明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



エドガー・ポーの立体像は検索すると、世界中に首振り人形からトロフィーから彫刻から随分ある。しかしどれも一長一短で、何ヶ所かあるミュージアムの収蔵品もたいした物はないようである。しかし一点、手強そうな作品があった。それは政治家など著名人の像を公共の場にかなりの数、設置しているような海外の彫刻家で、ポーに関しても有名な写真を元に、頭部を精密に再現している。私のようにデッサンもろくすっぽしたことなく、ただひたすら完成を祈るだけ、というような制作方法の人間からすると感心するほかはない。大きさもおそらく実物大以上で、込められるディテールも、数センチの大きさで作る私は不利である。 ところでおそらくこの彫刻家と私の資料写真に対する考え方の違いがありそうである。私はあるポートレイト写真に対して、この写真はこの人物の、この日のこの時間を表しているに過ぎないと考える。つまりある日写真スタジオを訪れたポーが、写真家の指示で椅子に座り、ポーズをこうして視線はこちらへ。そして写真家のタイミングでシャッターが切られ、数秒の露光時間、じっとしていた。ことが表現されているに過ぎない。ようするに私の場合、写真スタジオで写真撮られているエドガー・ポーを作る訳ではない、ということである。むしろこの後、飲みに出かけて飲みすぎたろう、などと想像しなければならない。

※世田谷文学館にて展示中。

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