私は常に完成作を作者に見てもらうことを念頭に制作している。たとえ作者がすでに亡くなっていようと。それはイメージの問題である。 潔癖性の鏡花は、自分がもっとも苦手であろう、ヌラヌラエボエボと生臭い河童を主人公に、書く分には安心とばかりに清めた原稿用紙に向かって書いたことであろう。なんだか嬉しそうである。(もっとも豆腐の腐の字を嫌い豆府と書くのだが) 今回、主な素人役者衆のスカウトの場となったK本のおかみさんは、長い生き物が大嫌いである。蛇はもちろん、ウナギだろうがドジョウだろうがすべてNGである。なにしろ目がマジだから、出入り禁止になりたくなければ冗談も何もいってはならない。今回作中、真っ赤な蛇が娘のふくらはぎに食い込み巻き付いているカットがある。実際の撮影風景は間違いなく笑える場面であるが、そのページを破いたりかつての検閲のように、墨で塗りつぶすわけにはいかないにしても、何か印をつけて、ページを開かぬよう、前もっていっておく必用があるのはいうまでもない。それをし忘れた時のことを考えるとゾッとするくらいである。 あと一場面。編集者と話し合いながら、どう描こうか決めかねているカットがある。さすがの私もここに至れば話の流れ、全体のバランスなど考慮しつつ悩んでいるわけだが、そんなさなかであった。難しい場面を創作した鏡花に対し少々癪に触ったこともあり、ばい菌恐怖症の鏡花の大嫌いなハエを、河童の三郎に止まらせることを思いついたのは。 しかし本日、1つ打開策を思いついた。まだどうなるかは判らないが、この案で打開できるのであれば、何匹か蠅を減らしてあげてもよいと思っている。
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