明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



お姫様の頭部を仕上げを残し次の制作に入る。いよいよ待望の“人に非ず”な物にとりかかる。私は子供の工作じゃないのだから、作りたいからといって、発表の予定のない物は作らないよう、強く戒めている。かつて思いついては悪戯描きのように、習作ともいえないような物を作って喜んでいた時期が長かった反省からである。(そんな時期もあって良かった、と思いたくはあるが)。 よってそういった物は、個展をするくらいのテーマにまで高めるか、制作依頼でもなければ我慢するほかはない。『中央公論Adagio』の表紙を担当していたときは、これに乗じて、ついでに作れないか、と2、3提案してみたが、惜しいところでかなわなかった。ところが某出版社より何か企画を出せ、というので主人公が人間でないものを提案してみたら通ってしまった。 当初、先方が提案してきたのが海外物で、一冊まるごと仕上げるには、それこそ海外に行って背景ぐらいは撮影しないとならない。そんな予算がでるというならともかく。そこで私から提案してみたのだが、通った時は呆気なかったので、それはそれで“そちらがあんなこというから、それだったらこれで、といってみたけれど”、と若干慌てたが、待望の人に非ずな物を制作するチャンスがようやく訪れた訳である。 ただその出版社は、某書籍が大ヒット中で、その対処に追われていて、本日もようやくメールが着たと思ったら『着々と作業が進んでいますね』。などと他人事のような有様で、これからどんなスケジュールで進めていくのか、細かい打ち合わせができていないので、何をどうしようとしているのか、まだいえないのである。制作について書けなければ、近所の酔っ払いのオジサンの登場が増えるだけである。そんなことではいけない。かまわず制作に取りかかる。  しかし例によって作りたくてしょうがないのに、わざわざ間を空けて、腹を減らしてからかぶり付こうというわけで、明日あたりは図書館で読書かもしれない。物心ついて以来の私の凶暴なる制作欲との付き合いも長いので、悪役レスラーのマネージャーのように、扱い方は心得ているのである。

去の雑記
HOME



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )