明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



『貝の穴に河童の居る事』用に作った河童の三郎は各場面に対応するよう、泣いたり怒ったり、と数種の頭部を用意したが、エドガー・ポーの場合も、危険な状態に追い詰められている表情、素面の表情、飲酒の果てに人事不省。の三種を作ることにした。そのため、途中から方向を変え、最初は眉間にそれほど皺も寄っておらず、比較的穏やかな基準となる頭部にした。 もう限界である。頼むから作らせてくれ。という状態になってきた。私も自分との付き合いは長い。扱い方は心得ている。これだけ焦らせば弓の引き絞り効果は絶大である。だがここでダメ押し。雑事のついでに開始日を一日遅らせ、母と夕食をとることにした。もちろんエドガー・ポーの首は持ってきている。 隣のテーブルに両親と小さな娘という感じの家族。ところが、どうも様子が違う。男は世界情勢や宗教など、堅い話を喋り続けている。ところが奥さんらしき女性は明らかに興味がない。その様子に男がイラついてきた。外務省のHPを見ろといったのに見ていないだろ、と切れ気味である。どうやら母親は中国人で、男は母親と付き合っている男という風で、自分のレベルについて来れないということにイラついているのである。馬鹿はお前の方だ。母も呆れているし、ちょっとお静かに願います。と頼んだ。こういうとき口調に下町のナマリが出てしまうのは、私の場合しかたがない。

※世田谷文学館にて展示中。

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