明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



合間を見ては三遊亭圓朝の伝記など数冊を同時に読んでいる。商家に奉公に出るも向かず、噺家を目指すも家庭の事情で止め、画工を目指し弟子入り後、再び噺家に戻る。弟子や師匠に裏切られたり禅に打ち込んだりしながら名人となり、明治天皇の前で口演。衰退した三遊派を柳派にならぶ一大派閥にまで再興し、酒に溺れた不行跡な息子を弟子達の前で縁を切り、弟子にも随分先立たれる。晩年は神経性の病を患い惚け状態に陥る。花火を見たいというので弟子が庭で上げると、目をつぶり顔を上げることなくうつむいたまま「面白いね 面白いね」とつぶやく。なにしろここまで圓朝に付き合っていると、まるで実際見て来たような気分になっているから「面白いね 面白いね」は今書いていても泣けてしょうがない。 そういえば古今亭志ん生を作っている時。引退して隠居している所に小沢昭一がインタビュ一に訪れる。すると志ん生は読んでいた落語本をコタツだか座布団の下に隠したという。これを読んだ時も志ん生の芸人魂に触れたような気がして泣けてしまったが、志ん生が隠したのは圓朝の速記本ではなかったろうか。

アートスケープ 展評『深川の人形作家 石塚公昭の世界』

HP



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )