下である。マニア度としては“核心”から遠ければ遠いほど高い、ということになるのであろう。そういう意味では、私などは、どちらかというと足よりは脚だ、というわけで、マニア度としては普通である。美脚で有名な『シド・チャリシー』(正しい表記はチャリースらしい)のサイン入りプロマイドを所有している程度である。『ハリウッド・チーズケーキ』という美脚を集めた写真集もあったかもしれない。 マゾヒストとしては足下に踏みつけられるアイテムとして、やはり足なのであろう。谷崎の『瘋癲老人日記』には、嫁の足裏を型取った墓石の下に眠りたい、という老人の願望が描かれていたと思う。足の造形美に関しても何処かで表現していたような気がするが、マニア以外には、理解できないところであろう。 といいつつ私は一度だけ、これは、という足にお目にかかったことがある。もう十年以上前になるが、神奈川県の某所。喫茶店で展示の打ち合わせをしていたときであった。話し相手の斜め横の席に、素足にミュールというのか、ヒールの高いサンダル状の物を履いた女性が、片足を脱いだまま、友人と楽しそうに話し込んでいた。どこがどうというのは私の表現力ではとても無理だが、確かにその小さめの足は造形としても美しく、蒸かしたて、というよりないような質感であった。これが谷崎のいうところの。とここぞとばかりに観察したものであったが、あんな足には二度とお目にかかったことがない。

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