明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



動物園といえば子供の頃から上野である。江戸川乱歩の『目羅博士』では猿が人を真似るというエピソードの為、猿を撮影し、『貝の穴に河童の居る事』ではカラスや蛇を撮影した。鎮守の杜の女顔のミミズクのため撮影に行ったら金網越しで、表情もいまひとつ。どうしようかと思っていたら、近所に猛禽類専門のカフェができて事なきを得た。しかし今度はオランウータンである。さすがにいくら待っても類人猿カフェはできない。初めて多摩動物園に行ってみた。 エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』は世界初の推理小説ということであるが、発表から200年ほど経って小学生の時に読み、犯人がオランウータンというのに唖然としたのを覚えている。 行ってみると随分すいている。目的はオランウータンである。ゆるやかな坂の一番奥にいるということで、園内を巡回するバスに乗り、いきなりオランウータンへ。すると小型バズーカ砲のような望遠ズーム付きカメラを持った、中年から老年男女の集団が連射している。最近生まれたオランウータンの子供が母親にしがみ付いている様子を撮っている。 オランウータンはオスメスはっきり違う。兵隊の位でいえば間違いなく私より貫禄はあちらが上、というオスだけを撮影した。何しろ老人である。落ち着き払っていて、原作通り、血に酔って狂乱、というわけにはいかなかったが、剃刀を振りかざして、女を切り刻むオランウータンはいけそうである。あ、また書きながらウットリしてしまった。

※世田谷文学館にて展示中。

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