私はどういうわけか嫌いだったり苦手だったことに限り、やることになる。それは何度か書いている。子供の頃から嫌いだったのが、何かを見て描いたり作ったりすることなのに資料を集めては実在の人物を作っている。かつては写真に興味がなく、カメラ嫌いの機械音痴であったし、デジタルなどもってのほかであった。アナログ時代に取材を受けた編集者には未だにからかわれる。 マゾヒストの男が上司に叱られることを無上の喜びにし、営業もできるだけ乗り物を使わず苦しんだり、その趣味のおかげで相撲部屋に入門する人もいるらしいので、私が未だに嫌いなままで続けているとしたら相当なものだが、一応好きなものに転じていると本人は思い込んでいる。 写真やパソコンを始めた時、古くからの友人は一様に耳を疑っていたが、ここまで人は変わるか、ということではカラオケである。そしてさらには演歌である。以前は下手糞な歌を聴くのも聴かせるのも、何が良いのだ、と思っていたが、上手い下手はともかく、気持ち良さそうに嬉しそうにしている人と過ごすのは、楽しいものだ、と教えてくれたのは慢性的酔っ払いのKさんである。私の場合、小学校の6年あたりから中学生の頃、土曜の3時にやっていた大橋巨泉、星加ルミ子、木崎義二が司会の『ビート・ポップス』により洋楽に目覚め、以後歌謡曲に興味を失ったので、メロディーを覚えているのは60年代の歌に限られてしまうのだが。その私が自分で信じられないのが演歌である。初めて歌ったのは『サムライ日本』だったが、三島由紀夫が市ヶ谷に向うコロナの車中、楯の会の会員と最後に歌った『唐獅子牡丹』を軽い気持ちで歌ったところ、“唐獅子ぼ~た~ん~”と発声した時の満足感に驚いてしまった。そしてここでは明かさないが、ある女性演歌歌手にはまり、毎日ユーチューブで見ている始末である。DVDやCDを買う日も近いであろう。昔、突然キャンディーズにはまり、日ごろアイドル好きの連中を罵倒していた私は、おかげでコソコソと隣町までレコードを買いに行くはめになったのを想い出す。
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