明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



エドガー・ポーは、映画のタイトルにもなったように、亡くなる直前、数日間の足取りが不明である。発見された時は、泥酔し、ボロボロであった。サイズの合っていない破れて汚れた服を着て、酒場の肘掛椅子に座っていたらしい。その時の証言をできるだけ集めたいものであるが、過去に撮影したネガの中から、相応しい肘掛椅子を見つけた。これにポーを矢吹丈のように座らせてみたい。 自分の雑誌の創刊を死ぬまで願いつづけたポーであるが、思ったように金は集まらず、失意を抱えたまま最後の旅にでる。その時点で心臓はそうとう弱っており、本人もある程度は覚悟していたようである。 私は幼い頃から今に至っても人物伝の類が大好物であるが、ポーの生涯は思うように事が運ばない男の人生であり、面白くてページをめくる指が止まらない、というわけにはいかず、その間何度も、ポーに対して献杯せずにはいられなかった。 ポーはいささか発育不良のような美しい幼妻をめとるが、布団の代わりにポーの外套をかけるような生活の中、結核で失う。これがまた陰鬱なポーの表情をさらに曇らせ酒量を増やさせたわけである。200年後、自身がキャラクター化され、首振り人形からTシャツ、可愛い縫ぐるみにまでなっているのを知ったらどう思うであろうか。しまいには極東の地に毎日ポーポーポーポーと、粘土で何かしてる人間まで現れる始末である。

※世田谷文学館にて展示中。

過去の雑記

HOME



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )