編集者には「石塚さんは1カットを完成させようとするから」とよくいわれたが、メリハリだ流れだとかいわれても、短編とはいえ小説一冊をビジュアル化するのは始めてである。私には長い。そもそも“及ばざるくらいなら過ぎたる方がマシ”というタイプである。すべてを名場面にすべく、等しく力を入れるしか私にはすべがない。たしかに書籍の場合、全編この調子であったら読後にもたれてしまうことは必至であろう。そこをなんとかするのが編集者ということになる。 私が初期のジャズ、ブルースをテーマにしていた頃、もっとも影響を受けていたのがブルーノート盤のレコードジャケットである。デザイナーのリード・マイルスのおでこや胸元でバッサリなどの大胆なトリミング。撮影者のフランシス・ウルフとはしょっちゅう喧嘩だったそうだが、リード・マイルスの大胆なトリミングなかりせば、フランシス・ウルフのショットがいかに名作だとしても、ここまで残ることはなかったろう。信じがたい話であるが、マイルスがジャズファンでもなんでもなかったことも客観性に寄与していたのかもしれない。 当初、何日もかけた場面が次々カットされ、憮然とした私であったが、切り替えもまた早い。編集者の客観性に納得してみれば乃木大将とステッセルである。 あとはフィニッシュに向けただ制作するのみである。未だ打開策が見つからない場面が1つだけあるのだが。
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