明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



左右対称な顔を持つ人間などいないだろうが、制作物となると可能であろう。しかし左右対称の顔は味気がない。  まだ黒人ばかり制作していた頃、矛盾した表情を表現するラインを顔の中に混在させることによって、複雑な感情を醸し出せることに気づいた。 能面と同じく、私は見ている人の気分、状況によって、表情が選べるよう、大分初期の段階から無表情の人物ばかり制作しているが、前述の工夫を加えることによって、黙って無表情な黒人像に、ただの無表情ではない何かを加えようとしていた。それは顔の中で感情を表現する部分に限らず、たとえば頬の左右のカーブの違いでさえも、微妙なニュアンスが出てくるものである。顔を半分に割って片方づつ眺めると、左右に性格が違う二人の人格がいる。それが合わされば、自ずと左右対称の顔とは違ってくるであろう。サブリミナル効果、ということではまったくないが、そんなことも意識している。  私の場合、そこに居る、という佇まいのような物を最重要視しているのだが、その場合、最も大事と考えている、首から下のある部分があるのだが、他人には判るはずがない、私だけの密かなこだわりのつもりが、ある方に見破られて以来、自分から口に出さないことにしている。見破られたこと自体は、見ている人はいるんだな、とむしろ嬉しいことではあった。

去の雑記
HOME



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )