真っ赤に燃える目。女の首をワシ掴み、剃刀を握る腕をまさに振り下ろそうとするオランウータン完成。まだ剃刀も女もいないが。 オランウータンは母と娘を惨殺する。娘は煙突に逆さまに押し込められ、母親の方など、首がちぎられる有様で、なんとも凶悪な獣として描かれている、実際そんな面があるのかどうかは知らないが、対面した感じではそんな気配はまったくなく、まさに森の人であった。 ほぼ同時代のビアズリーの挿絵は、どう見てもオランウータンを知らなかったに違いなく、巨大なニホンザルのように描かれている。ポーにしても、どこまで知っていたのか疑わしい。 木造校舎であった小学校の図書室。授業開始のチャイムが鳴っても出てこないので、一時出禁になってしまったが、大好きな漢和辞典みたいな古い動物図鑑があった。動物は小さな線描である。それには『猩猩』(しゃうじゃう)と書かれていた。世界の動物の生態がお茶の間で見られるようになったのは最近の話である。カバが鹿の類にがぶりと齧り付く映像で驚くこともできる。
※世田谷文学館にて展示中。
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